限定イベントテキストまとめ その3


受験戦争 戦場に賭ける命

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
受験戦争 戦場に賭ける命

 世界最高学府、を自称するバイーア・グラスノデン学院。
 それを謳うだけあって、ここでは独自の教育法をいくつも取り入れている。

 いじめの防止のために、クラスに一人オトリ役を設置するオトリ教育。
 技術力と体力を同時に養うための、ラジオを組み立てながら行うラジオ組体操。
 社会福祉としても機能している、美人すぎる給食のおばちゃんの給食。

 子どもの学力低下が叫ばれる昨今。
 幾つかの大胆な方式をとりながら、高水準の学力を維持しているのだ。

 そして、学院は今まさに、受験シーズンを迎えていた。
 
 バイーア・グラスノデン学院では、試験は三段階に分けられる。
 一次試験は学力、二次試験は体力、ちなみに三次試験は運力を計る。
 
 一次、二次を突破し、最後のガラガラでハズレの白玉を出した生徒の気持ちたるや。
 想像したくもないし、体験したくもないことだった。

 最高学府としての最高の教育、そして卒業生に確約される未来への代償として。
 どうしても戦わねばならないのが、入試での不正である。
 
 不正という悪と戦うということももちろんあるが。
 不要なバカを背負い込むこともなく、そして本当に優秀な学徒を一人も取り逃がさないために必要なことなのだ。

 近年、どんどんと不正は巧妙かつ強力になってきている。
 進化していく不正方法に、試験官もやはり、進化していかねばならない。
 
 しかし、今までと同じ『目』では見抜けない事象も増えている。
 そこで学院は、『目』を外部に求めることにした。

 不正は許さない。
 正義の試験監督官として、インチキをするものを血祭りにあげるのだ。

注意事項

 イベント選択時、以下のどの試験に監督官として参加するかを選んでください。
 選択によって、敵編成などが変化します。

 一次試験は学力試験。
 
 二次試験は体力試験。
 
 三次試験は運力試験。

 『学力試験』では、カンニングを行うクズを血祭りにあげます。
 敵は全員『魔法攻撃』を行います。
 戦闘報酬も魔法系になります。

 『体力試験』では、記録の誤魔化しなどを行うクズを血祭りにあげます。
 敵は全員『物理攻撃』を行います。
 戦闘報酬も物理系になります。

 『運力試験』では、運任せに納得できないクズを血祭りにあげます。
 敵は物理魔法混成となっています。
 クリティカル発生率など、全体的にラックが高めです。
 戦闘報酬に偏りはありません。

『マップ:受験会場という名の戦場』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
受験会場という名の戦場

 どこもかしこも、人で埋まっていた。
 巨大な腕が空から降りてきて、今にもハンバーグでも作り始めそうなほど。
 
 人が、肉が、一箇所に集まっていた。

 バイーア・グラスノデン学院。
 世界最高学府を自称する、とにかくも巨大な学校である。
 
 敷地はなんとかドーム数個分。実に百近い建物が乱立する。
 この中で、教育だけでなく様々な研究も行われている。
 
 無節操と言ってもいいほど、多岐にわたる分野の研究を行っているのだ。

 探偵のとんでもない勘違いに見る実際の正答率。
 ゾンビを使った実験における倫理面の問題について。
 アリ的な生き方とキリギリス的な生き方の最終的勝者の統計。
 分数の計算を上限とした場合の教育の限界。
 イカとタコにみるヨガの可能性。
 許容可能な大どんでん返しの範囲について。
 窮鼠が猫を噛むに至る窮状の聞き取り調査。

 これら研究を行う研究者はすべからく、この学院で学んだものたちである。
 そして、その者たちは全て、かつてこの入学試験を通過しているのだ。
 
 もしかしたら、その中に不正入学を果たしたものがいるかもしれないが。
 どうせそんなやつは、糞の役にも立たない研究をしているはずなのである。

 頑張れ頑張れと連呼しながらバンザイを繰り返す集団がいる正門を通り。
 ボディチェックを受ける受験生たちを横目に、学院を奥へと進んでいった。
 
 試験会場は3つ。すべて受験用に建てられた専用施設である。
 それぞれ、学院に至るための門番かのように、正門からすぐのところにあった。

 正面の奥に学力試験会場。
 左手に体力試験会場、右手に運力試験会場。
 
 まずは一次試験となる、学力試験会場に受験生たちは向かう。
 採点はすぐさま行われ、突破したものは続いて体力試験会場へと向かうことになる。
 そして、文武両道を証明できたもののみが、最後の運力試験へと赴くのだ。

 知、武、運。
 全てを兼ね備えた、未来の可能性を秘めるものだけが。
 
 この学院の最初の門を越え、本当の意味で中へ入ることを許される。

  • フェイズ2(なし、探索可能)

  • フェイズ3(学力試験)
(PC名)は『学力試験監督官』を提案しました
(PT名)は『学力試験会場』に移動しました

『学力試験』監督官

 学力はこの学院にとって、あって当たり前のものとなる。
 だから、最初に行う。
 
 これはただの、当然のものを当然と確認するだけの作業なのだ。

 一次試験であるので、これこそ当たり前の話だがすべての受験生が受ける。
 会場となる教室には、ふるいにかけられる前の有象無象が集まっていた。
 
 空気はやはり、重い。
 ピンと張りつめた空気、これを壊すことなく耐えきることもまた、試験なのだ。

 彼らが座る机は等間隔に置かれているが、その間隔は2メートル近く離されている。
 そのため、1フロアをぶち抜いた巨大教室であるのにさほど多くの人を収容できない。
 
 8階建ての学力試験棟、すべてのフロア、すべての教室を使っても。
 そこに用意した殆どの席が埋まってしまっていた。

 試験開始時間が迫る。
 すでに、問題と答案用紙は全ての机の上に、裏返しになって置かれていた。
 
 透けて見えやしないかと目を凝らす者もいるが、無駄である。
 紙は分厚く、裏から光を直接当てても透けないような仕様になっていた。

 もう全員が着席し、机の上に筆記用具など必要なものを揃えている。
 
 その中に、緊張でもしているのかゴソゴソとしているものや。
 質問があるのか、チラチラとこちらの様子をうかがっているものが何人かいた。
 
 彼らが『そう』なのか。
 証拠を掴むまで手を出せないのが、何とも歯がゆかった。

 そして、ようやくベルが鳴った。
 全員が一斉に、問題と答案用紙をひっくり返す。
 
 カツカツカツ、と鉛筆が紙を叩く音が教室に響き始めた。
 人生を賭けた戦いが、今始まったのだ。

 と、同時に、もう一つの闘いも始まる。
 
 試験官とカンニング犯との、命をかけた闘いである。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
不正受験生に遭遇した!

  • フェイズ4(学力試験)
受験会場という名の戦場

 千切っては投げ。千切っては投げ。
 カンニングに手を染めた不届き者を叩き出し続け、3時間が経過して。
 
 ついに、終了のベルが鳴った。

 ベルが鳴った後、最後に悪あがきをしている不正者を見つけて叩き出し。
 それで、(PC名)の仕事もまた、終わった。
 
 会場のそこら中で、大きく息が漏れる。
 それは嘆息なのか、ただ次に向けて一息ついただけか。
 
 表情を見れば何となく分かるが、まじまじと見るわけにもいかないだろう。
 重い重い溜息をついているものは、特に。

 数人の警備員を従えた審査官が答案用紙を回収し、教室を出て行く。
 その背中に、前から二番目の席に座っていたけして若くはない男が襲いかかった。
 
 だが、その背に手が届くまでもなく警備員に取り押さえられ、
『もう一度! もう一度チャンスを!』
 と、涙ながらに叫んでいた。

 審査官は持っていた答案用紙の束から、一枚抜き取ってその男に手渡す。
 そして、そのケツを蹴り飛ばしながら、ともに教室を出ていった。
 
 ここから審査が終わるまで、受験生はこの部屋を出ることは許されない。
 ここで、結果を待つのだ。
 合格か、不合格か。そのいずれかしかない、間を取った答えなど存在しない、結果を。

 監督官である(PC名)には、これに付き合う必要はない。
 すでに他の、多くの監督官は教室を出てしまっている。
 
 だが、完全にその波に出遅れて、緊張感たっぷりの教室に取り残されて。

 今更出るに出れず、このまま結果発表までここにいることになりそうだった。

  • フェイズ3(体力試験)
(PC名)は『体力試験監督官』を提案しました
(PT名)は『体力試験会場』に移動しました

『体力試験』監督官

 学力試験を終え、それを通過したものたち。
 人数はおよそ半減していた。

 その残った顔つきを見れば、なるほど確かに頭が良さそうである。
 メガネ率と73率が高い。
 
 だが、二次試験が体力試験であることは、当然周知されている。
 そんな彼ら彼女らも、頭がいいだけではないのだ。

 学力試験をギリギリで通過し、こちらに照準を合わせていそうなもの。
 そもそもどうやってパスしたのか不思議なもの。
 
 そんな、見た目から体力寄りなものもちらほら見える。
 文武両道とは言え、その割合は千差万別といった感じだった。

 試験科目は、いくつかの項目に分かれる。
 走ったり飛んだりなど、規定種目によって基礎体力テストを行い。
 最後に、選択競技により個別テストを行う。
 
 選択競技は、20ほどある競技の中から自由に選択できる。
 それぞれに専門の審査官がおり、点数をつけるのだ。
 この選択種目で、点数の取りやすい、取りにくい、というのがでてくるわけである。

 (PC名)は規定種目の監督官として、この体力試験に参加することになった。
 
 最初の半分に減ったとは言え、まだまだ参加人数は多い。
 試験はすでに始まっており、何人かは合格ラインに届かず不合格となっていた。
 
 規定種目は、すべての項目で合格ラインを上回らなければならない。
 厳しい試験なのである。

 厳しいが故、不正もまたはびこる。
 
 ちらっと見ただけでも、不正を行っていそうなものが何人か確認できた。
 その証拠を掴み、叩きのめす。

 それが体力試験監督官、(PC名)の本日のお仕事である。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
不正受験生に遭遇した!

  • フェイズ4(体力試験)
受験会場という名の戦場

 50メートル走。
 100メートル走。
 800メートル走。
 1500メートル走。
 1万メートル走。

 走るだけでも、これだけ走らせられる。
 ここからさらに、幅跳び、高跳び、三段跳びと続き。
 反復横跳びやら垂直跳びで、ふとももを完全に破壊されることになる。
 
 足が壊れれば、次は腕である。
 腕立て伏せを準備運動代わりに、懸垂にバーベル上げ。
 そして、砲丸投げ、ソフトボール投げ、ドッジボール投げと投げまくる。
 ボールが飛んで、肩も飛ぶのだ。

 そんなこんなで、全身を酷使させられる受験生。
 
 一次試験で頭を使い切った後なので、気分も変えられてちょうどいい。
 などと思えるのは、最初の2,3競技までだった。
 
 規定種目の全てのテストが終わる頃には、全員完全に目が死んでしまっていた。

 受験生同士の勝負であれば、同じ疲労の中で勝ち負けを競うことができる。
 だが、敵は人ではなく記録。合格ラインとして設定された数値、それとの戦いなのだ。
 
 その合格ラインとの勝負に一つでも負ければ、もう挽回の余地はない。
 その時点で不合格となり、即時敷地内から追い出されることとなる。

 今も目の前で、一人の男が不合格を言い渡されている。
 何か言いたそうな顔はしていたが、口を動かすカロリーはもう残っていないようだった。
 
 下手な腹話術師のように唇をプルプルと震わせて、喉が動く。
 ただそれだけで、やはり音は何も出てこなかった。
 
 そして、それ以上は微動だにすることなく、係員に両脇を抱えられて退場していった。

 規定種目を生き残ったのは、一次試験を通過して体力試験に挑んだものの、さらに半分ほど。
 実に、全受験者の4分の1である。
 文武両道とは、厳しい壁だった
 
 だが、それでもこの体力試験はまだ終わらない。
 最後の選択種目。自身が最も得意とする1競技を選び、その力を示すのだ。

 それをもって、いよいよ終わる。
 四肢が千切れ、心肺が限界を超え、思考が停止する。
 
 それでようやく終わるのだ、この悪夢から。

 そして生還したものだけが、次の地獄へと進む権利を得るのである。

  • フェイズ3(運力試験)
(PC名)は『運力試験監督官』を提案しました
(PT名)は『運力試験会場』に移動しました

『運力試験』監督官

 学力試験、体力試験。
 持てる力をすべて出せたものも、出せなかったものも。
 
 ここまでで不合格となったものは、一定の納得を持って試験会場を後にした。
 諦めるのか、また来年挑むのか。
 それはまた、明日にでも考えるべきことである。

 ただし、ここから先に、納得など存在しない。
 合格すれば大喜びだが、不合格となれば受け入れることは簡単にはできない。
 
 実力も努力も顔も金も関係ない。
 自身の運以外に作用する要素のない、純粋な運勝負が始まるのだ。

 ガラガラを回して、赤玉で合格。白玉は不合格。
 ○、×と書かれた壁に向かって突撃。抜けたら合格。跳ね返されたら不合格。
 ロシアン饅頭。ワサビたっぷりで不合格。
 コイントス。表で合格、裏で不合格。
 
 さらには、チンチロリン。神経衰弱一発勝負。配ったままポーカー。
 など、ギャンブルのような科目まで存在していた。

 試験会場はだだっ広い一つのフロアで、全体的に薄暗い。
 三次試験ということで時間も遅くなってきているというのもあるのだろうが。
 監督するものとしては、なんともやりにくい現場である。
 
 そしてこの空気感もまた、居心地が悪くて所在がない。
 緊張感よりも、どす黒い感情渦巻く暗黒領域。
 時折聞こえる断末魔の悲鳴のような声がまた、それを助長していた。

 もちろん、と言うのも変な話だが。
 ここにも不正を行うものがいる。
 
 だが、ここで排除しなければならない大半は、それではない。

 学力、体力ともに通過し、実力を示したにも関わらず。
 最後の運試しに失敗し、不合格になったのを受け入れられない輩である。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
不正受験生に遭遇した!

