限定イベントテキストまとめ その5


雪鬼夜行のお祭り騒ぎ

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:雪鬼夜行のお祭り騒ぎ』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は1/30(水)~2/16(土)までです
雪鬼夜行のお祭り騒ぎ
 冬の始まりに降り出した雪は、2月を迎える頃には一面を白く染め上げていた。
 周囲に聳える山も、分厚い氷が蓋をした湖も。
 
 そのすべてが純白の雪に覆われ、春を待ちながら深い眠りについていた。

 山と湖に囲まれた町セントポーラもまた、深い雪に閉ざされている。
 だが、町は、人は、ただ眠って春を待ちはしない。
 
 生命活動も経済活動も休むことができない事情もあるが。
 雪や寒さなどには負けない、という町の人々の気概でもあった。

 その始まりは、街全体を巻き込むような大規模なものではなかった。
 
 積もりに積もった雪を使い、誰かが作った雪だるま。
 そこから始まった『雪像』作りは広がっていき、数も質も上がっていった。
 
 やがてそれが街全体に知れ渡る頃には、『お祭り』が生まれていた。

 『セントポーラ雪祭り』、その日は多くの『雪像』が街中に並ぶ。
 
 子供が作って家の前に置いているものから、プロが仕事として制作するものまで。
 その出来不出来は関係なく、町を彩るものとして皆に愛されていた。

 雪像が立ち並ぶ町そのものが名物だが、その中でもやはり特別なものがある。
 それは『鬼』を模して造られた『雪鬼像』と呼ばれるものだった。
 
 初めはそのクオリティで注目された『雪鬼像』だったが、やがて名物となると。
 年を追うごとにその数は増え、町のどこに行っても見られるようになっていた。

 今ではこの祭りで一番の名物となった『雪鬼像』。
 今年の祭りが始まって三日目のことである。
 
 その『雪鬼像』が動き出したのだ。

 街の中心部に展示されていた『雪鬼像』は全部で四体。
 町のいたるところにある『雪鬼像』の中でもとりわけ出来がよく、また大きさも二メートル以上ある巨大なものだった。
 
 それらは同時に動き出し、町中にあった他の『雪鬼像』もそれに続く。
 彼らはひとところに集まり、そして町を歩き始めたのだった。

 いまだ直接的な被害は出ていないが、『雪鬼像』は街を練り歩き危険な状況である。
 『雪鬼像』による百鬼夜行である。まあ、練り歩くのは日中で、夜は寝静まるらしいが。
 
 彼らは雪でできている。
 故に、時間による解決を待つ手もある。
 春が来れば、あるいはそこまで行かずとも、溶けて消えてしまうだろう。

 だが、この町には気概があった。
 春は待たない。理由は知らないが、動き出したのなら、止めるまでである。
 
 同じく気概のあるものの援護を求む。

『マップ:雪像の町『セントポーラ』』を発見しました
  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
雪像の町『セントポーラ』
 『セントポーラ雪祭り』
 
 この祭りに、明確な始まりと終わりはない。

 冬が来て雪が降り、程なくして町は雪に埋もれることになる。
 
 そうすると、いつ、誰が、という決まりなく町中に雪像が立ち始め。
 出揃ったな、というところでぬるりと祭りは始まるのだ。
 
 そして季節が進んでいくことで気温が上がり、雪像が溶けていく。
 いつ誰が言い出すわけでもなく、そろそろだな、というところで終わりとなる。

 ついに今年もぬるっと始まった『セントポーラ雪祭り』。
 町中には、大小様々な、色んなものをモデルにした雪像が立ち並んでいた。
 
 中央広場やメインストリートなど、街の中心となる場所はもちろん。
 民家の庭などにも、物語性のあるやたら凝ったジオラマ風の雪像が出現していた。

 雪祭りが始まると、まず行われるのが住民揃っての行進である。
 あれがいいこれがいいと批評しながら、みんなで町の端から端まですべての雪像を見て回るのだ。
 
 何を見ても全てにカワイイカワイイという女子。
 一つ一つ、声に出して低い点を付けて回るメガネ。
 『雪鬼』の像が増えすぎていることを嘆く老人。

 これだけで、ほとんど一日が終わることになる。
 
 時間と労力を掛け、指がちぎれるような思いで作った雪像のお披露目である。
 この一日で祭りの9割は終わる、と言うものもいるぐらいだった。

 そんなお披露目も終わり、町の外の人間などが訪れる二日目も過ぎ。
 そして三日目の夜、町が寝静まる中、それらは起きて来たのだった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
雪鬼夜行の誕生
 この町の夜は早い。
 夏の頃に比べて半分ほどしかない昼間を終え、日が落ちると一気に町は静かになる。
 
 娯楽も何もない町である。
 町に一つだけあるスナックに、数人の親父が集まるのみだった。

 その彼らが、始まりの唯一の目撃者となった。
 かなりの深酒で酩酊状態にあり、どれだけ正確に覚えているかは疑問ではあるが。
 
 スナックからの帰り道、肩を組んで下手な歌を歌いながら通りを歩いていた。
 その歌声が癇に障ったのかも知れない。
 
 四体の『雪鬼像』は彼らの目の前で動き出し、台座から下りて来たのだった。

 街灯がポツポツと、光がつながらない間隔で照らしている大通り。
 そこに建てられた四体の『雪鬼像』は特別製だった。
 
 『鬼』の雪像自体が名物となり。
 粗製乱造とは言わないまでも、町のいたるところで飾られるようになった雪鬼像。
 その出来不出来にはかなりのバラツキがある。

 それら雪鬼像の中でも、その四体のクオリティは群を抜いていた。
 
 二メートルを超える巨体に、細かな造形までしっかりと作り込まれている。
 溶けて消えることが運命づけられているのは、何とももったいない話だった。
 
 動き出したそれら四体の『雪鬼像』は、腰を抜かした酔っ払いたちには目もくれず。
 大通りを我が物顔で闊歩し始めた。

 一晩のうちに、四体は初日に人々が練り歩いた道を辿って町を歩いて回った。
 その道順にあった雪鬼像が次々と動き出し、その列に加わっていく。
 
 町を一周して雪鬼像たちがスタート地点に戻ってきた時、その列は『百鬼夜行』と充分に呼べるほどのものになっていた。

  • フェイズ3
その足を止めろ
 一晩歩いたからか、次の日彼らは大通りに列をなしそこで一日止まっていた。
 朝起きてその様子を見た町の人々は、初めは悪戯を疑ったという。
 
 数人の酔っぱらいおじさんの証言はあったものの信用に値せず。
 なんだったら、雪像を動かした犯人扱いされていた。
 
 彼らがある程度信用されたのは、さらに次の日、雪鬼像が動き出したのを町の人々が目にしてからだった。

 四体の雪鬼像を先頭に、行列を作って練り歩く。
 ただし、人や建物に対して破壊行為を行うことはなく、ただ歩き続けるのみである。
 
 距離をとって見ていれば、一つの見世物として悪いものではなかった。
 とはいえ、いつまでも遠巻きに見続ける訳にはいかない。
 
 あくる日、意を決して大通りへと飛び出したのは、役場の人だった。

 除草用のバーナーを構え、一人勇敢に雪鬼像に立ち向かった役場の人。
 バーナーの射程はおよそ30センチ。
 
 勇気は立派だったが、武器は貧弱だった。普通に無理だった。

 踏み潰される寸前、他の役場の人に助け出された役場の人。
 落としたバーナーはそのまま火を吹き続け、先頭の雪鬼像の足をわずかに溶かした。
 
 だが、火力は弱く、次に来た足にバーナーごと踏まれて簡単に消えてしまった。
 痛くも痒くもない。そんなところだろう。
 
 だが、その程度の何かが雪鬼像たちのスイッチを押した。

 足を軽く焼かれた雪鬼像を含む先頭の四体が両腕を高く掲げ、雄叫びを上げた。
 その姿は勇ましく、かかってこい、と言わんばかりである。
 
 後ろに続く雪鬼像は同じような威嚇はしなかったが、その意志は同じらしく。
 行進の足を止め、周囲に視線を送っていた。

 両腕を掲げた四体の『雪鬼像』。
 その胸にはいかにも鬼らしい胸毛はなく、大きさの違う五重の円が描かれていた。
 
 それはまるで、的のようだった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
(敵)に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
雪像の町『セントポーラ』
 雪の町セントポーラには、春の訪れは未だ遠い。

 訪れたとしても、春は短く、夏はなお一層短い。
 
 一年の半分を冬として過ごすこの町には、春への渇望や希望は確かにあるが。
 それは無い物ねだりでしかなく、ほとんど意味をなさない。
 その上で、長く厳しい冬に抗い、様々な方法で戦い続けているのだった。

