巨人は人ではなく「記憶(脳、血液)」を食べている

※ネタバレや考察自体がお好きでない方は絶対に閲覧しないようお願いいたします。

※以下の内容を読んだ場合、今後作品を楽しむ喜びを損なう危険があります。閲覧は自己責任でお願いいたします。

※作中の描写だけでなく、作り手の意図や傾向、自分ならどうするかなど推測も交えて考察しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎巨人が食べているのは人ではなく記憶(脳、血液)

・巨人は「人間の天敵」とされている。人間を捕食するからだ。

・しかし、巨人は太陽光さえあれば永遠に活動可能で、繁殖もしない。食べた人間を消化せずに、肉ダンゴにして吐き出してしまう。

・では、なぜ巨人は人間を食べるのか?

・実は巨人は人間そのものを食べているわけではなく、人間の「脳や記憶」を食べているのではないか?

・言うまでもなく記憶は脳に保存されるが、体組織や血液中にも記憶がある可能性が指摘されている。その場合、巨人は血液を吸収しているのではないかと考えられる。

・そうした記憶を抽出したのがグリシャの注射ではないか。

 

 

 

◎仮説 巨人が記憶(脳、血液)を食べる理由

・ある理想を持った科学者がいた。

・その科学者は戦争のない平和な世界を目指し、同時に永遠に思考し続けることはできないかと考えた。

 

 

・彼はこう考えた。

・別の人間に私の記憶を移植し、その人間が私と同じように考えるようになれば、それは私と同じだと言っていいのではないか?

・この記憶移植を永遠に繰り返せば、私が永遠に生きて、永遠に思考し続ける事ができるのではないか?

・肉体など精神の乗り物に過ぎない。肉体を乗り換えるだけの事ではないか。

・これは実質的な不老不死だ。

 

 

・さらに彼はこう考えた。

・記憶の移植が可能なら、全人類の記憶を1人の人間に集めたらどうなる?

・全人類が1人だけになれば戦争も起こしようがない。

・これこそが真の平和ではないか!

 

 

・その科学者は「全人類を1人にする」研究を始めた。

・彼の計画のためには、「記憶の移植」と「記憶の記録」の2つのシステムが必要だった。

・記憶は脳だけでなく、細胞や血液中の神経ペプチド様記憶伝達物質も関係すると言われる。

・そして彼は人間の記憶を液体にして保存する方法を開発した。

 

 

・しかし、全人類の記憶を人間サイズの脳に収めることは、物理的に不可能だった。

・どうしても「全人類の記憶を収納できる巨大な脳」が必要だった。

 

 

・そこで彼はこう考えた。

・人間自体を巨大な脳細胞にできないだろうか?

・まず、人間を巨大な脳細胞にして、複数の人間の記憶を移植する。

・限界量まで記憶させたら、その人間脳細胞同士を通常の脳細胞のように結合する。

・思考とは脳細胞を繋ぐニューロンを走る電気信号だ。

・その人間脳細胞を無数につなぎ、互いに電気信号で交信させれば、思考する巨大な脳を作る事ができるのではないか?

 

 

・その科学者は「人間を脳細胞にする」研究を始めた。

・できるだけ多くの記憶を収納するために、脳細胞もできるだけ大きくしたい。

・こうして、彼は植物をベースに人間を巨大な脳細胞に変化させる「巨人細胞」を作った。

 

 

・この巨人細胞は人間に移植されると、遺伝子の設計図を描き変え、人間を巨大な人型の脳細胞に変化させる。

・そのためには、あらかじめ巨人の体を構成する巨人化物質で大気を満たしておく必要がある。

・巨人化現象は電撃によって発動し、体内の血液と細胞を消費して、大気中に浮遊する巨人化物質を取り込む事で、巨人の体を作るのだ。

 

 

・また、巨人は記憶を集めるために食人衝動を持たされた。

・巨人細胞を移植されて巨人になると、記憶を持った人間を食べたくなり、人間を追いかけて捕食するようになる。

・つまり、巨人とは記憶の巨大な倉庫であり、自動記憶収集装置なのだ。

・そして、体内で脳と血液から記憶物質を抽出したら、不要な肉体は吐き出せばいい。それはただの乗り物、運転手を失った抜け殻に過ぎない。

 

 

・巨人に生殖能力はない。生殖能力の付与が技術的に可能かどうかは関係ない。

・むしろ、勝手に巨人の数が増えては困るのだ。

・脳の数が増えたら、つまり2人以上の人間がいたら争いが起きてしまうからだ。

 

 