  • フェイズ4(運力試験)
受験会場という名の戦場

 あれほど、掃いて捨てるほどいた人が、もう随分と少なくなっていた。

 学力試験、体力試験を終え、運力試験へと進んだ人たち。
 その厳しい戦いの過程で、多くの受験生たちが去っていった。
 
 頭を使い切り、体を使い切り。
 ここにいるのはもはや何も残っていない、抜け殻のような受験生たちである。

 だが、最後となる三次試験には、何も必要ない。
 考える頭も、動かす体も、必要ない。
 
 最悪、目で合図でもすれば、係員が代わりにガラガラを回すなりカードを裏返すなりしてくれる。
 どのゲームを選んでも、やることはごくごく単純なことなのだ。
 あとで文句を言っても何も通らないが、そうしたければそれもまた自由である。

 この運力試験には、いわゆる身代わり受験も許可されている。
 他人任せにすることもまた、その人の運力の一つ。
 
 受験後、その人との関係に大きなヒビが入る可能性もあるが。
 それで心が守られるのなら、それはそれで悪くはない選択肢と言えるだろう。

 実際、後にその誰かのせいにするかどうかは知らないが。
 このために、代理人を立てるものもいるようだった。
 
 その誰かの強運に自信があるのか、自身の不運に絶望しているのか。
 単なる責任放棄ではないことだけは、祈りたいものである。
 
 その結果がどうなったかは、見届けるのはやめておいた。
 もしダメだった場合、もうどうなっても地獄絵図しか思い浮かばなかった。

 薄暗い試験会場。
 運力試験は滞りなく進んでいる。
 
 この試験が他二つと違うのは、全て受験生に任されているということだった。
 どの運試しに挑むのか。誰が挑むのか。そして、いつ挑むのか。
 
 一応、全体の試験終了時刻は設定されているが。
 試験自体が一瞬であることを考えると、それは充分に長い時間だった。

 もう、どちらの結果が出ても次はない。
 この三次試験の通過は、すなわち合格である。

-フェイズ4(共通)
イベントマップ『受験会場という名の戦場』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

受験戦争 戦場に賭ける命

 この受験で最も特異なのは、当日、というか即座に結果が出ることである。
 流石に学力試験は審査に時間がかかるが、それでも1時間できっちり終わらせた。
 あれだけの数の受験生である。
 裏でどれだけの人数が採点を行っていたのか、窺い知れるというものである。
 
 体力試験、運力試験については、本当に即座である。
 体力試験では、合格ラインとして設定されている記録をクリアできるか否か。
 運力試験に至っては、マルかバツか、それだけだった。

 一次試験である学力試験では、およそ半分の受験者が涙をのみ。
 二次試験である体力試験で、さらに5分の1ほどにまで絞られた。
 三次試験、運力試験にまで駒を進めたのは全受験者の1割。
 
 死屍累々と横たわる死者たちの上に立つ、猛者たちである。

 この時点ですでに、実力においては何の問題もない。
 超のつくエリートたちである。
 
 だが、それでもまだ届かない。能力だけはダメなのだ。
 才能と、努力と、そして幸運。
 この3つを兼ね備えたものだけが、本当の意味での成功者となりえる。

 合格者、26名。
 それが今年、全ての試験を突破した者たちの数である。
 
 彼らは敷地の奥へと進む許可を得て、講堂に集められていた。
 広い講堂に、わずか26人。
 そしてその目は、今日一日を経て死んだ魚の目になっていた。

 舞台袖から現れた初老の男性が登壇し、演壇の上に立つ。
 この学院の二人いる学長の一人、シュメルツ・バイーアである
 
「皆さん、本日は誠に、ご苦労様でした」
 優しく声をかけながら。
 満足そうな笑顔で、合格者たちを壇上から見下ろしていた。

 死んだような目で、彼らは力なく見返してくる。
 それは毎年、いつもの光景だった。
 
 その中で稀に、極稀に力が残った目で見返してくるものがいるのだ。
 それを見つけるのがシュメルツの楽しみだった。
 
 残念ながら、今年はそれを見ることはできなかったが。

 ほんの少しだけ、彼らにはバレないように落胆しながら。
「知、武、運。全てを兼ね備えた皆さんだけが、この学院で学ぶことを許されます」
 シュメルツ学長は挨拶を続けた。
 
「皆さんは、自身をエリートだと思っていることでしょう」
「しかしながら、それは正確には、違います」
「皆さんはエリートになり得る資格を得たに過ぎません」
「いわば、卵。これから殻を破ってヒヨコとなり、成鳥へと育たねばなりません」
「そこで初めて、飛び立てるのです」
「そのために、学ぶのです。翼を大きくし、それを動かす筋肉をつけ、風を読む感覚を養い、それでようやく、飛べるのです」

 学長の挨拶はまだ中盤。
「しかし、そこで終わりではありません。飛ぶのはあくまで手段。目的は違うはずです。目的はそれぞれにあるでしょう。その目的に向かって、飛ぶのです」
 だが、合格者たちの殆どはすでに、椅子に深く沈み。
 
 深い深い眠りに落ちていた。

ミッション『受験戦争 戦場に賭ける命』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『キットカッツ丼』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『偽造学生証』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
受験戦争 戦場に賭ける命
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

愛をとりもどせ

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:愛をとりもどせ』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は3/15(水)~4/1(土)までです

愛をとりもどせ

 一ヶ月前に発生した、大規模バレンタイン詐欺事件。
 概要は以下のとおりである。

 犯人は複数人のグループ。
 およそ20名から30名。末端まで含めればさらに多いと思われる。
 
 確認できている構成員は全員男性で、年齢は十代から四十代。
 うち数名は前歴があり、面も名前も割れている。
 なお、その前歴も全て詐欺である。

 構成員のうちのフロントメンバーが言葉巧みに女性たちに近づき、バックメンバーがそれをサポート。
 あの手この手で彼女たちをもてはやし、ほめちぎり、かつぎあげ。
 その心を奪うというのが主な手口である。
 
 そして、来る2月14日。運命の日である。
 彼らはチョコレートを女性たちに懇願。絶対に来月返すからと、そう約束したのだ。
 
 女性たちは根負けし、チョコレートを彼らに渡してしまった。

 そこから連絡は途切れがちになり、半月が経過する頃には完全になくなっていた。
 電話は不通、家は引き払われ、職場はテナント募集中。
 
 気づいたときにはもう遅かった。
 いや、真実を言えばとっくに気づいてはいたのだ。だが、認められなかった。
 自分が騙されたことに。バレンタイン詐欺にあっていたことに。

 被害者は判明しているだけで百人以上。
 公開以降、日ごとに被害相談が増えており、まだまだいるものと思われる。
 
 ホワイトデーはまだ少し先であり、その時が来たらきっと返してくれると。
 いまだ夢見ている乙女も多いようだった。
 
 だが、夢は夢であり、現実は冷めている。

 犯行グループは全員地下へもぐり、完全に姿を消してしまったが。
 懸命なる女性捜査官たちによる捜査の結果、ある倉庫を特定した。
 
 彼らが騙し取った大量のチョコレート、その保管場所である。
 数十人の人間は隠せても、数トンに及ぶチョコレートを隠すことはできなかったのだ。
 
 まさに、頭隠してチョコ隠さずである。

 倉庫への内偵により、出入りするものたちの姿が確認された。
 一人を確保して違法捜査で口を割らせたところ、犯行グループの全メンバーが近々この倉庫に集結するという。
 
 目的は集めたチョコレートの山分け。
 そしてその日こそが、ホワイトデーである。

 犯行グループを一網打尽にするべく。
 メンバー全員が倉庫に集結したタイミングでの突撃が、カフェでの捜査会議で決定した。
 
 しかし、女性捜査官3名での突撃では心もとなく、サポートを必要としている。
 援護と言わず最前線突撃でもいいので、手を貸してはいただけないだろうか。

『マップ:ヴァレンチヌスの隠し倉庫』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
ヴァレンチヌスの隠し倉庫

 港近くの倉庫街。その一角に、彼らのアジトの一つがあった。
 倉庫の借り主の名は、ヴァイス・ホワイト。もちろん偽名である。
 
 彼らがこの港湾部で借りている倉庫は全部で7つ。
 すべて違う名義だが、ここ以外の6つは全てダミーだった。

 間延びした汽笛の音が遠くから聞こえてくる。
 港に泊められた船舶からだろうか。
 伝染するあくびのように眠気を誘ってくるが、従うわけにはいかないだろう。
 
 日は傾き、倉庫街は闇に包まれている。
 交差点ごとにしかない頼りない街灯では、全てを明るく照らすことは不可能だった。

 彼らはすでに、倉庫内に集結していた。
 
 犯行グループの呼び名はヴァレンチヌス。
 これは彼らが名乗ったものではなく、捜査機関がつけた名称である。
 
 彼らの組織が名前を持たないのは、組織として動くことがないからだった。

 彼らはグループではあるが、内部の関係性はかなり希薄であると言っていい。
 
 いわゆるリーダーといったものはおらず、上下関係や指揮命令系統もない。
 色分けとしては、フロントメンバーとバックメンバーに分かれるぐらいのものである。
 だがそれとて、役割の違いのみで上だ下だというものではない。
 
 フロントメンバー間に至っては、横の連携は全く無い状態だった。

 犯罪組織というよりも、犯罪者たちがただ集まっているという印象である。
 
 そんな状態であるので、一人を捕らえれば芋づる式にというわけはいかないだろう。
 どれだけ痛めつけたところで、知らない情報を出すことはできない。
 
 初めからそれを狙いとして、こういう組織形態にしたのかもしれなかった。

 だから、今日、ここで。
 ひとり残らず、一網打尽にしなければならないのである。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
スリーシスターズ

 港湾地区にある倉庫なだけあって、それは一つ一つがとても大きい。
 
 巨大なワンフロアで、天井も高い。
 その中に、これまた巨大な赤と青のコンテナが複数、縦に積み横に並び置いてあった。

「コンテナの中身を確認。チョコレートだそうです」
 イヤホンから聞こえてくる無線連絡を、小さな声でこちらに伝えてくる。
 彼女は親指を力強く立て、三段重ねになったコンテナの一番上に向けて掲げて見せた。
 
 天井にほど近いそのコンテナの上に、這いつくばるようにして身を潜め。
 コンテナの中身を調べていた捜査官も、それに応えるように静かに親指を立てていた。

 3人の女性捜査官。
 コードネームはそれぞれ、パーカー、プリンセス、ハイボールである。
 
 コンテナの上にいるのが最年少のパーカーで、(PC名)のすぐ隣で彼女と無線で連絡を取り合っていたのがハイボール。
 
 リーダーで最年長のプリンセスは、倉庫の外に逃げられた場合に備え。
 この倉庫の屋上でスナイパーライフルを持って隠れているはずである。

 (PC名)はハイボールとともに、すでに倉庫内に潜入していた。
 裏口から入ってコンテナの陰を移動、今は入り口の近くに身を潜めている。
 
 倉庫全体を見渡せる、絶好の位置に陣取っていた。

  • フェイズ3
血祭りホワイトデー

「情報によりますと、今日集まるメンバーは全部で46名」
「倉庫内には現在、38名が確認できています。屋上はどうですか?」
 マイクを通じて、ハイボールが屋上に隠れているプリンセスに問いかける。

『屋上には8人。うち3人は馬鹿面さげてタバコを吸っていますわ』
 隠れているつもりがないのか、声のボリュームがおかしいらしく。
 ハイボールの耳に押し込んだイヤホンから、その声は堂々と漏れ出ていた。
 
『いつでも後頭部を撃ち抜けますわよ』
「生け捕りでお願いします」
 こちらは小声で、ピシャリと釘を差した。

「では、プリンセス先輩のカウントで作戦を開始します」
「先輩は屋上を制圧して、逃亡者の狙撃準備を」
『了解ですわ』
 相変わらず壊れたボリュームの返事と。
 
「パーカーは裏口を監視しつつ、そこから我々の援護を」
 コンテナの上から無言で応えるサムアップ。
 その二つの返答を確認し、最後にハイボールは振り返った。

「私はやつらに突撃しますので、入り口を抑えてください」
「絶対ここで、全員逮捕を…」
 
『突撃ですわよ!』
 ゼロから始まるカウントダウンで、プリンセスが今まで以上の大声を張り上げる。
 続いて銃声。一応消音装置は使っているらしく、ここまで直接は聞こえては来ないが。
 
 倉庫内の彼らも、屋上との連絡手段はあるだろう。
 すでにざわつき始めていた。

「行きます!」
 屋上のプリンセスに遅れること数秒、ハイボールが銃を構えて飛び出す。
 コンテナの上のパーカーがその進路に銃弾の雨を降らせる。
 
 ついに、制圧が始まった。
 (PC名)の仕事もまた、始まった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
犯罪組織ヴァレンチヌスに遭遇した!