 雪鬼夜行。『雪鬼像』の行列は街の大通りを練り歩いていた。
 
 だが、歩みそのものはほとんど止まっており。
 沿道から少し離れて見ている観客たちに向け、アピールのような威嚇を続けていた。

 先頭を歩いていた『雪鬼像』が肘を直角に曲げた状態で、両拳を上に向ける。
 氷像であるので、そのポーズをとっても二の腕に力こぶができることはない。
 
 だが、おそらく目の錯覚なのだろうが。
 二の腕だけでなく、胸筋や広背筋にも大きな盛り上がりが見えた気がした。

 見事にパンプアップされた胸を突き出す。
 
 そこには墨のようなもので、黒い五重の円が描かれている。
 そして中心にあたる一番小さな円のみが、その中を赤く塗りつぶされていた。
 
 その『的』は、氷像として造られたときにはなかったものである。
 動き出し、行列を作った後に浮かび上がってきたものだった。

 ボクサーが顔を突き出して、打って来いと挑発でもするように。
 そのポーズのまま周囲に自身の体の正面を向け、胸の『的』を見せつけていた。
 
 そのアピールにも、離れた場所にいる観客たちは動かない。
 だがそこに、やや声質の高い舌っ足らずな掛け声が響いた。
 
 それは子供の声だった。

 大人の半分ほどしかない身長の男の子が、『雪鬼像』の行列に立ちふさがっている。
 近くに親の姿は見えない。彼は一人だった。
 
 キリッとした眼差しで、大人でも見上げるほどの大きさの氷像を見つめている。
 その右手には白い、小さな雪玉を握っていた。その武器はあまりに貧弱だった。

「くらえ!」
 少年は大きな掛け声とともに、綺麗なフォームでその雪玉を投げつける。
 
 彼がどういう感情をもって投げたのかは分からない。
 楽しみにしていた『雪祭り』を台無しにされた怒りなのか。
 とはいえ、空を舞う純白の雪玉からは、そういう黒い感情は見えなかった。

 晴れた空から降り注ぐ淡い光に輝く雪玉。
 くるくると中空を転がって、先頭にいた『雪鬼像』の体に当たった。
 
 狙ったわけではないだろうが、雪玉はものの見事に鬼の胴体の真ん中を射抜き。
 体に描いた的のような円、その中心の赤丸にしっかりと命中していた。

イベントマップ『雪像の町『セントポーラ』』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

雪鬼夜行のお祭り騒ぎ
 雪玉の中に大きな悪意が詰まっている、などということはなく。
 雪像にぶつかって、柔らかい方の雪玉が砕けて破片がパラパラと舞い落ちた。
 
 だが、雪玉が命中した『雪鬼像』の動きが止まる。
 そしてそれは何かを受信でもしたかのように振動し、全身が崩れ始めた。
 
 腕が落ち首が落ち、背が折れる。
 原型を一つも留めることなく、それは短い時間で小さな雪山に変わっていた。

 離れた場所からそれを見た他の観客たちは、『ルール』を理解していた。
 その的は、行列を作る雪鬼像、その全ての胴体に描かれていたのだ。
 
 理由を考える必要はない。
 次の瞬間には、遠巻きに見ていた観客達は皆足元の雪を掴んで雪玉を作っていた。
 
 そして、雪鬼像たちのいる大通りの沿道まで雪玉を手に走り出した。

 雪鬼像たちは逃げることなく、むしろ胸の『的』を見せつけるようにポーズをとる。
 大通りから沿道に体を向け、でんと待ち構えていた。
 
 観客達はしっかり作った雪玉を、その雪鬼夜行に向かって一斉に投げ始めた。

 わーわー。きゃーきゃー。わーわー。ぎゃーぎゃー。
 
 すでに、というよりも割と最初から楽しんでいる観客たち。
 雪は無限にある。雪玉は無限に作ることができる。
 だが、それをぶつける鬼には限りがあった。

 的を射抜かれ、一体、また一体と崩れていく雪鬼像。
 中には体が小さく、的そのものが小さいものもいたが雪玉の数には敵わない。
 やがてそれも的の中心に雪玉を受け、小さな雪山へと戻っていった。
 
 そうして最後に残ったのは、先頭にいた四体の『雪鬼像』のうちの一体だった。

 彼らはその的の大きさもあり、そもそも目立つ存在でもあって早々に狙われた。
 大きな雪山が三つできるのは早かったが、残る一体は粘りに粘り。
 
 ついに後ろに従えていた雪鬼像たちはすべて倒れ、最後の一体となっていた。

 前に突き出した両腕で氷の金棒を持ち、プロペラのようにぐるぐる回している。
 その隙間をタイミング良くかいくぐり、的にぶつけねばならなかった。
 
 次々と投げ込まれる雪玉が、バシバシと金棒に叩き落とされる。
 だが、雪鬼像の数が減っていき、それが最後となれば勝ち目はなかった。
 
 数の暴力。誰かの雪玉が数発同時、最後の『雪鬼像』の的を撃ち抜いたのだった。

 全ての雪鬼像がただの雪へと返り、このお祭り騒ぎはようやく幕を閉じた。
 『鬼』は雪玉によって祓われたのだ。
 
 来年、この『セントポーラ雪祭り』がどうなるかは分からない。
 またも雪鬼像に何かが入り込み、動き出すかも知れない。
 
 だが、実行委員長でもある町長の禿げ上がった頭にはすでに考えがあった。

 マンネリ化しつつあった祭りを大いに盛り上げてくれたことに感謝しつつ。
 来年は、最初から氷像の胸には的を描いておこう、と。
 
 大会公式雪玉をいくらで売り出すか。そろばんを弾きながら、そんな事を考えていた。

ミッション『雪鬼夜行のお祭り騒ぎ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『白雪おにぎり』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
雪鬼夜行のお祭り騒ぎ
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『雪鬼』が修得可能になった

黒花の霧と梅の花

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:黒花の霧と梅の花』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は3/20(水)~4/6(土)までです
黒花の霧と梅の花

 一面にピンクの花が咲き誇る梅の里。
 そこは『梅の樹』と、『ウメの精』たちの楽園だった。

 小高い丘に立ち並ぶ梅の木は全部で千を超える。
 
 それらにはいくつかの品種があり、それぞれに開花の時期が僅かに違う。
 早いものでは年が明けたあたりから咲き始め、この時期にはほぼ全ての梅が満開を迎えるのだ。
 
 一つ一つはピンク色の小さな花だが、数の力で地表を埋め尽くす姿は圧巻だった。

 そんな梅の樹を世話をしているのが、この地に住む精霊たちだった。
 彼女たちはその美しい姿と相まって、『ウメの精』と呼ばれている。
 
 梅の花のように可憐で淑やかで、艶やかで華やかな。
 幼さと妖艶さを併せ持つ、魅力あふれる女性たちだった。

 そんな村を黒い霧が襲った。

 里の梅の満開が近づくある日、東の空に黒い霧の塊が生まれた。
 不穏な空気をまとったそれはゆっくりと里へと近づき、まるごと飲み込んだ。
 
 美しかった鮮やかな色が、黒に塗りつぶされてしまう。
 その正体は、黒い花粉だった。

 『スプリング・インベーダー』と呼ばれるそれは、しばしば観測された。
 春先に活動を始め、風に乗っていくつかの植物群を襲って姿を消す。
 
 そこにあった植物は根こそぎ枯れ果てて。
 数年後、そこにはスギやヒノキ、ブタクサなどが生える森が出来上がるのだ。

 自然の摂理、と割り切ってしまうにはあまりに暴力的である。
 
 しかもその暴虐の中に、『ウメの精』たちも巻き込まれてしまった。
 黒い花粉の中がどうなっているのか、状況、その生存は確認されていない。

 梅の里が黒い花粉の霧に包まれて、すでに数週間が経過している。
 『梅の樹』、そして可憐な『ウメの精』たちを救い出すにはもう猶予はない。
 
 黒い花粉の霧を晴らし、梅の里を取り戻すのだ。
『マップ:ウメの華舞う『梅の里』』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
ウメの華舞う『梅の里』

 春を待つ、いまだ肌寒い季節でありながら。
 どこなくそれを忘れさせる暖かさを、薄紅色の梅の花々は持っている。
 
 桜ほどの派手さはないが、同時に嫌味もない。
 結局は好き好きということにはなるだろうが、『花見』の対象としてそれぞれに素晴らしいものだということは間違いなかった。

