知性巨人は食べた人間の顔になる

アニはライナーたち壁襲撃チームで唯一過去の回想シーンがあるキャラです。

その回想シーンで、ずっと気になっている事があります。

4巻第12話「武力幻想」で、アニがエレンやジャンの訓練風景を見て、父親から格闘技術を学んだ記憶を思い出すシーンです。

このシーンで、なぜかアニの顔が隠されているのです。

 

これに関連して思い出したのが、1巻第1話の「2人のブラウン」問題です。

第1話冒頭で巨人に食われて手だけが残った隊員がライナーと同じ「ブラウン」という名前なので、何か関連があるのではないかという、ファンの間では有名な話です。

ところが、漫画では息子の安否を尋ねる母親が「ブラウン」と呼んでいるのに、アニメでは「モーゼス」に変更されました。

ファンは「作者のミスで、ライナー・ブラウンと同じ名前を使ってしまったので、アニメでは変更したのでは?」などと推測していましたが、後で編集者から「あの隊員のフルネームはモーゼス・ブラウン。作者のミスで姓の方を書いてしまったのでアニメでは修正した」という内容の正式なアナウンスがありました。

同じブラウンという名前なのは間違いがないようです。

 

まず、ブラウンという名の隊員が巨人に食われる。

次に、ブラウンという名の新しいキャラクターが登場し、その正体は巨人である。

この2つが関連するという前提で、私は「巨人が何らかの条件を満たすと、食べた人間の記憶や遺伝子を得て知性化し、そっくりの顔になる」のではないかと考えています。

つまり、ライナー・ブラウンの顔と記憶の一部は、モーゼス・ブラウンのものではないかという事です。

 

オタキングこと岡田斗司夫さんは、「冒頭の巨人の顔が不自然に隠されているのはあの巨人がエレンだからであり、直後のシーンでエレンが涙を流しているのはモーゼスたちを食べた罪を無意識では覚えているからではないか」と言われていましたが、私は前半については少々違う意見です。

冒頭の巨人はライナーであり、顔を描いていないのは、顔を描くと「鎧の巨人=ライナー・ブラウンだと分かりやすくなってしまう」からではないかと想像しています。

これは個人的な憶測ですが、連載当初は人気が出ない事も想定して、早目に終わってもいいように分かりやすい伏線を張っていたのではないでしょうか。

だから読者に分かりやすく、同じ「ブラウン」という名前を出して、「冒頭で食べられたブラウン隊員はライナー・ブラウンと関係あるんだよ」と楽なヒントを出しておいたのですが、幸いな事に人気が出て連載が長期化したため、もう少し分かりにくいヒントに差し替えたというのが真相ではないかと私は考えています。

 

さて、そこでもう一度4巻第12話「武力幻想」でのアニの回想シーンを考察します。

回想シーンでアニの顔が隠されているのは、「回想シーン当時のアニは、今のアニとは顔が違う」からではないでしょうか?

そして8巻第33話「壁」にもアニの回想シーンが登場します。

アニメのクライマックスにもなったこのシーンでは、はっきりと今と同じアニの顔が描かれています。

おそらくこれは、「巨人化して自分の食べた人間の顔になった後のアニ」なのではないでしょうか?

 

では、アニは誰を食べたのか?

ここで15巻第62話「罪」で明らかになった「エレンの父親食い」を考えて見ましょう。

現在までの描写では、エレンは父親を食べて知性巨人化したと考えられます。

知性巨人化の条件は「注射と血縁関係者を食べる事」ではないでしょうか。

 

とすると、アニもまた自分の血縁者を食べて知性巨人化したのではないかと考えられます。

エレンが父親を食べている(らしい)事から、おそらくアニは母親を食べたのではないでしょうか?