  • フェイズ4
ヴァレンチヌスの隠し倉庫
 捜査官三人娘。
 パーカー、プリンセス、ハイボール。その連携は見事だった。

 スナイパーライフル一本で近接戦闘までこなすプリンセスが屋上を制圧。
 彼女の狐のような目からは、鼠一匹この建物から逃げられない。
 
 今日という日のために、防弾も兼ねてトリプルパーカーで挑んだパーカー。
 コンテナ上から、倉庫内に弾幕を撃ち降ろす。
 ハイボールに当たらないのはもはや奇跡と言っていいだろう。

 そして、頭上から降り注ぐ44ミリ弾の雨霰の中、ハイボールは駆け回っていた。
 
 走り、飛び、跳ね、転がり、滑り、決めポーズ。
 その姿はさながらバレエダンサーかキング・オブ・ポップのように。
 
 自身の銃を撃つこともなく、ただただ彼女は戦場のど真ん中で、踊っていた。

 コンテナの上から適当に撃ちまくる銃弾に、次々と倒れるヴァレンチヌスのメンバー。
 
 倉庫のど真ん中で優雅に踊り狂う、あるいは狂い踊るハイボールを狙って撃つが、なぜかまったく当たらない。
 それどころか、反対側の壁に当たった跳弾が味方を倒す始末だった。
 
 しばらくして、彼らはそれを無駄と悟った。
 当たらない。というか、そもそも倒す必要がない。そして、逃げることを決断した。

 裏口へと逃げたメンバー。
 それは、コンテナの上からパーカーがいとも簡単に撃ち落とした。
 
 弾幕と狙撃、彼女はそれを同時にやってのける。
 トリプルパーカーの今日、彼女は3つまでならば同時に行うことができるのだ。

 裏口がダメなら、正面入口へ。あちらはコンテナからは遠く、狙撃は難しい。
 しかし、こちらはこちらで、(PC名)が門番として立ち塞がっていた。
 
 前門の虎、後門の狼。
 どちらがいいかと言えば、まあ狼だが。実際選ぶとなれば、どちらも選ばないだろう。
 
 別の道を探すのがまともな選択だった。

 ガラスが割れる音が倉庫に響く。
 逃げ場を窓に求めたメンバーの一人が、ガラスを破って外に出た音だった。
 
 それを見た別のメンバーも、数人がその後を追う。
 同じ窓から一人、そして別の窓を壊して2人のメンバーも倉庫から逃げ出していた。

 しばらくして、その割れた窓の外から銃声が聞こえてきた。
 
 それは巨大な一発の銃声。
 そう聞こえるほど、ほとんど同時に鳴った4発分の銃声だった。
 
 その時、倉庫の中央で踊るハイボールの耳には。
 無線のイヤホンを通じて、屋上にいるプリンセスの上機嫌な高笑いが届いていた。

イベントマップ『ヴァレンチヌスの隠し倉庫』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

愛をとりもどせ

 サイレンの音が割れた窓から聞こえてくる。
 
 少し前にハイボールが本部に入れた連絡により、ようやく本隊が動き出したのだ。
 だがその音源はまだ遠く、この倉庫にたどり着くまでは暫く掛かるだろう。

 倉庫内に男たちが転がっていた。
 ロープで縛り上げられ、それぞれに違う音色でうめき声を上げている。
 
 ただの一人の逃亡者も許さず、巨大詐欺集団ヴァレンチヌスは壊滅した。
 その全構成員がここに、こうして転がっている。
 そして、コンテナの中にある彼らが奪ったチョコレートも無傷での回収に成功していた。

『なあ。頼む。助けてくれないか』
 限界まで抑えた小さな声が、ほとんど聞き取れなかったが(PC名)の耳に届く。
 だがそれは、こちらに向けて吐かれたセリフではなかった。
 
 縛られて転がされた男の一人。
 白いスーツ姿の銀髪の男が、すぐ近くにいるハイボールに向けていった言葉だった。

『君に、助けてほしいんだ』
『君だけなんだよ、僕を助けられるのは。君しかいない。僕にはもう、君だけなんだ』
 庇護を求める、捨て犬のような顔で。
 
 ハイボールはちらちらと周りを、倉庫内に降りてきていた同僚2人を見やる。
 そして困った表情で男を横目で見ながら、
「あの。困ります。急にそんなこと言われても。私。無理ですから」
 男にだけ聞こえるように小さな声で、顔を赤くしながらそんな返事をしていた。

『大丈夫。君ならできるよ。いや、君にしかできないんだ。君だけなんだ』
「ええ? いや、でも、そんな。私以外にも助けてくれる人いますから、たぶん……」
『そんなことない。君だけだ。僕が頼れるのは、僕を助けられるのは、君だけなんだ』
「えええ? いや、でも、だって、そんな。どうしようかな」
『大丈夫。簡単だよ。大丈夫。だから早く――』

 スパン。

 寝転んでいた、男の体が真横に吹っ飛ぶ。
 僅かに起こしていた頭、そのこめかみにプリンセスが放った銃弾がめり込んでいた。
 
「心配なさらないで。ゴム弾ですわよ」
 銃口から煙が昇るスナイパーライフルを背負い直し。
 ピンク色のロリータファッション姿のプリンセスが、一瞬で青ざめたハイボールに言い放っていた。

 どう考えても心配になる勢いで吹っ飛んだ男が、白目をむいて白い泡を吹いている。
 首から上がなくなったわけではないのが、とりあえずの救いであるだろうか。
 
「まったく。そんなだから、署の男たちにチョロイと言われるのですわよ」
「……申し訳ないです」
「心を強く持ちなさい。そうすれば男たちの甘言など、恐るるに足らずですわよ」
 あからさまに落ち込んだ様子のハイボール。
 プリンセスはそんな彼女に先輩風を吹かせていた。というよりも、ただ単に尊大だった。

「さて。ホワイトデーの3倍返しから逃れようとした罪、万死に値しますわ」
「罰金も刑期も3倍ですから、覚悟しておくといいですわ」
 横たわる男たちの耳に、そのセリフとその後の高笑いが届いているかどうか。
 
「3倍の受刑者を詰め込んだ雑居房で、3倍臭い飯を喰らうといいですわ」
 少なくとも、彼女にこめかみを撃ち抜かれた彼には無理そうだった。

「……先輩、荒れてますね」
「……おととし、バレンタインデーの翌日に彼氏さんと別れてから、この時期は特にね」
 プリンセスには聞こえないように、パーカーがハイボールに話しかける。
 ハイボールもまた、聞かれないように言葉を返していた。
 
「それともこの場で、3倍分の銃弾で銃殺にしてやろうかしら!」
 プリンセス先輩が叫ぶ。その目は割りと、冗談でもなさそうだった。

ミッション『愛をとりもどせ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた
  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
オニゴロシで鬼退治
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『おまわりさん』が修得可能になった

遙かなる黄金狂時代

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:遙かなる黄金狂時代』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/3(水)~5/20(土)までです
遙かなる黄金狂時代

 狂人たちの時代。
 それは誰にも望まれることなく、向こうからやってきた。

 そんなつもりはなかったと嘆いても、覆水は盆にはかえらない。
 汚れた水をいくつか掬える程度であり、そんのものはもう飲めもしないのだ。

 だから、望む望まずとに関わらず、事態は一方的に進んでいく。
 一方的に、不可逆的に。
 覆水は低きへと流れていく。

 その噂が流れ始めたのは、4月の初め辺りだった。
 それは、ある街で大規模な『宝探しゲーム』が行われる、というものである。

 イベントというのは、多くの場合、大々的に告知されるものである。
 しかしそれは、噂という形を取って流された。

 意図して流されたものか、流れてしまったものか。
 そもそもその噂の正否すら定かではないが。

 噂は街の外へ広がり、あるものたちの耳に届いてしまった。

 最終的に、聞こえてきた噂はこうなっていた。

 主催者はとある資産家。
 街全体を使った宝探しゲームが行われる。
 時間は無制限だが、参加者によって宝が見つかればそこで終了となる。

 そして、もっとも重要なのはお宝情報である。

 それは、『1トンの金塊』ということになっていた。

 狂ったものどもを黄金が惹き寄せたのか。
 あるいは、黄金が彼らを狂わせたのか。
 その日、エルドラド・シティには狂人たちが黄金を求めて集結していた。

 1トンもの黄金を奪い合う、宝探しゲーム。狂人たちの狂騒が始まったのだ。

 この、狂人たちのゴールデンウィーク。
 参加するもしないも自由である。

注意事項

 イベント選択時、『宝探しゲーム』での捜索場所を選択できます。

 捜索場所によって、敵編成が一部のみ変わります。大半は同じです。
 固定敵ではないので、特に変わらない場合も大いにあります。

 戦闘勝利時、捜索場所で獲得報酬に補正がかかります。
 補正は以下のとおりです。

市長邸の庭
 戦闘勝利時、質のいい装備アイテムが拾えるフィールドです。
 ドロップ率そのものには影響しません。

ポチの犬小屋
 戦闘勝利時、高Lvの魂片が拾えるフィールドです。
 ドロップ率そのものには影響しません。

ドンパチ銀行
 戦闘勝利時、魂塵が多めに拾えるフィールドです

小学校の校舎裏
 戦闘勝利時、装備経験値、スキル経験値がもらいやすいフィールドです

『マップ:黄金色のエルドラドシティ』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
黄金色のエルドラドシティ

 エルドラド・シティ。
 『宝探しゲーム』開始日当日、街は黄金色に染まっていた。

 街中の道路や建物、その全てが金色に輝いている。
 初め、それら全てが黄金に見えた。まさにここが黄金郷である、と。

 だがそれは、黄金どころか金箔を塗ったものですらなく。
 金色のペンキが塗られたものや、金色の布や紙が貼り付けられていたりするだけのようだった。

 1トンの黄金を奪い合う場所としては、なんとも安っぽいというか。手作り感が強い
 子どものお遊戯会でも、場合によってはもう少し出来はいいだろう。

 小さな町のお祭り。あるいはふれあいイベントか。
 それは、そう呼べばしっくり来る、そうとしか呼べないものだった。

 しかしそれでも、噂話によって彼らは集まってきていた。
 黄金というエサに、目と頭がくらんだ狂人たち。

 彼らによる宝探しゲームはすでに始まっていた。

 多くの狂人たちが、街に散り散りになっている。
 そして血眼になったり血まみれになったりしながら、黄金を探していた。

『宝探しゲーム』受付

 (PC名)がまず向かったのは、街の入口にある受付だった。

 白色の仮設テント、その下で二人の女性が机の向こうに側に並んで座っている。
 その前に立つと、机を挟んだ向こう側からとびきりの笑顔が飛んできた。

 右のショートカットの女性からは書類が数枚。
 そして隣のベリーショートの女性からはペンがそれぞれ出てくる。

 それらは『宝探しゲーム』参加の申込書と、いくつかの注意書き。
 注意書きとは要するに、当方は責任を負いかねます、の一点張りのやつである。

 そこにサインをして、正式に『宝探しゲーム』への参加が決定した。

 一応、目的の『宝』についても聞いたが、笑顔ではぐらかされてしまった。
 2人のその笑顔に見送られながら、街へと繰り出す。

 『1トンの金塊』が隠されているという噂の、黄金と狂人の街である。

 そして、注意書きとは別に、口頭で彼女たちとした約束を改めて思い返していた。

 街の人たちには迷惑をかけないこと。
 彼らはゲームの参加者ではなく、狂騒の観客であるということだった。

 ただし、ゲームに参加している市民も数名だが存在している。
 彼らは『宝』を守る番人として、主催者側として参加しているのだ。

 まあ、邪魔者という意味では、どちら側であろうと同じではある。
 どうせ、こちら側で共闘などありえないのだから。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
  • フェイズ3
 街に散らばった狂人たち。
 その矛先は、様々なものに向いていた。

 何かを隠せる場所、そういう考え方からすればそんなものはいくらでもある。

 あらゆる建築物、あらゆる建造物、地面、物陰。
 死角となる場所、視線を遮ることが可能な何かがあればそれだけで足りる。
 それらすべてが捜索の対象であり、狂人たちにとってのターゲットでもあった。

市長邸の庭(戦闘前)

 無限にある選択肢の中から(PC名)が選んだのは、『市長邸の庭』だった。
 市長邸の庭、これ以上の説明はほとんど必要ないだろう。

 この街、エルドラドシティの市長である、ファイティング・マイクの家の庭である。

 このゲームの主催者の名は明かされていない。
 だが、行政の長であるマイク市長というのはその第一候補と言っていいだろう。
 街を挙げてのイベントに、彼が噛んでいないわけがない。

 となれば、『宝』は手元に置く公算が大きい。
 管理のしやすさ、安全性、そして発見される様を間近で見るためである。

 そして、同様の考えに至ったものもいたようだった。
 すでに市長邸には多くの狂人たちが詰めかけ、あちこちひっくり返して暴れていた。

 それに応戦している一人の男の姿。
 上半身裸にオーバーオールという、人としても市長としても奇抜な格好で、彼、マイク市長は狂人たちと狂闘していた。

ポチの犬小屋(戦闘前)