 梅の里。
 そんな美しい梅の花々は、今はない。
 
 黒い霧の中で、少なくとも外から見ることはできなくなっていた。

 クロバエの渦に飛び込んだような。もちろんそんな経験はないが。
 それぐらいの不快さが、その空間を包み込んでいた。
 
 梅の木々が立ち並ぶ丘を、黒い花粉の霧が充満している。
 吸い込んでしまえば、どれほどの悪影響があるのか。
 完全に防ぐのは難しいだろうが、それでもなるべく少なくしたいところだった。

 鼻と口を隠しながら、浅い呼吸で里を歩く。
 
 外からは、この一帯は完全な黒い塊でしかなかったが。
 中に入ってしまえば、ある程度の視界は確保できた。

 そこには、美しい花を咲かせたままの梅の樹が凛とした姿を見せていた。
  • フェイズ2(なし、探索可能)
梅を守る精霊
 梅の里を襲った黒い花粉。

 その中で、梅の樹たちは健気に咲き続けていた。
 
 そしてそれら樹のそばには、『ウメの精』たちの姿もあった。

 動きにくそうな分厚い着物を着て、髪は丁寧に結い上げている。
 それを纏めるかんざしには、梅の花をかたどった装飾が施されていた。
 
 花がこれまで無事なのは、彼女らの働きによるものだろう。
 まるで保護色のような黒いマスクを付け、それでも甲斐甲斐しく木々の世話を続けているようだった。

「ごほっ……」「ごほごほっ………」
 苦しそうに咳き込む声が梅の里に虚しく響く。
 
 花は無事でも、彼女らも無事であるとはいい難い。
 咳き込む鼻と口をマスクで覆い、残った表情にも生気はない。
 それでも休まないのは、意地か呪いか、何かが彼女らを突き動かしていた。

 黒い花粉がついてしまった花びらに、マスク越しに唇を寄せる。
 そしてマスクをずらし、ピンク色の唇から漏らす吐息を花びらに吹きかけた。
 
 花についていた黒い花粉が飛び、白い肌を見せる。
 『ウメの精』はその花粉を吸い込んで咳をしながら、マスクをもとに戻していた。

 その健気な看護を邪魔すべく、あるいは気にもとめることなく。
 そこへ、黒い巨人が現れた。
  • フェイズ3
ウメを襲う巨人

 霧のように薄く里を満たす黒い花粉が、突如渦を巻き形をなし始めた。
 
 ずんぐりした体に、太い幹のような手足が生える。
 梅の樹を超えるような背丈はないが、それでも充分に大きかった。

 黒い巨人は花粉の塊そのものであり、化身でもあった。
 その姿を見て、一斉に『ウメの精』たちが逃げ出す。
 
 マスクを付けたままでは声が通りにくいが、それでも互いに声を掛け合って。
 連携を取りながら逃げる、それは慣れた様子だった。
 この里がこういう状況になってから、何度も繰り返してきたように見えた。

 巨人は逃げる『ウメの精』は追わず、手近にあった梅の樹に攻撃を加えた。
 幹を殴りつけ、枝を折り、花を散らす。
 動くたびその体からは、自らを構成する花粉が飛散っていた。
 
 いずれこの巨人は元の花粉に戻るだろう。だがその頃には、梅の樹は失われる。
 そしてその原資となる花粉はこの場に、それこそ腐るほど漂っていた。

 同様の巨人が一つ二つと生まれ、梅の樹に襲いかかっている。
 少しずつ黒い霧は薄まってきている。だが、なくなるにはまだ程遠い。
 
 黒い花粉の霧を消し飛ばす。
 そのためにすべきことは、黒い花粉の化身を打ち砕くことだった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
スプリングインベーダーに遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
ウメの華舞う『梅の里』

 梅の里をまるごと包み込んだ黒い霧。
 それは繭のようでもあり、であるならばここから何が生まれるというのか。

 黒い霧、その正体は花粉である。
 つまりはいずこかの、いずれかの花から吐き出されたもののはずだった。
 だが、その発生については謎に、黒い靄に包まれている。
 
 突如として現れ、死と再生を振りまいて去っていく。
 時に『神』と呼ばれるものの、その一つの形だった。

 ただしそれは、もたらされる側が受け入れるか否かによる。
 受け入れなければ、やはりそれはただの災いであり、害でしかない。
 
 それらが神となるか、災害となるか。
 それを決めるのは彼らではなく、もちろんリーキたちでもなく。
 
 この里に住む『ウメの精』たちだった。

 また一つ、黒い花粉の巨人を消し飛ばす。
 
 砕けたその体は黒い粉塵へと、里を覆う霧の一部へと戻っていく。
 だが、全てが戻るわけではない。
 磨り減り、消し飛んた分は永久に、確実に消えてなくなっていた。

 黒い巨人を作り、失い。徐々に霧が薄まっていく。
 その隙間から晴れ間が覗き、光が漏れ入ってきていた。
 
 そして、ついには風が、その小さな隙間を押し入ってこようとしていた。

 びゅうと。暖かく強い南風が里を襲った。
 少し前であれば、それでも黒い壁が跳ね返したであろう。
 
 だが、それには綻びがあり、その穴はもはや致命的に広がっていた。
 そこから無理矢理に押し入った風は、穴を広げながら黒い繭の中で暴れだす。
 
 それはずいぶんと遅れてやってきた、『春一番』と呼ばれる風だった。

 蜘蛛の子を散らすように、黒い霧が一気に晴れていく。
 薄紅色の梅の花々が、ようやく光の中に姿を見せようとしていた。

イベントマップ『ウメの華舞う『梅の里』』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

黒花の霧と梅の花

 春の嵐が通り過ぎた頃。
 その風とともに、黒い花粉の霧は姿を消していた。
 
 花々に付着し、その身を浸食しようとしていた花粉たちも根こそぎ振り払われ。
 『スプリング・インベーダー』は完全なる敗北を喫したと断言していいだろう。

 これはあくまで結果ではあるが。
 あの強烈な突風から、梅の小さな花々を黒い花粉の壁が守ってくれていた。
 
 梅の季節の終盤、いつもは毎年訪れるあの突風で残る全ての花が散ってしまう。
 それが今年は、皮肉なことに多くの花が残って美しく咲いていた。

 『梅の里』はすぐに、元の賑わいを取り戻した。
 
 きゃっきゃうふふと楽しそうに、『ウメの精』たちが踊っている。
 あの世紀末の荒くれ者のような黒いマスクは外し、美しい顔を見せてくれていた。
 
 見目麗しいその姿は、何時間でも何日でも何年でも見ていて飽きそうにない。
 だが、ここは海の底の龍宮城ではなく、地上の梅の里である。
 永遠はなく、終わりはすぐ近くにあった。

 春の嵐に梅の花は守られた。
 だが、それはほんの少し命が永らえただけにすぎない。
 『ウメの精』たちの踊りを彩るように、はらりはらりと一枚ずつ花が散っていく。
 
 それは彼女たちも分かっていることだった。
 だから彼女らはすでに世話をやめ、こうやって楽しんでいるのだ。
 
 その、最も美しい散り際を愛でながら。

 彼女たちは木々の世話をしているが、親でもなければ世話係でもない。
 ただ梅の樹、梅の花が好きなだけの精霊たちだった。
 
 今この瞬間、この美しさのために。
 一年間、そしてあの黒い花粉のなかでも頑張ってきたのだ。
 
 目や鼻の頭が赤く染まっているのは、けして花粉だけのせいではなかった。

 梅の花びらとウメの精とが舞う中で。
 
 里に数本だけある桜の木から、ポツポツと花が開き始めていた。
 また一つ、季節が進もうとしているようだった。

ミッション『黒花の霧と梅の花』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
黒花の霧と梅の花
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

縁起物を担いで踊れ

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:縁起物を担いで踊れ』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/8(水)~5/25(土)までです

縁起物を担いで踊れ

 町は喜びに沸いていた。
 新時代の到来を皆で祝い、希望を歌い、未来を夢見て。
 
 町を挙げての祭りが行われていた。

 お祭りに先立って、ハルクレーゲンと呼ばれていた町はその名を変えた。
 新たな名は『レーゲンキーラン』。実りある船出、という意味である。
 
 祭りと改名は、数百年に一度、ある天文現象が見られる年に行われる。
 それは大昔から続く、この町の大切な風習だった。

 太陽と月が重なり、それを交点に八つの一等星が十字に並ぶ『星天大十字』。
 それは吉兆でもあり、凶兆でもある。
 だから町ではそれを祝い、祓い、名を変えるのである。
 
