「お届けものでーす」
「ものってそんな……」
「トイレくらい迷わずに行けるようになってから言え」
「うう……」
インターハイ会場でも、咲の方向音痴っぷりは遺憾なく発揮され。
帰って来ない咲を、京太郎が見付けて帰って来るという、いつも通りの光景が見られた。
「まぁ、こういう場でもいつも通りの自分を――ってポジティブに考えたらどう? 咲が迷子にならずに帰って来たらそっちのが怖いし」
「あ、確かに」
「ひ、ひどい……」
「あ、そうだ。須賀くん、帰って来てばかりで悪いんだけど、風越の先生にこのプリント渡して来てくれる?」
「うっす」
久から一枚のプリントを受け取り、去り際にグリグリと雑に咲の頭を撫でて、京太郎は退室した。
ドアが閉まると同時に、久はにっこりと笑みを浮かべて。
「いい加減、自分の存在そのものが須賀くん迷惑だって、気が付いたらどう?」
「部長こそ――京ちゃんが、自分の奴隷か何かだと勘違いしてるんじゃないですか?」
互いに穏やかな微笑みを浮かべたまま、思うことは同じで。
「あなたなんか」
「いなくなっちゃえば、いいのに」