 無限にある選択肢の中から(PC名)が選んだのは、『ポチの犬小屋』だった。
 ポチとは、ハルモニー家で飼われている犬である。

 ポチには癖があった。そしてその癖は広く、街中で知られていた。
 それは犬としてはありがちな、収集癖である。

 だが、その対象は食べ残しなどではなく。
 ありとあらゆるものが彼の収集癖の対象だった。
 とにかく物を集めては、自身の犬小屋まで持ってきてしまい込むのだ。

 犬小屋の中が今どういう状況なのか、飼い主でさえ分からないと言う。
 希望のないパンドラボックスだった。

 だが、この状況においては希望が見える。
 『宝探し』という分野では、犬は無類の強さを誇るのだ。

 つまり、どこかに隠されたであろう『宝』は、それがどこであったにせよ。
 すでにこのポチが回収して、しまい込んでいる。その可能性が高かった。

ドンパチ銀行(戦闘前)

ドンパチ銀行

 街に散らばった狂人たち。
 その矛先は、様々なものに向いていた。

 何かを隠せる場所、そういう考え方からすればそんなものはいくらでもある。

 あらゆる建築物、あらゆる建造物、地面、物陰。
 死角となる場所、視線を遮ることが可能な何かがあればそれだけで足りる。
 それらすべてが捜索の対象であり、狂人たちにとってのターゲットでもあった。

 無限にある選択肢の中からでい蔵が選んだのは、『ドンパチ銀行』だった。
 この街唯一の銀行であり、最も黄金の匂いがする場所である。
 
 そして同時に、最も堅固な守りを有する金庫のある場所でもあった。

 宝探しがあって、その『宝』を銀行の金庫にしまってしまうなど。
 はっきり言って、ありえない話である。
 
 だが、その『宝』が『1トンの金塊』となれば話は変わってくる。
 単純に1トンの重さのある金属塊として、物理的に動かすのが難しいというのもあるが。
 価値そのものの大きさが、体積としては抱えられる程度の大きさではあっても、とても抱えきれるものではなさそうに思えた。

 何処かに隠してそのまま紛失など、笑えないどころか怒りもできないだろう。
 ならば、一番安全な場所に隠しておくことは充分に考えられる。
 
 守る気マンマンで、見つけさせる気などサラサラない。
 金塊が最初からあった場所。金庫の中に、そのまま置いてあるのだ。

 これはもう宝探しゲームなどではない。
 純粋な金庫破りである。

小学校の校舎裏(戦闘前)

 無限にある選択肢の中から(PC名)が選んだのは、『小学校の校舎裏』だった。

 街にある唯一の小学校。1学年3クラス、6学年で500人を超える生徒を有する。
 大変に教育熱心な教師の集まる小学校である。

 『宝探しゲーム』とは、ある意味で大変に相性が良い場所と言えるだろう。
 レクリエーションとして、そういったことが行われることもよくある。

 塀に囲まれた敷地は広く、建物もシンプルだが巨大。
 隠し場所はいくらでもあった。

 だが、この場所においてネックとなるのは、やはり小学生である。
 彼らは宝を見て、黙っていられる神経など持ち合わせてはいない。
 むしろ喜々として、教えようとしてくるだろう。

 つまり、この場所に隠すということは、宝を探すものたちだけではなく。
 小学生たちの目からも隠さなければならない、ということである。

 となれば、校舎の中に持ち込むことは難しい。
 たった一人の目に触れればそれでアウトである。すぐに情報は共有されてしまう。

 『宝』があるとすれば校舎外。
 そして、運動場などがある表側ではなく、裏。

 校舎裏にこそ、子どもたちの死角があるのだ。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
黄金狂に遭遇した!

  • フェイズ4
狂人たちのゴールデンウィーク

 街に放たれた狂人たち。
 彼らが狂った、あるいは狂わされた原因は黄金にある。

 だが、勘違いしてはならないことがある。
 それは、彼らは自らの選択として、狂いたくて狂ったということである。

 その大義名分として、黄金は最も適当だったのだ。
 そしてそれは、1トンという巨大金塊。
 大変に狂い甲斐がある、そういう代物がエサとしてぶら下げられていた。

 かくして、狂人たちはエルドラドシティに現れた。
 『1トンの金塊』という噂、その大義名分を大上段に振りかざして。

 金に目がくらんだフリをして。
 欲に負けたフリをして。
 弱い心のフリをして。

 狂いたくて狂っただけの怪人たちが、街を跳梁跋扈する。

 金塊を探す、フリをしながら。

黄金狂に遭遇した!
バトルオーバー!
(PT名)の勝利です

市長邸の庭(戦闘後)

 市長の丸太のような腕が、ピエロ男の首を刈り取る。
 体を回転しながらのラリアット、それは同時に裏拳で別の狂人を倒していた。

 自身の筋肉でパンパンに張りつめたオーバーオールの肩紐が、バチーンとはじけ飛びそうな勢いで。
 市長は1人、闘っていた。

 市長邸の庭には多くの狂人が倒れていた。
 その大半は、家主であるマイク市長の手によるものである。

 庭の土はあちこち掘り返され、家は壊され、家族は泣き。
 彼の大豪邸は、かなり豪快に荒れていた。

 しかし、それに対して彼が怒っているのかと言えば、そうでもなさそうで。
「はぁーっはっはっはっはっは!」
 と、腕を回しながら、彼の笑い声が高らかに響いていた。

 楽しんでいる、狂っている。
 明らかに、そうと分かる笑い声だった。

ポチの犬小屋(戦闘後)

 自身の家を荒らされた、ハルモニー家の番犬ポチが牙を剥く。

 長い犬生の中で、誰にも向けたことはなかった。
 その牙が誰かを傷つける、その意味を彼は知っていた。

 人を傷つけた場合、その行く先は一つである。
 だから彼はこれまで、ひたすらに耐え、我慢してきた。
 飯が少なくても噛まない。足が綺麗でも舐めない。前足でホールドしない。腰を振らない。

 だが、もう一つ彼は知っていた。
 それでもなお、闘うべき時がオス犬にはあると。それが、今なのだと。

 収集癖というものは、同じ趣向を持つものにしかおよそ理解されない。
 その楽しみも、奪われる怒りも、失った悲しみも。

 分からないものはそれをゴミだという。だが、違うのだ。これは宝物なのだ。
 だから守らなければならない。

 狂人たちの手から。自らが、狂犬となってでも。

ドンパチ銀行(戦闘後)

ドンパチ銀行

 銀行の中では札が舞っていた。
 
 だが誰も、そのお札を拾おうとはしない。
 理由は明白。それよりも価値の高いものが、金庫の中にあるからである。

 ぐにゃり、と金庫の扉がねじ曲がる。
 
 どれだけ複雑なロックをかけようと、分厚い壁を作ろうと。
 より大きな力で殴れば壊れないものはない。
 
 この世の中の厄介事は、基本的に力ずくで全て解決できる。
 あとはそれを、その後の残念な有様を受け入れられるかどうかだけのことである。

 頭取であるキャッシュマンは金庫を守る立場にあった。
 だから、あらゆる手で守っていた。
 
 現金をばらまいたのも、彼が絞り出した一つの案である。
 それを巡って共倒れでもしてくれればよかったが、狙い通りにはいかなかった。

 数人の行員が足元の札をさっと足裏に隠す、反応はその程度だった。

 この事態を予想して講じた防衛策は、そのことごとくが力づくで突破された。
 警備員も、防犯ベルも、カラーボールも、少年探偵も危険な刑事もICPOも。
 
 その全てが無に帰して、最後に金庫が壊された。
 あの金庫にどれだけかかったと思っているのか。
 たとえ1トンもの金塊がこの手にあったとしても、それ以上の被害である。

 願わくば。せめて、これだけはと願うことは。
 高い高い金庫、その扉以外の部分はどうか壊さないでくれ、と。
 
 中身よりも高い外身について、そんなことを祈るばかりである。

小学校の校舎裏(戦闘後)

 学内で、隠れてコソコソと何かをするのはいつも校舎裏である。

 生徒も、もちろん教師も。
 校舎裏でひっそりと、悪事が行われているのだ。

 胸のあたりまで伸ばしたサラサラヘアーの金髪を耳にかけ、中年の男が立っていた。
 くたびれたスーツ、潰れた革靴。
 3年生のクラス担任、ゴールドエイト先生、その人である。

 いつも持っている鞭を今日もその手に。
 校舎裏に立っていた。

 狂人たちとゴールドエイト先生。両者の思惑は全く噛み合っていなかった。

 狂人たちは黄金を探しに。
 ゴールドエイト先生は今は使われていない古い焼却炉を使いに。

 それぞれの目的は別に、ツラを突き合わしていた。

 先に手を出したのはゴールドエイト先生だった。
 なんなんですか! と叫びながらムチを振り回す。
 その様は、狂人たちよりもよっぽど狂気じみていた。

 より強大な狂気を前に、狂人たちもさらなる狂気に染まっていく。
 狂気は感染する。その坩堝において、狂気の王が熟成されようとしていた。

共通(戦闘後)

 その時、サイレンが鳴った。
 危険を示すような、緊急めいた音色ではない。

 それはどこか寂しささえ漂う、透き通るような高い音色。
 この『宝探しゲーム』の終わりを示すサイレンだった。

黄金色のエルドラドシティ

 黄金色のお祭り、ゴールデンウィークが終わり。
 街に施された金色のメッキが剥がされていく。

 狂人たちはすでに、その多くは街を離れていた。
 もとより彼らの目的は黄金にはない。
 次のエサを求めて、どこかへとまた流れていったのだ。

 市庁舎前にて、表彰式が行われていた。

 最初に、このエルドラドシティの市長からのあいさつ。
 髪も服も乱れたままの市長が壇上に上がり、かなり興奮した様子で言葉を並べていた。

 街の外から来た人たちへの感謝と労い。
 街の人たちの協力に対する感謝。
 それらが熱く、身振り手振りを交えながら語られる。

 その目の奥には未だ、狂気の炎が宿っているようにも見えた。

 表彰式では、表彰されるものが壇上に上がる。
 ここではつまり、『宝』を見つけたものである。

 緊張した面持ちで、右手と右足、左手と左足を同時に出しながら。
 拍手喝采、ひやかしも含め様々な種類の賞賛を浴びて登壇する。

 ラングニック小学校の生徒、エイブラハム・ローデ君。10歳だった。

 彼は『いきものがかり』で、小学校で飼っているニワトリの異変に唯一気づいていた。
 全部で5匹いるのだが、そのうちの一匹がダチョウにすり替えられていたのだ。

 彼はすぐさまそれを教師に見せ、教師は首をひねりながら何度も気のせいじゃないかと彼を説得し、ついには少年が癇癪を起こし始めたところで。
 そこに、『宝探しゲーム』実行委員がやって来て告げたのだ。

 おめでとうございます、と。

 先に状況に気づいた教師が少年からダチョウをぶんどって、やったーと大声を上げる。
 それを実行委員が冷静にぶん殴り、本部へと連絡。
 ゲーム終了を告げる、サイレンが鳴らされた。

 そして少年は表彰式へ。教師はブタ箱へ。
 それぞれに運命の行き先を大きく変え、その道を進み始めた。

イベントマップ『黄金色のエルドラドシティ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

遙かなる黄金狂時代

 そのダチョウは、金の卵を産むダチョウだった。
 平均寿命まで生きれば、生涯でおよそ1トンほどの卵を産むという。

 しかもその寿命は千年と、人の限界と比べれば永遠にも等しい。
 永遠に近しい時間、金の卵を生み続けるのだ。

 噂の真偽で言えば、半々といったところだろうか。
 『1トンの金塊』というのは嘘だが、『1トンの金塊』を産むダチョウではあるのだ。
 宝くじの分割払いと考えれば、許容範囲だろう。

 大会の実行委員も、『ウソじゃないし』という顔をしているので。
 文句は受け付けない、というところなのだろう。

 このダチョウは千年という寿命で『1トンの金塊』を産む。
 つまり、1年で1キロである。

 毎年1キロもの金塊が手に入るとなれば、遊んで暮らせるほどではないが、ただ暮らしていく分には充分すぎる価値があった。

 ただし、ちなみにだが、通常のダチョウと同じ大きさの卵を産む場合。
 その金の卵はおよそ、30キロほどになる。
 1年で1キロと言う計算ではあるが、その支払は30年に一度、30キロ分の金の卵になるのだ。

 金価格が大暴落でもしなければ、その価値は変わらない。
 だが、そのダチョウは30年に一度しか、金の卵を産むことはないのである。

 この事実に、少年と少年の家族が気付くのはいつになるのか。
 少なくとも、壇上でテンションが上りまくっている彼らはまだ気づいてないのだろう。

 下手をすれば、それは30年後ということになってしまうが。
 そして30年後、本当に金の卵を産めばまだいいが、もしそうでなかった場合、である。

 彼らはいったいどうなってしまうのか。
 思い出話で笑いながら、巨大目玉焼きを食べることができるのか。

 この黄金の魔力に少年が。
 あるいはむしろ少年の家族が、狂ってしまわないことを祈るばかりである。

ミッション『遙かなる黄金狂時代』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『金色お菓子』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『ダチョウの金の卵殻』を手に入れた
  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
遙かなる黄金狂時代
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました


雨に歌うカエルの祈り

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:雨に歌うカエルの祈り』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は6/21(水)~7/8(土)までです
雨に歌うカエルの祈り