 そして変わるのは町の名前だけではない。人の名前も新しくなるのだ。

 とは言え、利便性の問題から完全な改名は行われない。
 既存の名前の最後に数文字足すだけで、呼び名は変わることはないという。
 
 ちなみに町長の旧名はマルコ・ライオラントイルネスフィッツドンコスタ。
 新たな名前は、マルコッポロ・ライオラントイルネスフィッツドンコスタウェイ、である。
 名はともかく、姓が世代を重ねてどんどん長くなるのがつらいところだった。

 現在、町は祭りで大変な賑わいを見せている。
 町と人、それぞれの改名にあわせての盛大なお祭りである。
 
 食べ物や飾りなど、様々な『縁起物』がこのお祭りのために用意された。
 そして三日三晩騒ぎは続き、四日目の朝が明けた頃。
 
 大量にあったはずの『縁起物』が尽きようとしていた。

 『縁起物』は充分に用意されているはずだった。
 だが、騒ぎを嗅ぎつけた輩が町の外からも騒ぐためだけにかなりの数で訪れていたらしく、わずか3日で尽きてしまったのだ。
 
 とは言え、物がなくなったので祭りは終了です、というわけにはいかない。
 儀式は続くし、何よりまだまだ気分はお祭り状態だった。

 縁起物の殆どは、町の裏手にある山から集められた。
 『ナスタカフジ』と大変におめでたい名前の山であり、海の幸から山の幸まで、なんでも揃う場所である。
 
 とにかく圧倒的に、『縁起物』の数が足りないのだ。
 贅沢を言うつもりはない。何でもいいからとりあえず、『縁起物』を狩ってきてほしい。

 難しい話ではない。
 なぜなら山は、『ナスタカフジ』は縁起物に溢れているからである。

『マップ:紅白霊山ナスタカフジ』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
紅白霊山ナスタカフジ

 紅白色に染まる山『ナスタカフジ』。
 お祭りに揺れる町の裏手に聳え立ち、悠然とそれを見守ってくれていた。

 『ナスタカフジ』は本来、全身が赤い山である。
 赤土の上に植物も生えるがその密集度は低く、遠くからは赤色が目立って見える。
 そしてその頭頂部には雪を被り、綺麗な紅白色に塗り分けられていた。
 
 冬には半分以上が真っ白に染まるが、この季節にはずいぶん少なくなっている。
 頭の四分の一ほどに雪が残り、これから夏に向けてまだまだ減っていくだろう。
 
 今ぐらいの紅白の配分が、ちょうどいい美しさだった。

 その裾野に広がるのはクローバー畑。
 
 町の人に言われたことが本当なら、見えるこの全てが四つ葉である。
 三つ葉でも五つ葉でもなく、一つ残らず幸運の四つ葉らしく。
 探す必要も何もなく、無作為に引き抜くだけで四つ葉のクローバーが手に入るのだ。

 一面のクローバー畑の中に一本引かれた歩道を歩く。
 それが町と山をつなぐ、幸運の道である。
 
 『ナスタカフジ』が恵みとして与えてくれる、それがまず最初の縁起物だった。
  • フェイズ2(なし、探索可能)
お祭りと縁起物の町

 『ナスタカフジ』の麓に作られた町ハルクレーゲン。
 今は名を改め、『レーゲンキーラン』となっている。

 町は『ナスタカフジ』から集められた縁起物で、盛大な祭りを開催中である。
 浮かれ、浮足立ち、地に足がついていない。
 
 『縁起物』が今にも尽きようとしている中でも、その喧騒に陰りはなかった。

 とは言え町は今なお、縁起物に溢れている。
 家を覗けば軒先にてるてる坊主がずらりと並び、玄関先には門松が飾ってある。
 これに関しては、正月から出しっぱなしの疑いもあったが。
 
 このような飾り物は、売り物を除けばなくなることはない。
 問題は土産物や食べ物だった。

 祭りには町外からかなりの人数が押しかけたらしく。
 予想の何倍ものスピードで縁起物がなくなっていった。
 
 今は各家庭から豆や海苔、昆布などを集めてお茶を濁しつつ、なんとか時間を稼いでいる状態である。
 まだまだ町外からの客は増えており、その流れを止めることはできそうになかった。

 縁起物の切れ目が縁の切れ目、とも言われる現代。
 完全に縁起物が尽きる、そのタイムリミットはすぐそこまで来ていた。
  • フェイズ3
血祭りと縁起物の山
 手の空いている町の人や、依頼によって駆けつけた(PC名)ら『縁助隊』が縁起物を求めて次々に山に入っていく。
 
 町の人々は山に入る際、それぞれに何かしら背負っていた。
 赤べこや四斗樽など、つまりは縁起物を担いでいる。
 大きな白蛇を担いでいるものもいたが、それはもはや背負っているのか締め上げられているのか分からない状態だった。

 この、『縁起物』を担いでいくスタイルがこの町の入山における基本らしい。
 
 縁起物を担いで登り、それを山に捧げてさらに上位の縁起物を頂く。
 そういう習わしであるらしく、皆きつそうな顔をしながら担いでいた。
 
 (PC名)も勧められたが適当に受け流し、何も担がず山に入っていった。

 四つ葉のクローバー畑の途中で、そこにはロープウェイの駅があった。
 『ナスタカフジ』の中腹あたりまで、これで一気に登ることができる。
 それだけで、巨大なクローバー畑をスキップする事が可能だった。
 
 十人以上が同時に乗れる大型のロープウェイである。
 ただ、巨大な縁起物を担ぐもののせいで、人数制限は大幅に少なくなっていた。

 ロープウェイで半分近くをショートカットして、ようやく登山の開始である。
 
 最初に現れる梅林は、標高が低いせいかそれなりの縁起物しか見当たらない。
 カツオドリやウカリカリ梅などのダジャレ縁起物ぐらいのものである。
 それを越えた竹林では、季節ごとの初物が色々採れる。
 
 松林まで来ると、いよいよ高級食材のお目見えである。もちろんメインは松茸だった。

 梅林、竹林、松林と。
 奥へ行けば行くほど、標高が上がれば上がるほど。
 その変化に従って、縁起物のレア度もどんどん上がっていく。
 
 よりレアな縁起物を求めて、より奥へ、より高く。
 そしてついには、『ナスタカフジ』山頂付近にまで足を踏み入れていた。

 溶け切らない雪がいまだ残るほどの標高。
 とても持ち帰れない最高の縁起物である、御来光が空から降り注いでいた。
 
 ここまで来れば、かなりの縁起物が見つかるだろう。
 『ナスタカフジ』最高標高の地にて、『縁起物』ハントの始まりである。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
野生の縁起物に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
紅白霊山ナスタカフジ

 次から次へと襲いかかってくる『縁起物』をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
 
 町の人々、そして(PC名)を始めとする『縁助隊』の活躍により。
 気づけばそこに、縁起物の山が出来上がっていた。

 厳しい登山をねぎらうように、朝を迎えた空から御来光が降り注ぐ。
 その晴れ間を縫って、雲ひとつない空からパラパラと雨も降り出していた。
 
 山の天気は変わりやすいというが、それにしても慌ただしい。
 ここから夜になれば、八つの一等星が十字を作る『星天大十字』が顔を出すのだ。
 
 なんとも賑やかな空模様である。

 誰とはなしに、このぐらいで充分だろうという空気感が支配し始める。
 初めは向こうから積極的に掴みかかってきていた『縁起物』たちも、少し前辺りからほとんどいなくなっていた。
 
 『ナスタカフジ』山頂、積もった雪の上に山と積まれた縁起物。
 これを見て恐ろしくなったのか、単純に数が減っただけか。
 こちらだけでなく、向こう側もこれぐらいで勘弁してくれと言っているようだった。

