プロ編を砂糖タップリ仕様にしてみよう

「ついに、俺が……」

 

3年目のインターハイ。今回は雑用係ではない。

咲や和の付き添いではなく、自らの手で掴み取った個人戦選手という立場。

緊張で足が震える。今ならあの時の部長の気持がわかる。


「そんな京太郎くんにコレ☆」

「はやっ!?」


いつからいたのか、隣から掛けられた声に心臓が跳ねる。

牌のおねえさんにも仕事があり、こんなところで京太郎に構っている余裕はない筈だが。

差し出された手の平に乗せられた白い粒に、京太郎は怪訝な表情をはやりに見せる。


「これは?」

「勝てるようになるお薬だよ☆」

「え? なにそれこわい」


真顔でドン引きした京太郎だが、冷静に考えるとそんな変なモノを彼女が所持しているわけがない。

恐る恐る彼女の手の平から白い粒を摘み、口に含むと――甘い。


「砂糖?」

「あはっ」


きっと、彼女なりに京太郎の緊張を解そうとしたジョークなのだろう。

思わず苦笑が零れるが、脚の震えは止まっている。


「ありがとうございます。じゃ、行ってきますね」

「頑張ってね! 1番応援してるから☆」

 

その後、京太郎はギリギリのところで一回戦を通過した。

ほっと一息吐くと同時に、はやりのあのジョークが無ければ勝てなかっただろうと思い返す。

あとでお礼を言いに行こうと決めて――また、あの砂糖を舐めたくなった。

最終更新:2014年07月09日 20:35