 雨が降る。
 そこには情緒がある。風情がある。

 だがそれは、単純な物量によって簡単に覆ってしまうものでもあった。
 雨の量。それがあまりに多ければ、情緒も風情もなくなり。

 最後にはただ、大量の水と陰鬱な空気だけが遺るのだ。

 そんな空気を押し潰すような悲鳴が、その村では響き渡っていた。
 少女のような甲高い悲鳴、ではない。
 寝ぼけたおっさんの放つうがいのような、低いガラガラとした鳴き声である。

 雨季に入り、嫌がらせのように一日中降り続く雨の村ハクレン。
 その雨音に負けず劣らずの音量で、カエルたちが村のあちこちで大合唱を始めていた。

 雨がカエルを呼んだのか、カエルが雨を呼んだのか。
 互いに示し合わせたのかもしれないが、とにかく、村には雨が降りカエルが鳴いていた。

 そしてそれらは尋常な量ではなかった。
 村を水没させんといった勢いで降る雨、癇癪を起こしたように騒ぎ立てるカエルたち。

 そのどちらもが、小さな村の許容量を遥かに越えていた。

 ただ黙って雨が通り過ぎるのを待つ。その選択肢はハクレンにはなかった。
 なにか手を打たなければ、村はじきに雨水に沈むことになる。
 近くを流れる竜哭川の堰は、いつ切れてもおかしくない状況だった。

 だが、手を打つと言っても、雨そのものをどうにかできるわけではない。
 降ったあとの雨水、その治水が打つことができる数少ない手の一つだった。

 とは言え、すでに決壊目前となった川に対してできることはさらに少ない。
 長期にわたる計画的なものではなく、対処療法である。

 この村が選択したのは、土嚢を積んで一時的な堤防を作ることだった。

 そこに立ちふさがったのが、村が抱えていたもう一つの問題。
 爆音で輪唱する、とんでもない量のカエルたちである。

 土嚢を積みに出た、村の若い男たち。
 そこにいたのは、地面の土が見えなくなるほどのすし詰め状態のカエルたちだった。

 浴びせられる輪唱に重圧を感じ、後ずさりを余儀なくされる。
 これ以上は進ませない、そんな決意と覚悟が彼らの表情からは見て取れた。

 土嚢を置きたい村人。置かせたくないカエル。
 その対立に話し合いの余地はない。
 これは村の存亡をかけた戦いだった。

 村を守るために。
 カエルたちの排除、それに協力して欲しい。

『マップ:危険水位の竜哭川流域』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
危険水位の竜哭川流域

 激しい雨音と、喧しいカエルたちの鳴き声。
 それら二つの騒音が、互いを邪魔することなく、美しいハーモニーを奏でることもなく。

 ただただ騒音をでかくして、辺り一面に響き渡っていた。

 ハクレン村。
 水田の広がる、のどかな村である。

 水の張られた田んぼには等間隔に新緑の稲が並び、ピンとその背を伸ばしていた。
 繰り返し頭を叩く雨にも負けず、秋の収穫に向けて力強く育っている。

 そんな彼らを尻目に、竜哭川は今もその怒涛の勢いを増していた。

 降り止まない雨に、増水を続ける川。
 水位はすでに危険域を突破し、堤防とも言えない土を盛っただけの高台の決壊も時間の問題だった。

 それらに土嚢を積んで、少しでも堤防らしく高さを確保する。
 おそらくはそれで、川の氾濫を防ぐことは難しいだろう。

 だが、決壊時に鉄砲水がそのまま村を襲うのを防ぐことはできるかもしれなかった。

 水は低きに流れる。

 高さをコントロールすることで、溢れ出した水の行方を低い方へと誘導できる。
 自分本位の考え方かも知れないが、ここではないどこかに流れてしまえば、少なくともここは救われるのだ。

 原因を取り除くことはできない。被害をなくすことはできない。
 ならば、被害を他所へ移すしかない。ここではないどこかへ、と。

 川の、こちら側ではなく、向こう側へ。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
手つなぎカエルの壁

 その光景は壮観ではあったが、異様でもあった。
 文字通り足の踏み場もないほど、大小種類様々なカエルたちが一堂に会していた。

 ハクレン村の西側を、竜哭川は流れている。
 水田の水はこの川から引き入れたものであり、また普段は漁を行ったりなど、村では幾つかの恩恵を受けていた。

 しかし、今はその関係性は変わってしまっている。
 増水し、暴れ狂う竜哭川。それに立ち向かう村人。
 憎み合う敵同士、というわけではないのだろうが。友好的とは言いがたかった。

 そしてその間に、別の存在、カエルたちがさらに立ち塞がっていた。
 彼らとて、別に竜哭川を背にしているからとそちら側についたというわけではない。

 ただ、村人たちに立ち向かい、その敵となっているのは確かなようだった。

「ぬまにけぇれ!」
 土嚢を積みにやって来た、村の若者達。
 その先頭に立つ男が、カエルたちに向かって吠える。

 彼の後ろについた他の若者たちもその声に合わせ、けぇれけぇれと叫んでいた。

 彼らは村の青年団である。
 こういったトラブルや祭りの準備など、とにかく力仕事や荒事となると彼らの出番だった。

 メンバーの半分ほどは土嚢を積み、残りは抱え込んだまま突っ立っている。
 竜哭川の側はすでに、土嚢の置くスペースがカエルによって埋まってしまっており。

 半分はそのまま構わず置いたが、半分はそれができずに抱えたままだった。

 すでに黒い濁流となった竜哭川。
 その激しい流れを背に、カエルたちは群れをなして鳴いている。

 それに向かって、吠える青年団の男たち。
 雨具もなしに、カエル同様彼らもビショビショだった。

  • フェイズ3
『かえるぬま』からの刺客

 カエルに向かって叫ぶ青年団。
 その先頭に立ち、最初の叫び声を上げた男がさらに一歩前に出る。

 その足の下に敷かれたカエルが、ぐえ、と悲鳴を上げていた。
 それぐらい、足の踏み場などどこにもなかった。

 青年団のリーダーである、ガンツ・ヨアキム。
 消防団の副団長も兼務する、村の若手衆のまさにリーダーだった。

「おめぇらの家はあん沼だろが! こっだらとこに出てくんじゃねえ!」
 訛りのきつい、聞き取りづらい早口でまくし立てる。
 まあ、カエルに向かってなので、訛っていようが早口だろうが関係ないが。

 あの沼、と彼が言うのは、川を挟んで向こう側に見える沼のことである。

 彼らの村では、それは『かえるぬま』と呼ばれている。
 その名の示すとおり、カエルが多数生息している沼だった。

 そう呼ぶ彼らとて、まさかこれだけの数がいるとは思っていなかっただろう。

 彼らの声を理解できるカエルがここにいればよかったが。
 カエルたちに聞く耳はなかった。精神的にも、物理的にも。

 だから、彼らは帰らない。
 それどころか、新たなカエルたちが『かえるぬま』から竜哭川を越えて。
 またぞろ、姿を見せ始めていた。

「おうおうおう! まぁたぞろぞろ出てきゃがったなぁ!」
 カエルの増援に、男が声を裏返らせながら吠える。
 だがそれは、ただ数が増えただけとは違っていた。

 それは、彼ら青年団と同じ。
 カエルたちの中で、荒事を担うものなのだろう。

 歴戦のカエル。
 そんな空気感が、新たに現れたカエルたちにはなんとなく出ているような気がした。

 それらが増水した竜哭川を難なく越えて、川の中からぴょんぴょんと飛び出してくる。
 そして仲間のカエルを跳ぶたびに踏み潰しながら、青年団と対峙する最前線へと近づいてきた。

 ぎゃっ。ぎゃっ。ぎゃっ。
 踏まれたカエルが汚い音階を奏でる。

 それを入場曲として、青年団の目の前へと。
 バトルトードたちが、戦場に現れた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
かえるに遭遇した!

  • フェイズ4
危険水位の竜哭川流域

 (PC名)たちを加えた青年団とカエルたちの、生存権を掛けた闘争。
 その決着がつこうとしていた。

 土嚢を積みたい青年団。
 それは村を守るための壁である。

 決壊待ったなしの竜哭川、そこから暴れ出る洪水から村を救う。
 そのためにはそれが、どうしても必要なことだった。

 カエルたち、彼らの家は『かえるぬま』にある。
 そしてその沼は、竜哭川の向こう側にあった。

 竜哭川が決壊した場合、その水は低地にあるハクレン村へと流れ込むことになる。
 その間に壁を築かれさえしなければ、という条件付きだが。

 もしもそれを許した場合、水はより低きへと。
 川を挟んだ反対側、『かえるぬま』が川底に沈むことになるだろう。

 だがそれは沼なのだ。
 そこに水が増えたところで、どうということはない。

 沼の許容量を超えれば、さらにそこから水が流れ出るだけのことである。
 いずれ雨がやみ、水が引けばそこにはやはり沼が残るだろう。

 何も変わらない、沼が。

 何も変わらない。そんなわけはないのだ。
 沼の環境は大きく変わる。沼は沼でも、『かえるぬま』ではなくなるかもしれない。

 村の水没と『かえるぬま』の水没は、同じ意味を持つ。
 帰る家を失う。その一点については何も変わらなかった。

 だから彼らは大挙して、ここへとやって来ていた。

 『かえるぬま』で、雨に歌っていたカエルたちが。
 川の反対側で壁を作り出した男たちを見つけて、その結果どうなるかを悟ったのだ。

 そして家を守るため、家を出た。

 その戦いの決着が、今つこうとしていた。

イベントマップ『危険水位の竜哭川流域』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

雨に歌うカエルの祈り

 それが川の音なのか、雨の音なのか。
 それさえ分からないほど、雨は激しく降り、川は荒々しく暴れていた。

 その勢いはどちらも衰えるような様子はない。

 雨がやみ、川の水位が下がり。
 それで全てが解決する、そんな結末は訪れそうになかった。

 コップにためた水が溢れ出す、それはそんな生易しいものではなかった。

 限界まで堪え、限界を超えて粘りに粘ったあと、竜哭川はついに決壊した。
 溢れ出した水は猛烈な勢いで、もう一本新たな川が生まれたかのように。

 『かえるぬま』に向かって、流れ出していた。

 土嚢の堤防に数人の見張りを残し、青年団の男たちはすでに村に引っ込んでいた。

 積み上げた土嚢の高さは、さほど高いものではない。その必要もなかった。
 川の向こう側への流れが作られるまで耐えられればそれで充分だったのだ。

 一度流れが決まれば、それは一方的なものとなる。
 溢れ出した水は始めこそ堤防の上部まで来ていたが、それもすぐに引いていった。

 沼から出て来ていたカエルたちごと、水が全ての痕跡を洗い流していく。
 数人の男たちに見守られながら、『かえるぬま』が川の水に沈んでいった。

 その先頭には、やはりあの男の姿があった。
 村の若手衆のリーダーであるガンツ。彼は残り、顛末を見届けていた。

「ありゃ、警告だったんかも知んねぇ」
 ぽつり、と男がこぼす。

「雨がふっぞ、川が暴れっぞ、って。教えてくれたんかもしんねぇ」
 まるで何かの恩返しの昔話のように。
 だがそれも、受けた恩が彼らにあればまだしも、そんな記憶はガンツにもまったくない。

 無理やり美談にしようとしても、やはりそれは無理筋だった。

 土嚢を越えてこちら側に来ていたカエルが数匹、ゲコゲコと鳴きながら跳ねていく。
 その行き先は村にある水田のようだった。

 水田にはすでに、雨季が始まる少し前に『かえるぬま』から移ってきた蛙がいる。
 田に水を入れた段階で移り、あちらで卵を産み、それが孵って育っているのだ。

 そこまでたどり着ければ、とりあえず彼らは生きていけそうだった。

 その小さな声が聞こえるぐらい、いつの間にか辺りは静かになっていた。
 カエルごと、その合唱が消え。そして、その声がまるで雨を呼んでいたかのように。

 鳴き声が聞こえなくなって、雨も上がっていた。

 そこからある程度の時間を掛けて、景色が変化していった。

 彼らが呼んだかもしれない雨は、しかし村を洗い流すことはなく。
 『かえるぬま』をあっさりと飲み込んだ。

 中にあった水の殆どが流され、入れ替わったのか。
 沼の水は澄み、それは沼というよりも湖のような印象に変わっていた。

 カエルの声が止まり、雨の音も止まり。
 川の音がゆっくりと静かになっていく中。

 ノコギリを引くようなセミの鳴き声が、じんわりと響き始めていた。

ミッション『雨に歌うカエルの祈り』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
雨に歌うカエルの祈り
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『カエル』が修得可能になった

熱狂の炎天禍

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:熱狂の炎天禍』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は8/9(水)~8/26(土)までです
熱狂の炎天禍

 『炎天禍』。その災害はそう呼ばれていた。

 真っ赤に燃える太陽。
 照りつける光が、強烈な熱量でもって地上をこんがりと焼き上げる。
 
 だが、それだけが、日差しだけが問題ではない。
 程度の差こそあれ、太陽の光はあらゆる地域、場所に光と熱をもたらす。
 
 『炎天禍』と呼ばれる災害は、地上にこそ災いの種を持っていた。

 光と熱を好み、それを糧とするものたち。
 地上に住む彼らはその恩恵に与るべく、太陽とともに移動しその強烈な日差しの元へと集まっていた。
 
 光と熱を喰らい、溜め込み、そして自らも熱を放つ。
 そんなものが何匹も身を寄せ合い、その太陽の下で異常な温度上昇をもたらしていた。
 
 太陽と、彼らと。それら全てをまとめた現象を、『炎天禍』と呼ぶのだ。

 そしてこの災害が、ある場所にゆっくりと近づいていた。
 空の光と地上の熱と。二つを撒き散らしながら、海岸線をそれは南下してきたのだ。
 
 このまま進路を大きく変えなければ、先に見えるのは真っ黒な人だかり。
 日焼けした人々が大勢集まる、グロンレック・ビーチである。

 ジャカジャカとうるさいだけの音楽が鳴り響き。
 バーベキューと花火の臭いが混じったものが風に乗って流れている。
 
 波打ち際を走るカップル、砂に埋めあうカップル、オイルを塗りあうカップル。
 そのすぐ近くまで『炎天禍』が来ていることなどまるで知らない様子で、彼らは楽しげに夏を満喫していた。