 縁起物の山。
 それらを小分けして袋詰めし、手分けして町まで運ぶこととなった。
 途中からはロープウェイがあるとは言え、この作業だけでもかなりの重労働である。
 
 大きな縁起物を背負って入山した人々は、山に捧げた荷物分身軽になっており。
 縁起物運搬については彼らが頼りだった。

 半分まではそれぞれが背負って運び。
 もう半分は、無人のロープウェイにパンパンに詰め込んで縁起物が山を降りていく。
 
 待ちきれなかった町の人々は、ロープウェイの終着駅に集まってきていた。
 そして、山から降りてきた新たな『縁起物』に大歓声が上がる。
 
 配給を受け取る人々のように、一斉に走り出してロープウェイを取り囲む。
 それが一つの、別のお祭りのような大騒ぎだった。

 ようやく町に縁起物が戻ってくる。
 そして、『星天大十字』と改名を祝うお祭りは再びの盛り上がりを見せようとしていた。

イベントマップ『紅白霊山ナスタカフジ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

縁起物を担いで踊れ

 巨大な梯子を数人の男たちが支え、その頂上まで一気に一人の男が駆け上がる。
 一番上の足場に足先を引っ掛けて、逆さ吊りのようなポーズで歓声を浴びていた。

 メイン通り。
 大梯子の周囲にできた人だかりを避けて歩いていく。
 
 少し前に、南の方の神社で餅をまくというアナウンスが有り。
 それでかなりの人数が減ったのだが、それでも通りは人で埋まっていた。
 
 今、その神社がどういう状況になっているのか。想像したくもなかった。

 ちなみに神社では、餅まき以外にも行っていることがある。
 『改名御神籤』といって、町の外から来たものに新たな名を与えるものだった。
 
 それは町人のように名と姓に数文字付け足す方式ではなく、完全に新しい名前である。
 ほとんどあだ名を付けるのに近い。
 
 しかも今年はその客数が多いこともあって、途中からはかなり適当でいい加減なものになってしまっていた。

 町は縁起物にあふれている。
 祭りが終わるまでこれで充分、かは分からないが。
 少なくとも、また数日で尽きるなどということはあるまい。
 
 仮にそうなったとしても、余裕を持って補充をすれば問題はない。
 在庫管理と再入荷。基本である。

 それから数日たった日、夜の景色に変化があった。
 仰ぎ見る、夜空に浮かぶ星の配列。そこに違いが生まれていた。
 
 太陽と月が交わり、そこから一等星が十字に並んだ『星天大十字』。
 さらに中心を同じくして、空には別の八つの一等星がX字に並んでいた。

 『星天大十字』に『星天大X字』が重なる。
 それは数万年に一度、いや数億年に一度あるかないかの特大吉兆である。
 
 その天文現象にはまだ名がついていない。それぐらい珍しい、奇跡だった。

 この奇跡に、すでに浮ついていた町は更に色めきだつ。
 これでお祭りはさらに巨大に、さらに長期間になることだろう。

 集めた『縁起物』では足りなくなるのは明白で。
 先の縁起物集めに参加した、いまだ疲労の色濃い『縁助隊』は深い溜め息と共に、にわかにざわつき始めていた。
ミッション『縁起物を担いで踊れ』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『改名饅頭』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『七面大黒天像』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
縁起物を担いで踊れ
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

雨乞い儀式のつくりかた

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:雨乞い儀式のつくりかた』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は6/26(水)~7/13(土)までです
雨乞い儀式のつくりかた

 望めば、訪れず。
 拒めば、バカみたいな量で大挙してやってくる。

 そんな天の邪鬼ではた迷惑な存在が、梅雨時の『雨』というものだった。

 春と夏の間に訪れる梅雨。
 
 春を終わらせ、夏を迎え入れる。
 そのためのワンクッション、とだけいうにはそれなりに大きなイベントである。

 降りすぎても降らなさすぎても、その土地には様々な悪影響があった。

 そしてこの村、ヤンガスラークには『梅雨』がやって来なかった。
 
 干上がった川、枯れた井戸、死にかけの田畑。
 雨のない、水のない生活は限界に達して越えて、村人たちにはその向こう側の景色が見え隠れしようとしていた。

 すでに村では雨乞いの儀式が行われていた。
 村に伝わる伝統儀式である。この頃はまだ、水的にも精神的にも余裕があった。
 
 されど雨は降らず。
 この頃はまだ、『まあこれで本当に降ったら苦労しないよね』的な空気が流れていた。

 いつか梅雨はやってくる。なぜならば、結局は毎年来るのだから。
 そんな楽観的な想像をしながら、雨乞いの儀式は楽しげに続けられた。
 
 伝え聞いた別の地方の儀式をやってみたり、かなり昔の文献を見てやってみたり。
 とにかく手当たり次第に試したのだが、一向に天候が崩れることはなかった。
 
 皮肉なまでに晴れ渡る空をバックに、太陽はにこやかにギラギラと嘲笑っていた。

 あの手この手の雨乞いを行ったものの、晴天はしつこく続き。
 その頃にはもはや誰も楽天的ではいられず、村には暗い空気が漂い始めていた。
 
 あらゆる雨乞いをやり尽くし、もはや残された手はない。
 そこで彼らが考えたのが、ならばオリジナルの新しい『雨乞い』を創ろうではないか、というものだった。

 彼らの考案した雨乞いには協力者が必要である。
 強く雨を欲する意思、力、それらを備えた何かが必要なのだ。
 
 村からしばらく行った場所にある『バイレーナ湿原』。
 そのあたりは長年に渡って乾燥が続き、今では完全に干上がってしまっている。
 そこにはきっと、『雨乞い』のパワーが溜まりまくっているはずである。

 そこから『雨乞い』のパワーアイテムを持ち帰ってきてほしい。
 それを使って、村に雨を呼び寄せるのだ!

『マップ:大日照りのバイレーナ湿原跡』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
大日照りのバイレーナ湿原跡

 雨に見捨てられた村ヤンガスラーク。
 その信仰を証明すべく、彼らは『雨乞い』の儀式を行うに至った。

 大人たちは神社で儀式を、子どもたちは家にてるてる坊主を逆さに飾り。
 それぞれに全力で、本気で雨を願った。
 
 しかし願いは空まで届かず、空中分解して地に落ちてしまった。
 雨は降らない。だが涙雨を降らせるには、まだ早かった。

 そこから、彼らによるオリジナルの雨乞い創りが始まった。
 
 それは新たなオリジナル雨乞いであるがゆえ、正解はない。
 正しい方法も間違った方法もなく、それらは結果でのみ証明される。
 
 そしてそれは、終わりの見えない試行錯誤の長い道のりとなった。

 村で唯一のシンガーソングダンサー、キレニスタ・ウォーノック。
 彼が考案した『雨恋ダンス』を広場でみなで歌って踊るも、雨は降らず。
 
 女も子供も老人も、てるてる坊主のコスプレをして逆さ吊りになるも。
 6時間後に数人がギブアップするまで頑張ったが、雨は降らず。
 
 シンプルに祈るもダメ。自称雨女を村外から呼んでくるもダメ。賽銭箱に村長が全財産入れてみるもダメだった。

 儀式といえばやはり定番は『生贄』だろう、ということで。
 カエルやナメクジなど雨っぽいのを生贄に捧げたがそれも効果なし。
 
 雨乞いなんだから、逆に雨っぽさがないほうがいいんじゃないか、との意見があり。
 次に生贄に捧げるのは、雨から遠ざかっているものを、となった。
 
 ここでようやく、(PC名)の出番というわけである。

 『バイレーナ湿原』。
 そこはかつて、水にあふれていた土地だった。
 
 それが今は、長年雨に見放され涸れ果てている。

 そこで『雨乞い』パワーが溜まりまくっているものを探す。
 それが、今回の依頼である。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
かつての世界

 『バイレーナ湿原』。
 かつて巨大な川が流れ、肥沃な大地は緑にあふれていた。
 
 それが今や、死の世界と化していた。

 このあたりには昔から雨季と乾季があった。
 
 雨季になれば一帯がまとめて水に沈み、巨大な湿地帯が広がっていたという。
 乾季でも川は涸れることなく、雨のない土地に潤いを与え続けていた。
 
 その繰り返し。だがその循環はあっさりと崩れてしまった。

 雨が降らない。たったそれだけのことで、である。
 それだけのことで小さな世界が終わってしまった。
 
 川は徐々に干上がり、草木は涸れ果て、生き物は干涸らび。
 世界は一変し、全ては名残でしかなくなってしまった。

 川底が顕になった姿はまるで曲がりくねった道のようで、湿原跡を縦断している。
 
 どこもかしこも見える色は茶色ばかりであり。
 カラカラに渇いた地面は、風によって舞い上がる細かい土埃で常に煙っていた。

  • フェイズ3
いつかの世界

 空を仰ぎ見るまでもなく。
 そこに何があって、何がないのかははっきりしていた。

 ギラつく太陽は身を隠すものもなく、そのツラを堂々と晒している。
 
 雨雲どころか、白い雲すらない。
 どこかに隠れて、ただ黙って夜を待つ。
 それ以外に、あのナルシストな太陽を避ける手段はここにはなさそうだった。

 死の世界。
 ヤンガスラークも、あのままの状況が続けばこうなるのだ。
 その、少しだけ未来の世界がまさにここにあった。
 
 そうさせる訳にはいかない。
 雨乞いという、それはただの祈りでしかないが、それに込められた願いは真剣で切実なものだった。

 雨を乞うパワー。
 それはこの地のどこにも溢れて漏れ出している。
 目につくどれも適任で、だがより良いものがいくらでも見つかりそうでもあった。
 
 『雨乞い』のパワーアイテム、その少しでもいいものを探して。
 (PC名)はバイレーナ湿原跡に足を踏み入れ、その乾いた地面を歩き進んでいた。

 そこに現れた。
 
 そのものどもは、そこで待ち構えていたのか。
 あるいはただ、動けなかっただけかもしれないが。
 
 それは風に舞う土埃の向こう側に、突如として浮かび上がった。

 渇いた体と心を満たすべく、怪物たちが牙を研いでいる。
 その目はこちらを、『水分』としか見ていない。
 
 それは、水を欲する『雨乞い』の力、まるでその権化のようだった

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
渇ききったものに遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
大日照りのバイレーナ湿原跡