壁内を攻撃するために、知性巨人の力がどうしても必要だったからです。

8巻第33話「壁」でのアニは、茫然自失と言うか、強いショックで感情を失ったかのような冷たい虚ろな目をしています。

これは、母親を食べてしまったショックと喪失感のためではないでしょうか。

アニの父親はそんな娘?に自分の過ちを謝罪しますが、アニは冷たいまなざしで見下ろすだけ。

この過酷な体験がアニを感情に乏しく、理想主義に批判的な冷たいキャラクターにしたのではないのか。

そして、その次のページで父親の帰って来てくれという懇願を思い出し、アニはついに感情を爆発させ、あの時流せなかった涙を流すのです。

 

ちなみに、原作ではこのアニの涙を最大限生かすために直前までアニの感情を殺した描写を続け、ラストで見事にアニの感情の爆発を表現したのですが、アニメではアニの正体がエレン、ミカサ、アルミンにばれるシーンでアニに高笑いさせてしまい、この『進撃の巨人』屈指の名シーンを台無しにしてしまいました。

これでは、アニが単に感情の起伏がピーキーなだけになってしまい、彼女がラストで泣いても衝撃はありません。

普段は感情を押し殺しているキャラがただ一度最後に感情を表に出し、しかも過去の泣けなかった自分を取り戻すから視聴者の心を揺さぶるのであって、普段から泣いたり笑ったりしているキャラがラストで泣いても感動はありません。

『新世紀エヴァンゲリオン』で言えば、碇シンジの「笑えばいいと思うよ」というセリフで綾波レイが初めて笑うから感動するのであって、綾波レイが普段から笑っていたら意味がないのと同じです。

 

話を戻して、

①知性巨人は親(血縁者)を食べる事で知性化する

②その際に食べた人間の容姿と記憶をコピーする

という仮説をもう少し考えてみます。

この仮説をエレンに当てはめるとどうなるでしょうか?

 

実は、15巻第62話「罪」で注射をされているエレンらしき少年と、注射で巨人化し、グリシャらしき男を食べて人間に戻った後のエレンらしき少年の顔が少々違っているように私には見えます。

たとえば鼻の形、ほほの形、全体的な肉感などが巨人化の前後で微妙に違っているように見えますし、そもそも巨人化したときの顔もエレン巨人とは異なっています。

つまり、あの「注射をされている少年はエレンにそっくりだがエレンではない」可能性があるのではないかと思うのです。

そこで②その際に食べた人間の容姿と記憶をコピーするが真実だとします。

すると、今のエレンの姿はグリシャの姿だという事になります。

もしも本当にそういう設定だとしたら、エレンとグリシャは、いくら親子でもあまりにソックリすぎます。

 

そこで発想を飛躍させます。

エレンはグリシャのクローンではないでしょうか?

そして注射と巨人化によって記憶と容姿を継承する事ができると仮定します。

エレンがグリシャを食べて、グリシャの記憶と容姿を継承したら、それはグリシャが若返ったのと同じではないでしょうか?

そしてこの方法を何世代にもわたって続ければ、1人の人間が延々と生き続けているのと同じではないでしょうか?

一種の不老不死です。

そして、この仮定が正しければ、もう一つの可能性も考えられます。

グリシャは壁が作られた時からクローン技術と巨人の記憶継承システムによってずっと生きている人間で、壁や世界の秘密を全て知っている人物なのではないでしょうか。

あるいは壁や壁内人類を作った張本人、あるいは本当の王家である可能性もあります。

15巻第62話「罪」で巨人化の前と後で容姿が変わらないのも、食う側と食われる側がクローンで同一人物あれば同じ容姿になるのは当然です。

要するに、この仮定に従えば、グリシャの場合は「人食い」と言うよりは「自分食い」といった方がいいでしょう。

 

さらに発想を飛躍させます。

時折ファンの間でも話題になる「支配」というキーワードがあります。

エレンの回想?でグリシャが言う「支配しなければならない」、ミカサが覚醒した際の「支配できた」など、少し不自然な言い回しです。

これは、「自分の中にある今まで食べてきた人間の記憶や能力を全部、今の自分の支配下に置いて完全にコントロールしなくてはならない」という意味ではないでしょうか。

つまり、エレンもミカサも、過去の多くの人間の記憶や能力を継承しているのです。

これがアッカーマン一族が忌み嫌われた理由かもしれません。

外部からは食人一族にしか見えませんから。

 

歴史を捏造された偽りの世界で、唯一真実を記憶する一族。

これがエレンやミカサたちの隠された役割なのかもしれません。

 

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最終更新:2014年11月23日 20:13