 これだけの人数を速やかに、安全に避難させることは不可能に近い。
 事実を知らせれば、パニックは避けられないだろう。
 
 だましだまし少しずつ。
 だがそれでは、現実的に『炎天禍』の到達にはとても間に合いそうにはなかった。

 しかも、何かの奇跡で間に合ったとしても、である。
 
 炎天禍が通った場所は、過ぎ去った後も簡単には温度が下がらない。
 つまり今後数シーズン、どのくらいになるかも分からないが。
 今だけの話ではなく、その間、このビーチは使いものにならないということだった。

 彼らの夏の思い出を、ひと夏のアバンチュールを。
 
 『炎天禍』の手から、どうかビーチを守ってくれないだろうか。

『マップ:真夏のグロンレックビーチ』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
真夏のグロンレックビーチ

 グロンレック・ビーチの醸し出す空気感はひどく浮ついている。
 もしもその空気に色を塗るとしたら、間違いなく紫かピンクを選ぶだろう。
 
 子供の姿、つまりは家族連れの客は殆どいない。
 若い男女が9割、残りはチャラついてギラついたおっさんだった。

 ビーチに集まっている彼らには呼び名がある。
 
 パーティーピープル。もしくはパーリーピーポー。
 『奇妙なもの』という意味の古語を語源とする、この種の人々を示す言葉である。
 
 彼らは自らをそう呼び、また呼ばれることを好む。
 ひとところに集まる傾向が高く、今回はこのビーチに大量発生していた。

 ビーチを埋め尽くすほどの数が集まった彼らは、今何が起こっているのか。
 また、これから何が起こるかを全く理解していない。
 
 大音量で響く音の中を、その大半は海に入ることもなく楽しんでいる。
 まずいラーメンを食ったり、変な日焼けをしたり、焼けた砂浜で白雪姫ごっこをしたり。
 それぞれに、思い思いの夏を満喫していた。

 だが、それは知らされていないのだから当たり前だった。
 
 知らせることなく、やんわりと少しずつ彼らを避難させていく。
 ビーチの管理責任者はそういう道を選んだのだ。
 
 そのための時間稼ぎを任されたのが、(PC名)だった。

 ビーチから、黒山の人だかりの中から北の空を見やる。
 そこには突き抜けるような青空が広がっていた。
 
 嵐であれば、黒い雲が迫るだろう。
 しかし、空には何ら異常はない。近づいてきているのは、ただの晴天である。

 その直下の地上の様子は、ここからでは分からない。
 そして、それをここで待ち受けるわけにもいかなかった。
 
 避難誘導は間に合わない。
 迎撃はもっと手前、誰もいないところで行わなければならなかった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
迫り来る光の御柱

 空を進む太陽を止めることはできない。
 だが、地上の進軍は止められる。

 『炎天禍』の力の半分を削げば、被害はどれほど軽減されるのか。
 それはその時になってみなければ分からないだろう。
 どのみち、できることをやるしかないのだ。
 
 海岸線を南下してくる『炎天禍』、その地上部隊を止める。
 それができることかどうか、それもまたやってみるしかなかった。

 それはぱっと見てわかるほど、周囲と色が変わっていた。
 
 スポットライトのように、指向性のある光が空から降りてきている。
 巨大な光の円柱が、日中だと言うのにはっきりと形作られ、それがゆっくりと南へと移動していた。
 
 あれが『炎天禍』の影響範囲だとすれば、なんとも分かりやすかった。

 円形に照らし出された範囲、その地上の景色は歪んでいた。
 立ち上る陽炎がゆらゆらと揺れている。
 
 光の円柱の中の空気は全体が相当熱せられているはずだが、地上付近はそれを優に上回る熱さなのだろう。

 今からあそこにいかなければならないのかと想うと。
 
 それだけで、汗が吹き出しそうだった。

  • フェイズ3
名もなきビーチで

 グロンレック・ビーチの北側にある、別のビーチに(PC名)はやって来た。
 特別な名前はなく、人気もない。

 迎撃場所として、都合のいい場所ではあったが。
 
 向こうのビーチとほとんど変わらない環境で、全く人のいない状況は異質だった。
 間に小さな崖を挟んでいることもあって、こちらからは見えないし音も聞こえない。
 
 完全に隔離された別空間である。
 その景色が似ているだけに、余計に奇妙な感覚だった。

 『炎天禍』の存在はひどく分かりやすかった。
 
 光の円柱は遠くからでもはっきりと見える。
 その先端がビーチにかかるようになった今、風に乗って猛烈な熱気が流れてきていた。
 
 そしてついに、光だけでなく熱も視認できるようになっていた。

 光の中で、熱を放つものたち。それらがビーチに姿を見せる。
 
 円柱の移動に合わせているため、その動きは緩慢。というよりもほとんど動かない。
 じっとして、自身の体が光から外れたら一番温度の高い中心付近へ移動する。
 
 それを全体で繰り返しながら、のそのそと群体が移動してきていた。

 『炎天禍』が近づいてくる。こちらも一歩足を進める。
 それだけで、体感温度が1度2度3度と簡単に上がっていくようだった。
 
 群れの中の幾つかが、こちらの存在に気づいた。
 ただし、それに対して大きな反応はない。
 
 これまで何度も繰り返してきた。ただ、一方的に、蹂躙する。
 そこに対して、大きな気持ちの動きも体の動きもなかった。

 まばゆい光と灼熱の炎。
 それでもって溶かし尽くし焼き尽くす。
 
 移動の障害になるものは、そうやって排除するだけのことだった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告

CAUTION!

 光の円柱、その中に足を踏み入れる。
 
 目を開けば眼球が乾き、息を吸えば喉と肺を焼かれ。
 黙ってただ立っているだけでも、肌がチリチリと焦げていくのが分かった。

 降り注ぐ光と、吹き上げる熱波。
 敵はその両方である。
 
 それに耐えながら、戦う必要があった。

毎ターン開始時、こちらのパーティ全員が炎+光属性のダメージを受けます

炎天禍に遭遇した!

  • フェイズ4
真夏のグロンレックビーチ

 降り注ぐ、光の粒子が創る白い円柱。
 遠くから見れば、例えばオーロラやブロッケン現象などのように。
 
 それはとても、幻想的な自然現象だったろう。

 だが、その光の中と外とでは、まるで印象が変わっていた。
 外身がいくら美しかろうが、そう見えようが、中身も相応に美しいとは限らない。
 
 光は熱を伴い、熱は破壊をもたらす。
 そこには意志のようなものは何もないが。
 悪意がないからと言って、何かが正当化されるわけではけしてない。

 その世界は、暑い、という言葉だけで表現するには生ぬるかった。
 吹き出す汗が、皮膚の上で粒になる前にすぐにそのまま蒸発してしまう。
 
 それで体温が下がればいいが、そんなことでは全く追いつかない。
 そういう地獄だった。

 光芒が頭上を、名も無きビーチを通過していく。
 その下に集っていた、熱を放つものたちの姿はその殆どが海中にあった。
 
 迫り来る敵を倒し、次々と海に放り込むことで確実に温度が下がっていく。
 これだけモチベーション高く戦えることは、そうあることではなかった。
 
 海が熱を奪い、その水温も少しは上がったろうが。
 それで何か影響が出るほど、海の懐は浅くはなかった。

 自身のいるその場所が、光の円柱の範囲から出た。
 その瞬間は簡単に分かった。
 
 足元に目を落とせば、光の境界線がはっきりと見えるから、それでも分かるが。
 そんなものを見るまでもない。
 光芒の範囲に入った時と同様、出たときもまたその温度変化が顕著だった。

 冷房のよくきいた部屋にいきなり入ったような。
 温度差があるだけで、どうせそこでもすぐに暑さを感じるようにはなるのだが。
 
 ようやく終わった、という気の軽さも相まって。
 (PC名)にはとても、その場所が爽やかに感じていた。

イベントマップ『真夏のグロンレックビーチ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

熱狂の炎天禍

 グロンレック・ビーチの白い砂浜が、太陽の光を反射する。
 炎天禍、その半分にあたる地上部隊は全滅した。
 猛烈な光と熱に依存してきた彼らが、一度その範囲から離れたあとでどうなるのか。
 
 異常環境に特化しすぎたその代償を、これから受けることになるのだ。
 今はまだ、気持ちよく海水浴を楽しんでいるだろうが。

 空の炎天禍、光芒もすでにこのビーチを通り過ぎていた。
 ひたすらに南下していく、あれをどうにかすることは難しい。
 
 あれはあれで一つの自然災害として、受け入れるしかないのだろう。
 このグロンレック・ビーチがそうしたように、である。

 白い砂浜がキラキラと輝いている。
 それが普通に見えるほど、ビーチからは人がいなくなっていた。
 
 音楽もなくなって静かになったビーチ。
 あれだけいた人々、パーリーピーポーたちは忽然と姿を消していた。

 彼らの多くはそもそも海に何の興味もなく、目的もないのだ。
 ここにい続けなければならない理由もなく、行き場がないわけでもない。
 
 強い日差しがやって来た、その瞬間にあっさりと彼らは消えたのだった。
 今はまた、別の何処かに集まっているのだろう。
 ひとところに集まること、それが彼らの代表的な生態の一つだった。

 だが、このビーチから全てがなくなったわけではない。
 無人の海の家以外にも、残ったものはあるのだ。
 
 ビーチに置かれた木製のベンチ。そしてそこに並んで座る男たちである。
 彼らは暑さに強い、ギラついてチャラついた、サウナ好きのおっさんたちだった。

「ふいいいいいいいいいい」
「ういいいいいいいいいい」
「うああああああああああ」
 気持ちよさそうな顔で、気持ちの悪い声をそれぞれに出している。
 
 彼らは海パン姿で椅子に並んで座り、頭の上にはタオルを乗せていた。
 全身汗だくで、顔も赤い。それは体温だけでなく、アルコールの影響もありそうだった。

 彼らの足元に置いたバケツには海水がくんであり、柄杓まで用意されている。
 それでバケツの海水を掬い、自分たちが座る椅子の真下にその中身をぶちまけた。
 
 その瞬間、じゅぅぅぅぅ、となにかが焼けるような音がして。
 椅子の下から、大量の蒸気が舞い上がって男たちを包み込んでいた。

 下を覗くとそこには赤く燃える石、に似た、子亀がちょこんと座っていた。
 
 真っ赤なのは甲羅で、それは一瞬で海水を蒸発させるほどの温度を持っている。
 その子亀は空の炎天禍の通過時に取り残され、焼け石代わりにされていた。
 
 白い蒸気に包まれて、汗を吹き出しながら声を上げる男たち。
 ビーチは完全に、彼らのプライベートサウナと化していた。

 炎天禍が通り、ビーチにはわずかに熱を残していった。
 そこにはあの子亀のように、その僅かな残滓を求め残ったものいるようだった。
 
 ビーチが彼らによって支配される、ということはないのだろうが。
 利用され、別の形へと生まれ変わる。
 
 なんとなく、そんな想像が頭をよぎった。

ミッション『熱狂の炎天禍』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『炎天ラーメン』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『サウナ石亀』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
熱狂の炎天禍
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)は水着の生成が可能になりました
ただし、アビリティ『防具生成』を取得している必要があります

月に向かって吼えろ

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
月に向かって吼えろ

 空に浮かぶ月。
 その夜、それは一年で最も大きくなり、最も強く輝く。
 
 まるで昼間であると錯覚するほどの明るさで、夜の主役が姿を見せるのだ。

 そして、月の光には魔力がある。
 その魔力もまた、月とともに強大になるのである。
 
 大いなる力が光とともに地上に降り注ぎ、あらゆるものに影響を及ぼす。
 与えられた力を糧とするもの、溺れるもの、狂うもの、壊れるもの。
 
 そういったものたちが跳梁跋扈する、それが『十五夜』と呼ばれる夜だった。

 それが、そのいずれに該当するのか。
 全て、かもしれない。力を糧とし、溺れ、狂い、壊れていた。
 
 それはかつて、一匹のかわいいウサギだった。
 スプレーを吹き付けたようなピンク色の体毛、毛玉のような体でぴょんぴょんとそこら中を跳ね回る。
 そのウサギは動物園の人気者だった。