 雨の降らなくなった土地で、彼らは命をつないできた。
 
 あらゆるものは水から生じた以上、それと縁を切ることはできない。
 僅かな水で命を永らえるものがいても、それとて時間の問題でしかない。
 結局の所、『水』なくして『命』はないのだ。

 バイレーナ湿原跡。
 雨の方からいきなり別れを告げられ、死を宣告された土地である。
 
 地上に残された水の取り合いは、短い期間で終わった。
 奪い合う、それそのものがなくては争いさえ起こらない。
 その意味においては、そこは世界で最も平和な場所だったのかもしれなかった。

 そこに争いを生んだのは(PC名)である。
 争いの種である『水』を持ち込んだのだ。奪い合いが起こるのは必然だった。
 
 それは直接、こちらを襲いに来たものたちだけではない。
 奪い合いはバイレーナ湿原に元々いた、彼ら同士の間でも起こっていた。

 直接対決に挑む前の予選と言ったところか。
 それに勝ち上がったものだけが、その権利を持ってこちらに襲いかかっていた。
 
 そうやって、(PC名)の周囲で起こった争いが範囲を広げていく。
 1つの争いが2つの争いを生み、2つの争いが4つを、4つが8つ、8つが16と。
 湿原跡全体へと、戦禍が野放図に拡大していっていた。

 その全ては、水を求めてのものである。
 善悪ではない、純粋な欲求。ただ渇きを癒やしたいという願いだった。
 
 (PC名)を中心に、その強い願いが渦を巻いていく。
 それはさながら蠱毒の壺のように、水を望む『雨乞い』の力が他全てを駆逐淘汰しながら一処に集まろうとしていた。

 そして、気がついたときにはすでに、黒い雲が太陽を隠していた。

イベントマップ『大日照りのバイレーナ湿原跡』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

雨乞い儀式のつくりかた

 バイレーナ湿原跡で行われていた、『雨乞い』のパワーアイテム集め。
 その間も、ヤンガスラーク村では雨乞いの正解探しのために儀式は続いていた。

 巫女総選挙の勝者ロクサーヌ・アイリーン。
 とある条件を満たす十六名の候補から選ばれた彼女は、神のお告げを聞くべく眠った。
 
 そして三日目、彼女は夢を見た。
 夢の中では二人の男が自分を取り合っていた。
 私のために争わないで、とロクサーヌが涙を流す。そこで、空もつられて泣いていた。

 その状況を再現している、そんな状態の村に(PC名)は戻った。
 パワーアイテムとして、適当に見つけた何かの骨を携えて。
 
 『雨乞い』の力を集め、蠱毒の王となった(PC名)。
 その帰路にわずかに遅れて、黒い雨雲がゆっくりと村に近づいてきていた。
 
 雨男や雨女などと呼ばれる存在となって、村に帰還したのだ。

 儀式に夢中になっていた彼らは、いまだ南の空から近づく雨雲に気づいていない。
 
 帰ってきた(PC名)から『謎の乾いた骨』を受け取り、若い巫女がそれを持ってコンテンポラリーに踊っている。
 二人のガタイのいい男たちは殴り合いをしている。
 周囲では、その彼らを煽るように『雨恋ダンス』を村人たち総出で踊っていた。
 
 そこで誰かが気づいた。南の空を指さして、そして大声を上げる。

「あ、あれ! 雲! 雲だ! 雨だ!」
 巫女が踊るのをやめ、二人の男も拳を止め。
 それを見守っていた村人たちも、全員が動きを止めて空を見上げた。
 
 ミーアキャットのように、ずらっと並んで立って一方向を見つめている。
 黒く染まった雨雲を見つめるその目には、早くも水が浮かんでいた。

 ぽたり、と一粒目が村に落ちる。
 それは巫女の頬を伝い口元にこぼれ、喉へと落ちていった。
 
 ついに雨乞いの儀式が完成した、その瞬間だった。

 どれだけ降り続けるのか。まとまった雨になるのか、そしてこの後も続くのか。
 
 『梅雨』は来たのか。
 
 そういったつまらない疑問は、誰の頭にもなかった。
 ただ、雨に対して、水に対しての歓喜と感謝が爆発していた。

 雨が降り、雨乞いは成った。
 それが全てであり、それだけ分かっていれば充分である。
 
 ただし、同時進行で色々やったがゆえ、果たしてどれが正解の『雨乞い』だったのか。
 今後の雨乞いの儀式の継承に向け、その吟味が問題だった。

 別の意味でお祭り状態になったヤンガスラーク。
 (PC名)は、充分に雨が降り終えるまではと決め、しばらく滞在することにした。

ミッション『雨乞い儀式のつくりかた』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『渇水丹』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
雨乞い儀式のつくりかた
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『雨乞師』が修得可能になった

炎櫓と盆踊り

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:炎櫓と盆踊り』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は8/14(水)~8/31(土)までです
炎櫓と盆踊り
 ここは魂たちの世界である。
 肉体を模倣し、その記憶にすがり、真似事を続けている。

 それでも死を悼み、死者を弔う。
 たとえ自らが死者であったとしても、だ。
 
 どのような世界においても死は、別れは、やはり悲しく辛いものだからである。

 真夏の暑いこの時期、『お盆』と呼ばれる期間がこの町にはある。
 
 『焔立つザカラスト』。そのような二つ名を持つ町である。
 町の規模としてはそこそこで、いくつかの産業が存在していた。
 有名なものは、林業と炭作りである。

 『お盆』期間中、この町では『炎』を燃やす。
 広場の中心に櫓を組み、それに火を付けるのである。
 櫓は高さ十メートルを超え、その炎は更にそれを大きく上回る高さまで上る。
 
 そしてその炎を、朝昼晩、一時も絶えることなく燃やし続けるのだ。
 それは、蝋燭の火を灯し続けるなど、精神論に近い話ではない。
 櫓を燃やす、その大きさの炎を維持し続けるのだから、かなりの体力勝負だった。

 櫓は十日十晩に渡って燃やし続けられる。
 この儀式の一番の敵、それはすなわち、雨である。
 
 ただし、多少の雨であれば問題ない。
 それほどまでに巨大な炎を燃やし続けなければならないからである。

 だが、多少でなければ、やはり問題である。
 大きな雨雲を連れた嵐が、南の空から近づいてきていた。
 
 嵐はまっすぐにこちらへ向かってきており、このままではかなりの規模の暴風雨がこの街ザカラストを襲うことになるだろう。
 町を、そして炎を守るにはこの嵐の進路を変えるしかなかった。

 町の南にある丘に設置された『巨大風車』。
 これを回して嵐と正面衝突させ、その進路を変えさせるのだという。
 
 ただ、嵐と距離を持って効果を生むのは難しく、嵐の直撃の中で耐えねばならない。
 耐えて、吹き飛ばす。その間、風車を守って欲しいのだ。

 嵐の中には何がいるか分からない。
 嵐を糧とし、ともに生き、歩み、その恵みを受けるものたち。
 
 それらから、町と炎と、そして風車を守り抜くのである。

『マップ:『焔立つザカラスト』南の丘』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
『焔立つザカラスト』南の丘
 『焔立つザカラスト』。
 その二つ名を冠するのには、二つの理由がある。
 