・しかも巨人は植物のように光合成でエネルギーを作れるため、太陽光さえあれば全人類の記憶は巨人の中で永遠に生き続ける事ができる。

・それは全人類が永遠の命を得たのと同じだ。

・だから、科学者に良心の呵責は無かった。彼の考えでは、全人類が1人の巨人に統合されれば、病気や災害、戦争の苦しみから解放されて不老不死になれるからだ。

 

 

・その科学者は自分の本当の目的を隠し、巨人を世界に広めた。

・建築重機などの労働力、宇宙開発、細胞を硬質化させて巨大建築や宇宙船の資材として、巨人は世界を席巻した。

・多くの人が巨人細胞を自らに注入し、巨人化能力を手に入れた。

・巨人が活動しやすいように、大気には巨人化物質が大量に散布された。

 

 

・しかし、問題もあった。

・ひとつは倫理問題、もうひとつは新陳代謝の限界問題である。

 

 

・倫理問題とは、生命倫理や宗教観から巨人に反対する運動である。彼らは「巨人は神や自然の摂理に逆らう悪魔の仕業である」として激しく非難した。

・そして新陳代謝の問題とは、巨人化のために細胞や血液を消費するため、細胞分裂の限界が早まる事である。

・人間の細胞分裂の回数はテロメアの数によって決まっている。原則的に、細胞分裂の回数が多いほど長く生きられる(可能性が高い)。

・巨人能力者は巨人化するごとにこのテロメアを消費する。つまり、巨人化するほど寿命が短くなるのだ。

・そして、一度巨人化した後は、消費した細胞や血液が回復するまで巨人化はできなくなる。

・巨人化は自分の命を削ることになるので、必然的に巨人の年齢は次第に若くなり、ついには子どもが使われる事になった。

 

 

・同時に、巨人の力は軍事利用されていった。

・激化する戦争に、巨人の開発で急発展した生物工学が利用された。

・第一次世界大戦は毒ガスなど「化学の戦い」、第二次世界大戦は原爆など「物理学の戦い」と呼ばれる。

・第三次世界大戦は「遺伝子工学の戦い」となったのである。

※現実に日本以外の国のiPS細胞は軍事目的で開発されている。

 

 

・動物を元に人造人間が作られ、無人機や人間の代わりに戦闘用の巨人兵士として戦線へ投入された。

・そしてテロメア制限問題のため、できるだけ回数多く巨人化できるように、人造人間の子どもたちが兵士にされた。

・地上のあらゆる戦線で、人造人間の子どもたちが兵器として殺し合わされたのである。

 

 

・戦争は拡大し、地球は人の住めない環境になりつつあった。

・人間は地球から脱出するため、巨人を使って宇宙船を作った。

・脱出組はできるだけ多くの生物を救うため、生物の遺伝子だけを抽出して移住先で再生する計画を立てた。

・そのために利用されたのも、やはり巨人だった。

 

 

・巨人は改造され、食べた動物から遺伝子や記憶を抽出する能力が与えられた。食べた動物を体内で記憶抽出液に浸し、動物の脳や血液から記憶物質を抽出して保存する。人間が胃液で肉を消化吸収するように、巨人は遺伝子や記憶を消化吸収する事が出来るのである。

・さらに動く動物を見つけると食べたくなる衝動を与え、自動的に動物の遺伝子を収拾させた。

 

・もちろん、巨人に無差別に動物を食べさせるわけにはいかないので、巨人をコントロールできる指揮官役の人造人間が作られた。

・もともと一部の人造人間には、工事や宇宙開発でも指揮官としての能力を与えられていた。

・巨人たちは指揮官の指し示した目標を食べた。

・限界まで遺伝子と記憶を貯め込んだ巨人は、新天地に着いた後で遺伝子を解放し、多くの動物を再生する。

・いわば、脱出組は巨人を効率よく運搬できる「生物の種」として新天地に運ぼうと考えたのである。

 

・移住先の惑星には、以前から生物がいる可能性が指摘されていた土星や木星の衛星が選ばれた。

 

 

・科学者は狂喜した。ついに自分の待ち望んだ状況がやってきたのだ。

・科学者は最初から巨人のプログラムに、動物ではなく人間を食べる衝動を隠していた。

・プログラムに例えると、世界中で使われている重要なアプリケーションにウイルスを仕掛けていたのである。

 

 

・科学者は移住先の惑星に向かう宇宙船に乗りこんだ。

・移住先の惑星には惑星環境の改造チームが「壁=地球環境を再現した移住用コロニー」を作り、移民を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2014年12月23日 17:35