陶磁器のような肌に、息を飲む。
幼馴染に借りた本にそんな表現が載っていたけれど。
いざ目の前にしてみると、何も考える事が出来なくなってしまうのだと、京太郎は知った。
「見て欲しいの。京太郎には、私の全部を」
一糸纏わぬ美穂子の姿。
いつもは閉じられている右目も見開かれている。
左右の異なる色の瞳に射抜かれた京太郎は、美穂子の肢体から目を離すことが出来なかった。
「だから、京太郎も――私に、見せて?」
例えるならば、淫らな娼婦。
艶やかな吐息に耳を擽られる。
男には耐え難い誘惑。
――京太郎! 一緒に帰るかー!!
「っ!」
だけど。
耳に響いた、あのやかましい声が。
京太郎の理性を、押し留めた。
「……すいません、福路さん」
「……え?」
肩に乗せられた彼女の手を拒む。
それ以上の言葉はない。
京太郎は一度も振り返ることなく、その場を後にした。
ただ一人、美穂子を残して。
「……」
美穂子は何も言わず、京太郎が消えた後も、ただ無表情で闇の中を見つめ続けていた。