オイリー式

欲望の街、ブラックシティ

前回は、この街で働く奴隷タブンネの製造過程をお送りした
引き続き、ブラックシティの奴隷タブンネによるポケモン産業を取材してみよう

度重なる痛みと、自尊心の崩壊により、人間に服従した奴隷ダブンネたち
黒い鉄球の二倍の重さはある首輪。そして、腹と背中に、生涯消えることのない奴隷の焼印を捺されている

『ミッミッ・・・・・』
ボコボコに腫れあがった顔面をさする個体がいる
特性の再生力でも、特技の癒しの波動でも、元の形に治ることは二度と、無い
悲しむことも無い。奴隷タブンネは皆、総じて顔を損傷しているのだから

『ミィィィィィ・・・・・・・・』
同じく集落から連行される際に、我が子とはぐれた個体がいる
悲しむことは無い。この街で平等に、産まれたことそのものを後悔するのだから

『ミ、ミ、ミミミミミミ』
苦しみの余り精神が壊れた個体がいる
悲しむことすら出来ない。一番の幸せものだろう
食肉にされようと、死ぬまで激務を強いられようと、最期まで何も思考出来ないのだから

奴隷タブンネというものは、そうなる以前の環境
或いは、奴隷になってからの環境で大きくその一生を変えるのだ

闘豚場、個人経営用、売春豚、食肉加工、食肉加工所の従業豚、etc......

どんな一生であろうと、タブンネという劣等種に、幸せな道など待っていないのだが・・・

今回は、その一部を紹介したい

『食肉加工所』と呼ばれる工場に、数匹の奴隷タブンネが配属された
ヒウンシティの大企業が新規で開拓した工場であり、設備も真新しい

『ミィ・・・ミィ・・・?』
比較的、体力があるとして集められた奴隷タブンネ共は皆、不安そうにキョロキョロと辺りを見回している

「糞豚ども!仕事の時間だ」
工場の扉が乱暴に開け放たれ、一人の老人が現れた

「今日から貴様ら糞豚の上司となる、ガスリンだ!」
老人は短く挨拶を済ませる
その姿を見た途端、奴隷タブンネ共は下種な笑みを浮かべる
老人の身の丈は、タブンネよりもやや小さかったのだ

『ミヒヒ・・・・・・ミィィィィ!!!』
奴隷タブンネの一匹が、老人に突進をかけた
自分より弱いと決め付けたものには強気の行動に出る、タブンネという種族特有の浅ましい精神だ

「フン・・・身の程を弁えぬ糞豚めが」
ガスリン主任は軽快なステップを踏み、突進をかけた奴隷タブンネを脚払いで地面に転がし、そのままマウントを取り、拳を叩き付けた

『ミッ? ・・・ミギャッ! ミギャッ! ミギャッ!』
ガスリンが顔面に拳を叩き付ける度、奴隷タブンネは醜い悲鳴をあげる

ここで、説明しておこう
現在、食肉タブンネ産業のシェア50%を占める農場
その農場の支配人であり、イッシュ中にその名を知らしめる、オイリー氏という猛者がいる

彼のタブンネ農場には、他にはない特徴があった
鍛え抜かれた己の肉体でタブンネを痛めつけ、ミィアドレナリンを分泌させるという手法である
絶妙な力加減で痛めつけられたタブンネ肉には、どの食肉業者にも真似出来ない旨みがあった

オイリー農場はその規模を各地に広げるため、弟子を取ったのである
本来は一子相伝の技術ではあるが、タブンネ肉という産業をイッシュ中、いや、世界中に広げたいという夢のプランの元、実行されたのである

その歴史は数十年と続き、オイリー氏の孫の代まで継承されている
本元であるオイリー農場だけではなく、弟子からその弟子へと派生し、各地で極上のタブンネ肉を生産する、様々な形へと枝分かれしたのだ
現在は、中国拳法や空手なども、極上のタブンネ肉を作るために、その武術の片鱗を表している

やがて、その芸術とも呼べる程見事な食肉加工術は『オイリー式』と呼ばれ、現在では、世界各国で重宝されている

今回ヒウンシティの企業が雇ったのは、軍を退役した老兵教官、ガスリン氏だった
若き日に、始祖であるオイリー氏の農場で働いたことがあり、そこで技術を培っていた
そこでの経験から、己の肉体一つで、イッシュ陸軍の将校まで上り詰めた修羅の男である

退役後、タブンネ食産業に着手してからは、達人クラスであるマーシャル・アーツを存分に奮っている
己の技術を若き日の自分に染み込ませるように、日々、生きたタブンネを肉塊へと変えているのである
最終更新:2014年09月20日 00:27