 炎と熱狂。その二つが町を飲み込み、熱く真っ赤に燃え上がらせていた。

 町にある広場のど真ん中に組み上げられた櫓。
 単純な機構で、10メートルほどの高さを維持するだけの強度はあるが、それ以上の余計な柱も飾りもない。
 
 炎をつけて燃やす。燃えた後は炭と灰になり、それ以外には何も残らない。
 そのために作られたものであリ、それ以外の機能は必要なかった。
 
 よく燃える。すぐ燃える。それだけが櫓に求められたことだった。

 『お盆』初日。その朝。
 松明から火をつけられた櫓が、あっという間にその全身を炎に包まれる。
 
 炎は足元からてっぺんまで一気に駆け上り、白い雲を炙るように高く揺れていた。

 ここから十日十晩、櫓の炎を維持し続けなければならない。
 
 櫓を組んだ木材には、火がつきやすく、かつその火が長持ちするものが選ばれる。
 それをさらに加工することで、それぞれの特徴を伸ばしているのだ。
 
 だがそれでも、十日間に渡って燃え続けるなどありえない。
 定期的に『燃料』を補給してやる必要があった。

 それを続けても、やはり足りないのだ。
 炎を消しかねない、強い力と悪意を持った存在が近づいていた。
 
 町から南の方角を見やる。
 なだらかな丘が続く、その向こうに黒雲と巨大な風の渦が姿を見せていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
嵐を呼ぶ櫓

 丘に立つ巨大風車。
 それには『嵐晴』という名がつけられている。
 
 それは風を受けて回りエネルギーを生む、と言う代物ではない。
 エネルギーを消費して自ら羽根を回すというものだった。

 南の空から迫りくる、巨大な渦。
 それが視認できるのは、地上から巻き上げた土や水などが舞っているからである。
 
 縦に長い独楽のような形で、その頂点は空まで届いていた。
 真上の空には分厚い黒い雲が、嵐の渦に付き従うように浮かんでいる。
 
 自重によってそのまま地上に落ちてきそうな、いかにも重そうな雲だった。

 巨大な嵐が丘を駆け上がってくる。
 
 ザカラストで立ち上る巨大な櫓の炎、その色と熱に誘われているのか。
 その進路はまっすぐに逸れることなく町を目指していた。

 その間に立ちふさがるように、巨大風車『嵐晴』が待ち構えている。
 それは昔からこの丘に立つ、守り神のような存在だった。
 
 いつ誰が作ったのか分かってはいない。
 ザカラストの住人、誰に聞いても自分が生まれたときにはすでにあったと答えるのだ。
 町の成立時にはすでにあり、それからずっとここで戦ってきたのだった。

 だが、そんなことは知らないと、関係ないと。
 雨雲を引き連れた嵐が、進路にある地上の全てを薙ぎ払いながら近づいてきていた。

  • フェイズ3
嵐の中で輝いて
 嵐の渦の一番端、『暴風圏』の内側に風車が飲み込まれる。
 ついにここまで嵐が、雨雲が迫っていた。
 
 だがそれは、向こうにだけ有利な状況ではない。
 こちらにとっても、巨大風車『嵐晴』にとってもそれは『射程圏』だった。

 満を持して、風車の羽根が動き出す。
 そのエネルギーが、人々の想いも乗せて地下ケーブルで町から運ばれてきていた。
 
 ぎりぎりとネジを巻いていくように、嵐の回転とは逆方向に回る風車。
 生まれる風もまた、逆回転だった。
 
 嵐に立ち向かう逆風は徐々に強くなっていく。
 それを守るため、(PC名)は戦うのだった。

 嵐の中に、風車を含めた丘の大部分が包まれる。
 その境界線は壁のように、外の景色を覆い隠してしまっていた。
 
 中で蠢く怪物たちは、嵐を糧とするもの。
 そして、嵐が飲み込み噛み砕いた、その『おこぼれ』を啜るもの。
 
 そういったものたちで溢れていた。

 風車が回り、嵐のスピードが僅かに落ちる。
 だが、まだその力は足りない。速度が落ちるだけで、時間がかかるだけで嵐と雨雲が町に向かっている事実に変化はなかった。
 
 それは風車自身も理解している。
 そして、これがまだ自身の限界ではないということも分かっていた。

 限界まで、限界を超えて、さらに向こうへ。
 
 風車に供給されるエネルギーはまだまだ町から送られ続けている。
 速度を上げる、パワーを上げる。逆風は強くなっていく。

 この風車を守り抜く。そうすれば、希望は見えようといていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
嵐の中の暴れん坊に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
『焔立つザカラスト』南の丘

 唸りを上げて、前には進まない巨大風車『嵐晴』。
 その場から動けない代わりに、高速回転する4枚の羽根で生み出す全ての推進力をこちらを飲み込もうとしている嵐へとぶつけていた。

 まともにぶつかり合う、逆向きに巻く風と風。
 その対決は分かりやすく、誤魔化しが効かない。
 
 単純なパワー勝負だった。

 真っ直ぐに、思うがままにここまで進んできた嵐。
 だが、その足がついに止まる。『嵐晴』の生み出すパワーが嵐のそれを上回っていた。
 
 風車の羽根が回転する方向へと、嵐の進路をいなしていく。
 丘を取り囲む嵐の渦の壁の横方向への移動が、それをはっきりと物語っていた。

 嵐の中でそれを糧としていた生き物たちも、それに追随して移動していく。
 彼らにとっては風車を攻撃することよりも、嵐の中に居続ける事が重要だった。
 
 嵐の進路から外れるならば、攻撃対象からも外れる。
 それに執着を持つものはいない。
 執着はむしろ風車や町にではなく、自らの世界である『嵐』にこそあるようだった。

 嵐の中でしか生きていけない。それ以外の生き方を知らない
 そのおこぼれを拾うことでしか、その生を継続することは不可能だった。
 
 そして嵐の『暴風圏』からついに、風車が外れた。
 その渦の中から抜け出す。外の世界は平和そのものだった。

 壁のように立ちふさがっていた渦がなくなり、外の景色が久方ぶりに顕になる。
 
 振り向けば、ザカラストの町にはこの丘からでも十二分に櫓の炎が見えた。
 炎は変わらず、嵐に負けることなくその勢いを保っていた。
 
 町からでも、嵐の進路が変わったことが見えていたのか。
 櫓の炎が僅かに大きく膨れ上がり、それに合わせて歓声が上がっていた。

 町からは歓声だけでなく、トントントン、と太鼓の音も鳴り始めていた。

イベントマップ『『焔立つザカラスト』南の丘』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

炎櫓と盆踊り
 嵐は去り、雨雲も去った。天気予報によれば、今後はしばらく『ハレ』が続くという。

 巨大な炎を作り上げる、広場に組まれた櫓。
 これを十日十晩、この町に住む多くの人々の力を結集して燃やし続けた。
 
 たとえ消えても種火から移せばセーフだとか、3秒以内なら再点火でセーフだとか。
 そんな独自の救済ルールなどはない。絶対に消してはならなかった。

 その炎は、ただ消さなければ良いというものでもない。
 櫓を包む、高さ十メートル以上の炎の柱の大きさも保たねばならないのだ。
 
 そのためには、燃える『櫓』を燃え尽きさせることなく残さなければならない。
 灰にすることなく、その前に倒れてしまってもいけない。
 燃やしながら、その形を維持すること。それはとても困難なミッションだった。

 十日間燃え続けるために、燃料となる木材をどんどん投入する。
 その方法は、炎の強さそのものを保つために薪を投げ込むだけでなく。
 燃えている櫓をその状態のまま、倒壊しないように新たな木材で補強していくのだ。
 
 炎の中で行われるその作業はもはや職人技を通り越して、神業に近いものがある。
 この儀式は伝統文化であり、それを作り上げるものは伝統技術の粋だった。

 太鼓の音が、櫓のある広場にリズミカルに響き渡る。
 巨大な焔が立ち上る櫓の周りに浴衣姿の人々が集まり、歩きながら踊っていた。
 
 流石に『櫓』からは距離をとっているが、その周囲を踊りながら回っている。
 大人も子供も混ざって踊る、その数は軽く100人を超えていた。
 
 この踊りもまた、炎と同様に死者への手向けになるものだった。

 踊りについては十日も続けたりはしない。今夜だけのものである。
 十日十晩『炎櫓』が続いた最後の夜に行われる『盆踊り』だった。
 
 楽しげに踊る、その真ん中で櫓が燃えている。
 その炎に照らされた人々の顔は、笑顔と安らぎに満ち溢れていた。

 太鼓の音とともに、甘い匂いが柔らかな風に乗って広場を漂っていた。
 それは櫓から流れてくる。
 
 皆が櫓の根本に置いた、バナナやらリンゴやらイモやらが焼けた匂いだった。

 聖なる炎で焼いた、聖なる供物である。
 そのような感覚が、彼らにあるかどうかは不明だが。
 
 子どもたちを中心によく焼けたそれらを美味しそうに頬張りながら、『お盆』最後の夜を太鼓のリズムで踊り続けていた。

ミッション『炎櫓と盆踊り』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
炎櫓と盆踊り
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

すべてが菌になる

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:すべてが菌になる』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は10/2(水)~10/19(土)までです
すべてが菌になる