 だが、『十五夜』が近づき、全ては変わっていった。
 夜ごと月が大きくなっていく。光が強くなっていく。魔力が濃くなっていく。
 
 ウサギは一晩中そんな月を見ていたと、飼育員さんは後に語った。
 その目にあるのは憧憬か望郷か。思いは計り知れないが、結果は思い知ることになる。
 
 毎晩、檻の中でそれは力を蓄え続け、そして爆発したのだ。

 朝、餌の人参の入ったバケツを持って檻の前に来た飼育員さんが見たものは。
 横に無理やり押し広げられた鉄格子と、空の檻だった。
 
 同じ檻にいた他のウサギを引き連れて、ピンクのウサギは姿を消した。
 後で分かったことだが、近くにあった別の檻も同じようにこじ開けられていた。
 
 一緒に逃げたのか、それとも襲われたのか。
 いずれにせよ、多くの動物達がその夜、この動物園からいなくなっていた。

 消えたピンクのウサギ。数日の後、ある丘の上で目撃された。
 夜、ピンク色の獣が月に向かって吠えていた、と。目撃者はそう語った。
 
 ピンク色の獣が他にいなければ。
 それこそが、逃げたウサギに違いないだろう。

 人気者を失った動物園からは客足が遠のき、園長は首の後ろが薄ら寒いと言う。
 なんとか連れ戻すことはできないだろうか。
 
 『十五夜』は近い。それまで園長の首が持つかどうか。
 限界は近いと、彼の蒼白になった表情は語っていた。

『マップ:輝く月の見える丘』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
輝く月の見える丘

 『十五夜』。
 
 空に輝くそれは、本当に月なのだろうか。
 そんなバカな疑念を持ってしまうほど、巨大な球体が夜を煌々と照らしていた。

 だがそれは間違いなく月であり、それ自体に何か変化が起こったわけでもない。
 
 ただ彼我の距離が近づいた、それだけのことである。
 それだけのことではあるが、その影響はおよそ計り知れなかった。
 
 輝く月は夜を昼へと変え、すべての闇を暴き出す。

 もしも太陽が距離を縮めれば、あっという間に地上は干上がるだろう。
 だが、月の光は熱を伴わない。あるのは純粋な力、月の魔力のみである。
 
 魔力干渉はあらゆるものに平等に、貴賤なく無慈悲に行使される。
 ヴァルとておそらく無関係ではない。
 自覚はないが、何らかの影響を受けているはずだった。

 どこかが狂っている。もしくは壊れている。
 どこが、どれだけ壊れているのか。それが問題ではあるが。
 
 だが、もしもそれが把握できていれば、壊れてはいないだろう。
 壊れているから、狂っているから、分からないのだ。自身が壊れていることに。

 輝く満月を頭上に掲げながら、光りに包まれる丘の頂点で。
 
 ピンク色の獣が、巨大な臼の向こう側に仁王立ちしていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
ピンク色のケモノ

 動物園から逃げ出したピンク色のかわいいウサギ。
 話としては、そう聞いていた。
 
 だがそこにいるのは、想像していたものとは全くかけ離れている。
 丘の頂上から月光を背にピンクの体毛を輝かせながら、ウサギとは違う種類の生物がこちらを見下ろしていた。

 まずそれは、仁王立ちしていた。
 立ち上がった体高は高く、頭の位置は2メートル近い。
 
 異様に筋肉質な太ももから伸びた、細長い足先。
 その二本の後ろ足でつま先立ちをするような格好で、それは軽やかに立っていた。

 熊などがするような立ち上がり方ではなく、背筋がピンと伸びている。
 それは背骨から足が真っすぐ伸びているということであり。
 骨格がもはや、ウサギとは違うものだった。
 
 そしてその立ち姿には、腹筋と背筋のバランスの良さが見て取れた。
 その獣の骨格、そして筋肉の付き方が、ヒトのそれに酷似していた。

 違いは全身を覆うピンク色の体毛。
 それと体の上にちょこんと乗せた小さな頭部である。
 
 鋭く長い前歯。宝石のような黒い眼。長く伸びた耳。
 それだけを見れば疑いの余地はない。ピンクのウサギ、それそのものだった。

  • フェイズ3
月見団子のつくりかた

 ヒトのように直立して二足で立ち、異様に発達した筋肉を全身に持つ。
 そしてそれは、丘の頂上に置かれた大きな臼の前に立っていた。

 臼があれば、当然杵が必要となる。
 上下両端が太くなっている棒状の杵を、そのピンクのウサギは手に持っていた。
 
 その姿だけを見れば完全に武器だが、臼とセットであれば杵に見えないこともない。
 用途通り、ウサギは臼の上に立てた杵の真ん中あたりを両手で持って、臼に向かって打ち下ろすように叩きつけていた。

 ぐしゃり。
 と、臼に入った何かが潰れる。
 
 本来そこにあるべきなのは餅か米だが、丘に響き渡った音はどこか違っていた。
 もう少し硬い、そして水分の多い何かを潰したような音だった。

 持ち上げて、打ち下ろす。
 持ち上げて、打ち下ろす。
 持ち上げて、打ち下ろす。

 何度か繰り返して、臼の中には餅のような塊が出来上がっていた。
 
 距離もあって色味はよく分からなかったが、柔らかそうな塊である。
 ピンクの獣はそれを臼から拾い上げ、口元に運んだ。
 
 口を開いて、中へと放り込む。立派な前歯は無視して、そのまま飲み込んでいた。

 叩き潰した餅が喉を落ちた瞬間、兎の眼の色が変わる。
 まるで血の涙が溢れ出たかのように、黒かった眼球が真っ赤に染まっていた。
 
 その目が、こちらを射抜く。
 真っ赤な瞳が、月下に濡れて妖しい輝きを放っていた。

 臼に残っていた塊を、いくつかちぎって適当に周囲に投げる。
 それが地面に落ちるやいなや、隠れていた他の獣たちが一斉に丘の陰や草むらなどから姿を表し、その塊に飛びついていた。
 
 それは他のウサギを始めとした、動物園から姿を消した動物たちである。
 我先にと餅のようなものに群がり、殺気立った様子でかじりついていた。

 その塊を口にして。
 風船に空気を吹き込んだように、動物たちの体が膨れがあがる。
 
 それは全身を覆う筋肉の隆起、そして中の骨格もまたバキバキと変化していた。
 彼らの瞳もまた、赤に輝く。

 だが彼らのそれは、実際に溢れ出てくる血涙で染まったものだった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
クルイウサギに遭遇した!

  • フェイズ4
輝く月の見える丘

 それは初めから終りが見えた戦いだった。
 力と狂気は月からもたらされる。そして、その月は永遠ではない。
 
 永遠ではないからこそ、多くのものから愛されるのだろう。

 一夜だけ、限られた瞬間だからこそ、それは美しい。
 だから、その美しさに酔うのだ。
 
 だが、酔いは醒める。いつまでも酔い続けることはできない。
 酔ったふりはできても、それはやはりふりでしかなかった。

 頭上にあった月が傾き、落ちていく。
 月が沈めば日が昇る。夜が終わり、闇を糧としていたものたちは死に絶えるのだ。
 そして、光を糧とするものたちが生まれ、蠢き始める。
 
 今はその境目の、生も死も全てが曖昧な時間だった。
 西の地平線に月が、そして東の地平線に太陽が、同時に地上を照らしている。
 
 それは言わば汽水域のように、光と闇が、それぞれに属するものが混在していた。

 ピンクの体毛に覆われた、筋肉質のウサギ。
 パンパンに膨れ上がった大胸筋を震わせながら、両手で持った杵を臼に落とす。
 
 それはまだ餅つきを続けていた。
 だが、それを口にするモノはもういない。もはやそのウサギの側には誰もいなかった。

 光と闇がともに存在する時間と空間、だがそのどちらにも居場所はなかった。
 境界、その線上にあるか細く脆い世界だけが、そのウサギの居場所だった。
 
 そしてそれも間もなく終わる。
 月が沈みきり、太陽が昇りきる、その瞬間に。小さな世界は終わるのだ。
 
 陽の光に全てが飲み込まれて。

 それまでの、僅かな時間。残されたこの時間で、それは餅をついていた。
 
 もはや食べるものもいない、自身の体もすでにそれを受け入れる力はない。
 それでもそれが最も大事な、最後の仕事であると。

 それを月に捧げるために、月から迎える誰かのために。
 ウサギは月に向かって泣き声で吼えながら、餅をつき続けていた。

イベントマップ『輝く月の見える丘』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

月に向かって吼えろ

 ピンクのウサギが杵でついていたもの。
 あれは月の魔力を受けて変異したものを、叩き潰したものである。

 それは月の魔力、その結晶そのものとも言える。
 あるいは精錬された鉄のように、叩いてより純度を高めたものだった。
 
 それを食っていた。あるいは他の動物達にも食わせていた。
 魔力変異を起こさせるため、そしてその変異をより強化するために。

 それで、その後どうするつもりだったのか。
 何か目的があったのか、それはアレに聞いてみなければ分からないだろうが。
 
 力とともに狂気を失った今、おそらくその答えは得られないだろう。
 あのピンクのウサギはもう、動物園の人気者に戻ってしまっていた。

 ユーカセンド動物園。
 その檻にピンク色の小さなウサギがいた。
 
 白や茶色のウサギがいる中で、その派手な毛色を主張することなく。
 隅っこの方で、一人おとなしく葉っぱを食べていた。

「いやあ。なんとか、なんとか首のほうがつながりまして」
 と。帰ってきたウサギを檻の外から満面の笑顔で見ながら。
 満月のように丸い顔のこの動物園の園長が、嬉しそうに呟いていた。
 
 鉄格子を横に無理やりひん曲げた檻は実はそのままだった。
 間隔が大きく広がっている位置が高く、普通のウサギは飛び越えられない。
 
 そんな理由から、客が園内で買えるウサギの餌を投げ入れるために使われていた。

「以前のように、いや、以前を上回る勢いで客が増えておりまして」
「なんでも、動物が逃げるというのがいい宣伝になったらしくって」
 不思議そうな顔で首をひねる園長。
 今はなんでも宣伝になるんですね、と感心したように頷いていた。

 ウサギの檻の前に数多く集まった客、その中から檻に何かが投げ込まれる。
 それは檻の横においてある自販機で買うことができる、ウサギ用のエサである。
 
 月見よもぎ団子、という名目でやや高めの値段設定で売られている。
 牧草をすりつぶして丸めて作った、緑色の団子だった。

 地面にぽとりと落ちた瞬間に、月見よもぎ団子は潰れて割れる。
 すぐに反応はなく、しばらくしてから数匹のウサギが寄ってきて齧っていた。
 
 その中にピンクのウサギの姿はない。
 まるで興味なさげに、端で動かず葉っぱをゆっくりと食べながら檻の外を眺めていた。

 その姿には、あの丘での面影はまるでない。
 外見はもちろんだが、雰囲気や内面もまるで別物になっているように見えた。
 
 あのマーブル模様の世界で、一度死んで、生まれたのだ。
 光と闇が混ざりあった、あの中で。

 ただ、時折空を見上げ、遠くを見やるその目が。
 なんとなく、丘のウサギと似ているような気がした。

ミッション『月に向かって吼えろ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『月の肉餅』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
月に向かって吼えろ
イベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『ウサギ』が修得可能になった

この子の753のお祝いに

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:この子の753のお祝いに』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は11/15(水)~12/2(土)までです

この子の753のお祝いに

 人の世界では、様々な事を祝う。
 誕生を祝う。豊作を祝う。長寿を祝う。結婚を祝う。勝利を祝う。

 そして成長を祝う。
 事あるごとに、これでもかと言うほど、節目節目で成長を祝うのだ。
 
 生き続けることはそれだけで奇跡的なことなのだ、と言わんばかりに。

 この祝い事は、成長過程の特に最初と最後に集中して多く行われる。
 生まれた直後と死ぬ直前。要は世界からの歓迎会と送別会である。
 
 そして、その前半を一気に祝うものが『七五三』と呼ばれる行事だった。
 三歳、五歳、七歳、とその成長を祝い、感謝するのである。

 例年、ツルカメ神社では『七五三』のお祝いを執り行っている。
 
 派手な衣装で子供を着飾り、長い棒状のアメを食べさせるのが主な儀式内容となる。
 大昔は色々と形式張ったものがあったらしいが、今ではこの程度である。
 神社にお願いすれば祝詞も上げられるのだが、言われることは殆どないらしかった。

 しかし、この神社で最も有名で、最も人気がある行事は別にある。
 『七五三』のお祝いと共に、境内で大々的に行われる大会。
 
 753争奪、大子供相撲大会である。

 相撲というのは、丸い土俵の上で行わる格闘技のことである。
 
 本来は1体1で戦うものだが、時間や手間など様々な理由で簡略化され。
 今では、全員同時参加のバトルロイヤル形式となっている。
 
 公平を期すため、三歳、五歳、七歳とでそれぞれ別のステージが用意される。
 つまり優勝者は3人。その3人全員に、お米が優勝賞品として手渡されるのだ。

 このお米の量は毎年変動する。
 その年その年の収穫量に比例するので、今年の出来についてもここで知れるのだ。
 
 変動するとは言っても、その量は最低でも357kg。最高で753kgが3人に配られる。
 そして大豊作だった今年の優勝賞品は天井の米753kg。
 
 米俵にして実に12個*3セットという、大迫力の商品が用意されていた。

 だが、この神聖な『七五三』に、米を狙う不逞の輩が存在していた。
 
 大子供相撲大会の参加者は人に限定されていない。
 様々な種族のものがエントリーしている。
 つまり、同じ年齢とはいえ、その成長度合いは様々であるということである。
 
