“民から愛されし無垢な女王”
刻鸞王国女王であり、皇王朝初代女王。
侍従長は帝秀叡。母親は藜様、皇唯晏を双子の弟に持つ。
おおらかで優しく、誰よりも民と人間を想う仁徳溢れる淑女。
しかし傷つきやすく、神経質な一面もある。この辺りは弟によく似ている。
*癒晏の戦闘能力
皇癒晏は王で、しかも女でありながら、武術には大変長けていた。
幼い頃、武器を秀叡に対し教えてほしいと頼んだのが始まり。
癒晏は剣術、乗馬に秀でており、騎馬戦を得意とした。
また、戦があれば切り込むこともあった。強さの秘密の一つとして刻使いの力も大きく反映されていると考えられる。
弟と同じ次元系の刻使い。能力から亜空の刻使いとも呼ばれる。
自分が定めた空間(服の袖の中、鏡など)を亜空間(異次元)に変える能力。
従って武器の所有、保管には困らなかった。
人間が入れるかは不明だが、入ったとしても癒晏がその空間を閉じてしまえば出れないし、空間を開けた時でないと出られない。
基盤もでき、安定した国での生活を送っていた癒晏。
あるとき中国からの書物を読んでいたところ、西にある異国が気になり、羅馬目指して旅に出ることになる。
しかし、行き着いた先は羅馬ではなくフランク王国(西ローマ帝国)だった。
癒晏は見慣れぬ美しい金の髪に整った顔立ちの王に一目惚れをし、西洋との交流を図ったのだ。
ちなみに、皇珠黯はその王との子供であるとされているが、真偽のほどは不明である。
側近には「育てられないから、邪魔になるだけだから」と下手くそな嘘をついた癒晏。しかし弟の唯晏だけは本当の理由を知っていた。
人間と神族の間に生まれた皇珠黯。
しかしそれは禁断の恋。神族は人間と交わることを許されてはいなかった。
「一度だけ、本当に一度だけだったの」
一度で珠黯を腹に宿した癒晏。
神族の中で人間との子は忌まわしいものとされ、よくは思われていなかった。
神として、嫌われながら、母親に愛されながら生かすか。人間として、他人に愛されながら、短命のまま生かすか…。
苦渋の果て、癒晏は珠黯を人間として生かすことを決断する。そして名声と土地、金もある名家の璞家の家の前に置き去ったのだ。
一度も名前を呼ぶこともなく。一度も頭を撫でることもなく。
「初めまして、皇癒晏と申します。よろしくね~」
「秀、城下に下りてもいいかしら~……えーけちんぼ」
「ややこ、ややこ、私の可愛い娘…大きくなぁれ、よい子になぁれ…」