 それを利用して、年齢を誤魔化し相撲大会に潜り込んでいるのだ。

 本来ならば『七五三』大子供相撲大会に参加資格のないものたち。
 彼らを事前審査でふるい落とすことは難しい。
 
 年齢別のいずれかのステージに出場し、この不届き者を見つけてくれないだろうか。
 神聖な儀式を滞りなく執り行うため、彼らを速やかに退場させて欲しい。

注意事項
 イベント選択時、『大子供相撲大会』でのエントリーステージを選択できます。
 
 ステージによって、敵編成が変化します。

 違いは敵編成と、各敵キャラ固有の通常ドロップ品のみです。
 ミッションクリアなどのイベント報酬そのものには影響ありません

『3歳フレッシュステージ』
 若くて勢いのある3歳戦。
 経験は少ないが、その分波に乗りさえすればもう止まらない。
 
 敵編成は攻撃系能力が高く、防御系能力が低い。
 すばしっこく、手数の多さで勝負してきます。

『5歳ミドルステージ』
 若さと経験。その両方を兼ね備えた5歳戦。
 まさにピーク、まさにベストコンディション。油が乗り切った世代である。
 
 敵編成は基本ステータスが全体的に高い。
 その分絡め手は少なく、属性攻撃や異常攻撃はありません。

『7歳アッパーステージ』
 経験に裏打ちされた老練なる技を魅せる7歳戦。
 すでに峠は過ぎているが、まだまだ現役。最後の花を華麗に咲かせる。
 
 敵編成は耐久力を中心に基本ステータスが全体的に低い。
 その分、状態異常攻撃や特殊攻撃が多めです。

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
ツルカメ神社

 ツルカメ神社。
 その名の通り、ここでは鶴と亀が神として祀られている。

 境内には二体のコマイヌが待ち構えていた。
 それらはコマイヌとしての機能を持つが、形はイヌ科ネコ科の像ではない。
 
 この神社に祀られる鶴と亀、それぞれを模した像が1体ずつ鎮座している。
 鶴は銀色に、そして亀は金色に。やや目に痛い、大変めでたい色に輝いていた。

 その昔、ツルカメ神社かカメツル神社かで大きな戦いがあったらしいが。
 興味もないが、おそらく、鶴が勝ったのだろう。
 
 そしてツルカメ神社ができ、金に輝く亀のコマイヌが亀派の慰めになったかどうか。
 それは分からないし、やはり興味はなかった。

 鶴は千年を生き、亀は万年を生きるという。
 流石にそこまでの高望みはしていないだろうが、ここを訪れるものが願うことは一つ。
 生きること。生き続けること。
 
 最も傲慢な、そして叶わない願いである。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
それぞれの、土俵

 ツルカメ神社、その境内には3つの土俵があった。
 これは普段からあるものではない。今日のために作られたものである。

 縄で円を作っただけの簡易なものではなく、しっかりと土を正方形に盛り固め。
 四方に立てた柱の上に、木造の屋根が乗っかっていた。
 
 しかもその土俵はなんとも巨大だった。
 通常のものの数倍。1対1では押し出しの決まり手はありえないだろう。
 今日のバトルロイヤル形式のための特別仕様だった。

 ばちんっ、と肉と肉が激しくぶつかる音が境内に響く。
 音は一つではなく、出処も一箇所ではない。
 それぞれの土俵の上で、太った人たちが組んず解れつしていた。
 
 彼らは3歳でも5歳でも7歳でもなく、プロ力士である。
 オープニングアクトとして、土俵を清める意味でも彼らは相撲を取っていた。

 この見世物、大子供相撲大会を見に来た客たちも徐々に集まってきている。
 本来ならば七五三のお祝いとして、子供の成長を感謝する儀式なのだが。
 
 もはや完全に、ツルカメ神社はただの相撲巡業と化していた。

 客たちはそれぞれに、目当ての年齢の土俵の周りに幕の内弁当を持って陣取り。
 広い土俵の真ん中で相撲を取っている力士に対し、適当な声援を送っていた。

  • フェイズ3

3歳フレッシュステージ(戦闘前)

3歳フレッシュステージ

 3つあるステージの中で、最も若く、最も勢いのある土俵。
 ぎりぎり歩けるようになった程度の子供が、泣きながら相撲を取らされている。
 
 その様子を微笑ましいと取るか、地獄絵図と取るか。
 まあ少なくとも本人は、泣くほど嫌がっているのは確かだった。

 だが、このステージにも悪意は存在する。
 悪意の矛先は、金と銀の鶴亀像の前に置かれた米俵。
 753kg、10年は余裕で遊んで食える圧倒的白米である。
 
 3歳児にはこの価値は理解できないだろうが、13歳になる頃には分かるだろう。
 あの時のあの米、まだ食ってるという事実と向き合えば。

 3歳ステージだけあって、周りを見渡してもサイズ感が全体的に小粒である。
 (PC名)が異様に浮いている、という自覚は持っているべきだろう。
 奇異の目に耐えねばならない。3歳です、という顔をして。
 
 そして周囲にも同じように、浮いているものたちがいた。
 年齢を偽り、米を狙う不逞の輩である。

 不正を見抜く、その方法は一任されている。排除方法も。
 
 ここは3歳ステージ。4歳以上を容赦なく土俵から蹴り出すのだ!

戦闘予告
自称3歳に遭遇した

5歳ミドルステージ(戦闘前)

5歳ミドルステージ

 3つのステージで、最も広く最も観客が多い。
 まさにこここそがメインステージ、という感じだった。
 
 客が多い、つまりは期待も大きい。
 油の乗り切った世代による名取り組みを、多くの者が見に来ているのである。

 参加者も多く、ライバルが多いにも関わらず不正参加者の姿はあった。
 
 周囲の様子を眺めていると、何となくその共通点が見えてくる。
 不正参加者、彼らの意識はある一点に向いているのだ。
 
 銀鶴金亀のコマイヌ像の前に山と積まれた米俵。
 それに対して、強い強い執着を彼らは分かりやすく向けていた。

 753kg、10年は余裕で遊んで食える圧倒的白米である。
 だが、今はその姿は米俵。ただの、藁の塊だ。五歳児が興味を引くものではなかった。
 
 このステージにおいて、それに目が奪われているもの。
 その価値を理解し、欲するもの。
 
 彼らこそが自身の年齢を偽る大悪党、サバ読み詐欺の連中である。

 不正を見抜く、その方法は一任されている。排除方法も。
 
 ここは5歳ステージ。ガキもロートルもお呼びではない。
 真に実力を試されるこの土俵に見合わぬものを、客が冷める前に追い出すのだ!

戦闘予告
自称5歳に遭遇した

7歳アッパーステージ(戦闘前)

7歳アッパーステージ

 3つのステージ、3つの土俵。
 ここと比べれば、他の2つなどは児戯そのものだろう。

 迫力はないかもしれない。
 スピードも、パワーも、あるいはテクニックも。
 
 だが、違うのだ。フィジカルではない。小手先の技術でもない。
 彼らの使う、持ちうる武器は経験そのものだった。

 無謀と言わざるをえないだろう。
 このステージに、年齢を誤魔化して登る事は愚かであると断言できる。
 
 若さで立ち向かえるか? さらなる経験で立ち向かえるか?
 答えはどちらもノーだ。
 
 若さでその差は埋まらず、経験はこれ以上の上積みを必要としていない。
 トータルバランスで言えば、彼らこそがベストであると言っても過言ではなかった。

 無謀なる挑戦者。彼らには同情するしかないが。
 それでも、仕事はしなくてはならないだろう。
 
 鶴と亀の金銀に輝くコマイヌの前に積まれた優勝賞品となる米俵。
 753kg、10年は余裕で遊んで食える圧倒的白米である。
 
 その魅力が、魔力が、彼らを無謀な道に走らせたのか。

 不正を見抜く、その方法は一任されている。排除方法も。
 
 ここは7歳ステージ。老人クラブなどではない。
 目の肥えた客たちの前から、身の程知らず共を引きずり下ろすのだ!

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
自称7歳に遭遇した!

  • フェイズ4

共通(前半)

ツルカメ神社

 歳をごまかす輩は何処にでもいる。
 
 何のアピールか妙に短い半ズボンをはいたり、魔女を自称してみたり。
 あるいは永遠の十七と言ってはばからない。そんな連中である。

 七五三、そして大子供相撲大会。
 そのステージの参加資格はシンプルだった。年齢、それ以外にはない。
 
 特別である必要はないのだ。
 三歳、五歳、七歳を迎えた子供、その全員に自動的にその価値が与えられる。
 
 だが、それを一日でも過ぎれば、価値を失う。資格を失う。
 そのときになってはじめて、その瞬間が特別だったのだ、と気づくのだ。

 だがそれに気づかなかった、あるいは目をそらした輩。
 紛れ込んだ年齢詐称者は根こそぎ排除した。
 
 753kgのお米は、本来渡るべきものの手に。
 育ち盛りの3,5,7歳の口に運ばれることになるだろう。
 
 彼らが育ち、またこの場に年齢詐称者として戻ってこないことを祈るばかりである。

 ツルカメ神社の本殿にて、優勝賞品の授与式が執り行われていた。
 
 境内ではすでに土俵の撤去作業が始まっており、様々な音と声が喧しくこだましている。
 本殿の中、宮司によって儀式的に行われているが、この喧騒の中では厳かにという雰囲気はなかった。
 
 祭りの後、その浮かれた空気が未だ漂っていた。

イベントマップ『ツルカメ神社』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

この子の753のお祝いに

 3つのステージ。3名の優勝者。
 それぞれの勝者の名が読み上げられ、子どもたちが本殿の奥に並ぶ。
 
 戦いに勝ち残った、というほど精悍な顔つきでもなかったが。
 それなりに誇らしげに、宮司からの祝詞を黙って聞いていた。

3歳フレッシュステージ(結末)

 3歳ステージ。
 その勝者となったのは、サラブレッドのレッドエンデバー号だった。
 
 3歳とは思えない立派な馬格を持ち、土俵では他者を寄せ付けなかった。
 後ろ足の跳ね上げを得意技とし、土手っ腹にまともに食らったクマがパタリと倒れたところで勝負ありだったろう。
 
 それを見たものの多くは戦意喪失し、自ら土俵を割った。

 本業では三冠を達成し、今回の勝利で見事四冠を達成。
 所有者であるアズラゥ・バヌーシーは、すでに2年後の5歳ステージへの参戦を表明しており、早くも連覇が期待されている。
 
 引退までに一体いくつの王冠を手にすることになるのか、期待の3歳である。

5歳ミドルステージ(結末)

 5歳ステージ。
 その勝者となったのは、ピットブルのラッキー君だった。
 
 ラッキー君は、土俵内に打ち付けられた杭に鎖でつながれた状態での参戦となった。
 押し出されることがないため有利になるが、参加者満場一致で許可。
 
 牙を剥いて暴れる姿が、あまりに荒々しかったからである。

 鎖につながれたまま、周囲を威嚇しまくったラッキー君。
 他の子供たちはたちまち恐怖に心を折られた。
 
 ごく短い時間で、彼の優勝は決定した。
 犬界では最強と名高いピットブルであるが、今回の結果により、異種族間でもその有用性が示されたといえるだろう。
 
 そして彼は未だ収まりがつかず、土俵上の杭につながれたままである。

 ピットブルの代わりに本殿奥で祝われている、飼い主のマダム・エリザベスの娘。
 5歳はとうに過ぎているが、代理ということでそこにいる。
 
 初めからそのつもりだったのか。
 思いっきり派手で高そうな衣装を着て、壇上から他の参加者を見下ろしていた。

7歳アッパーステージ(結末)

 7歳ステージ。
 その勝者となったのは、巨人の子供だった。
 
 ただ立っている状態で、すでに土俵の2/3を占める巨体。
 普通に勝ち目がなかった。

 ただ、勝負は長期戦となった。
 
 心優しい巨人の子は他の参加者を力づくで負かすことはできず。
 他の参加者は、物理的に巨人の子を土俵から追い出すことはできなかった。
 
 完全なる膠着状態。
 それを動かしたのは、一匹の小さな虫だった。

 勝負に焦れて動き出したのか、それともそれを甘い蜜だとでも勘違いしたのか。
 巨人の鼻の下あたりを飛び回る虫。
 
 そこで飛び出した、巨人の子のくしゃみ。
 爆音と爆風が土俵の上から降り注ぐ。その力に耐えられる7歳時は存在しなかった。
 
 かくして。土俵の真ん中に大穴を開けたくしゃみが決まり手となり。
 彼の優勝が決定した。

共通(後半)

 優勝者に贈られるお米は、神社の領田でとれたものである。
 
 農巫女(ノフジョ)と呼ばれる人たちが、一年かけて心を込めて作ったもの。
 そこには子供の健やかな成長への願いが込められている。
 
 3歳、5歳、7歳、そしてその先へと。

 七五三とは、子供の成長を報告し、祝い、感謝し、そしてさらに願うのだ。
 次もお願いしますと。さらなる成長を。さらなる幸福を。
 
 その願いは尽きることはない。最後の時が来るまで。
 だから、五円、十円で願うべきではない。もうちょっと、張るべきである。

 なお、今年も結局、『人』の優勝者は出なかった。
 この相撲大会が始まって以来、連続未優勝記録継続中である。
 
 ルール改正が叫ばれるが。
 宮司は馬に祝詞を上げながら、来年もやるぞ、と意気込んでいた。

ミッション『この子の753のお祝いに』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『子供用甘酒』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『奉納化粧廻し』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
この子の753のお祝いに
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

最終更新:2017年12月02日 03:02