 『キノコの村』。
 それはこの村の正式な名前ではない。
 だがそのような名で当たり前に呼ばれるほど、この村はキノコに溢れていた。

 隣接する里山は美しく管理され、ここで多くの種類の天然キノコが採れる。
 さらには村の中でも栽培しており、『キノコの村』の名に恥じない生産量を誇る。
 
 これらは村人たちの主食となる食材であり。
 来客があった際の、おもてなしやお土産として使われる名産品でもあった。

 いよいよ本格的に、村の名前を『キノコの村』に改名しようか。
 そんな言葉が囁かれるようになっていた。
 
 その矢先。
 最初の異変は、長老の体に起こっていた。

 彼は村の最年長者である。
 
 キノコ栽培においてこの村で右に出る者はおらず、みなの尊敬を集めていた。
 それだけに、誰もそれを口に出すことができなかったのだ。

 頭にキノコ、生えてますよ、と。

 頭のキノコはあっという間に成長し、彼自身をキノコそのものにしてしまった。
 
 長老の家、彼の布団ですやすや眠る巨大キノコ。
 寝返りをうつその姿を発見した時、村人は事態の深刻さを知った。
 
 頭のキノコを放置すればそうなると。
 だがそれに気づいたときには、村人の多くの頭にもキノコが生えていた。

 異変は人にのみ起こったわけではなかった。
 それは村全体を襲っており、その影響が形として始めに出たのがそれだった。
 
 家の屋根や飼い犬の頭、校庭の銅像に神社の灯籠など。
 村のあらゆる場所に、キノコがポコポコと生え始めていた。

 原因は村を覆う胞子。おそらくそれだと結論付けられた。
 ならばその大本は、村の直ぐ側にある『キノコの里山』しかありえなかった。
 
 キノコの収穫シーズンを迎えた里山に一体何が起こっているのか。
 村がキノコになる前に、調査と解決をお願いしたい。

『マップ:胞子舞う『キノコの里山』』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
胞子舞う『キノコの里山』

 ぱにょん。ぴにょん。ぷにょん。ぺにょん。ぽにょん。
 巨大キノコが跳ねている。それを擬音にするなら、そんな感じだった。

 どこかのテーマパークにでも遊びに来たような気分になる。
 村の危機という話だったが、それを見るとどうにもそれを感じることは難しかった。
 
 カラフルなキノコの家が並び、道をキノコがぴょんぴょん跳ねながら歩いている。
 村全体に薄いモヤのようなものがかかり、それが幻想的な雰囲気をより強くしていた。

 だがそのモヤはキノコの胞子であり、この現象の原因と思われるものだった。

 村の中を歩いているのは、キノコの姿と人の姿が半々ほどか。
 
 キノコは人より一回りほど大きく、道を普通に立ち幅跳びの要領で進んでいる。
 ただし、飛距離は全く出ないためその進みはひどく遅かった。
 
 そしてそれらとともに歩いている人々の頭にも、大小様々なキノコが生えていた。

 跳ね歩く巨大キノコ。
 その横や後ろ、あるいはすれ違いながらも他の村人は普通に生活を続けていた。
 
 頭にキノコを生やしているとは言え、彼らはまだキノコではない。
 にも関わらず、キノコになってしまった人々の存在にも違和感なく接している。
 
 こうなってからそれなりの時間が立ち、なんとなく状況に順応しているようだった。

 人とキノコとか混在し、共存しているようにも見える。
 だが実態はそうではない。
 
 キノコを頭にはやした人々も、いずれすべてキノコになるのだ。
 それはただ順番であり、時間の問題でしかない。

 キノコの胞子舞う村。
 ここにはキノコと、いずれキノコになるものの二種類しか存在していなかった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
朝礼台に立つキノコ

 公園にある朝礼台。
 その名の通り朝礼をしたり、お祭りや式典での挨拶などに使われる。
 
 そして今その壇上にいるのは、元長老キノコだった。

 にょんにょんと。ゆったりと上下に揺れている。
 何をするというわけでもなく、その巨大キノコは朝礼台でただただ揺れていた。
 
 だが、そこに頭に大きめのキノコを乗せた老人たちがぞろぞろと集まってくる。
 朝礼台のキノコに向かい、間隔を開けて整列して。
 腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動を始めていた。

 これが彼の、長老がキノコになる前から続いている毎朝の日課らしかった。
 
 最初に、彼の頭の天辺にニョキッとキノコが生えてきた。
 アクセサリーか何かかと、急に長老がなにかつけ始めたぞと。
 そんなことを皆が考えている間に、それはニョキニョキと成長していった。
 
 アクセサリーが帽子になり、頭部を覆うマスクになり、体全体を隠すキグルミになり。
 そして彼はキノコになったのだった。

 もっと早くに伝えていれば。指摘していれば。
 キノコに最も詳しい彼だけに、なにか治療法や打開策を出せたかも知れなかった。
 
 だが後悔しても、時は戻らない。
 彼がそれを口にすることはないまま、彼自身をキノコにしてしまったのだ。

 元長老キノコは今も、昔の暮らしを続けている。
 キノコになった後も。人の姿を失った後も。
 
 そして今、新たに体操老人が一人、キノコになって踊りを続けていた。

  • フェイズ3
里山に立つキノコ

 キノコの里山。
 村に隣接し、間伐などきちんと手入れされている山である。

 モヤのように、村を覆っていた胞子はここではさらに濃い。
 村でのことがなくても、あまり気持ちよく吸い込めるものではなかった。
 
 口や鼻を手で覆ったり、呼吸を浅くしたり。
 喉の違和感はおそらく、ここを離れるまで消えることはなさそうだった。

 山を歩くと、そこかしこに様々な種類のキノコが生えている。
 枯れ葉が敷き詰められた地面や、木々の幹や枝などからである。
 
 それらが村と同様のものなのか、あるいは単にこういう生育環境なだけか。
 遭遇した獣なども頭にキノコを生やしていたが、あれは少なくとも同じだろう。
 いずれ、どのくらいの時間がかかるかは分からないが近いうちに、全身が巨大キノコとなって山を歩くことになりそうだった。

 このような光景を見ていると、どうしても自身の頭頂部が気になってしまう。
 何度か頭に手をやっては安堵する、という行為を繰り返していた。
 
 そんな心休まらない行軍が、唐突に終わりを告げる。
 里山はきちんと管理されている上に、高さも大きさも大したことはない。
 さほどの時間も労力も必要とせず、(PC名)はそこにたどり着いていた。

 それが目的のものかどうか、それはまだ分からない。
 だが少なくとも、このまま放置しておいていいものではないことは明らかだった。
 
 その白いキノコの体は大きく、見上げるほどの高さがあった。
 周囲の木々にも負けていない太さの柄が伸び、先についた頭はそれほど大きくはない。
 柄の直径とほぼ同程度の球体が、わずかに茶色く染まって乗っかっていた。

 その頭が、割れている。
 
 パイの包み焼きを破いたときのように。
 頭の一部がベリと破け、そこから大量の胞子を吐き出していた。

 そしてその周りには、守護者の姿がいくつもあった。
 キノコそのもの、キノコになりつつあるもの、小さなキノコを頭に生やしただけのもの。
 
 様々だったが、その意識は一つに統一されている。
 あの胞子を撒き散らす巨大キノコを守る。そのために、彼らはここに集結していた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
キノコノ子に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
胞子舞う『キノコの里山』

 まるで呼吸でもするように、割れた頭から定期的に胞子を吐き出す。
 
 ぼふぉー。ぼふぉー。と。
 やや茶色ぎみの粉末の塊が飛び出て、それが風に煽られて拡散していた。

 これをどれだけ繰り返せば、この山、そして村を胞子で覆いつくせるのか。
 それは涙ぐましい回数を思わせるが、かと言って見過ごすことはできない。
 
 山を、村を、キノコまみれにさせるわけにはいかないのだ。
 その思いは(PC名)だけのものではない。
 いや、間違いなくより強い思いを持っているのが、『キノコの村』の彼らだった。

「火だ! 火を持ってこい!」
 (PC名)の到着から少し遅れて、彼らもここに集まってきていた。
 頭の上に小さめのキノコを生やした村の若者達である。
 
 キノコが生えてからキノコになるまで、老人のほうがそのスピードが早いらしく。
 若者たちのその殆どは、未だ動くことができていた。
 そして彼らもまた、人任せにすることなく里山に入ってきていたのだ。

「モンスター相手なら、オレたちに出番はないけどな」
「相手がキノコだってんなら慣れたもんさ」
 自信に満ちた表情で、リーダー格の男が言ってくる。
 頭につけた巨大エリンギも、堂々とした態度で雄々しくそそり立っていた。
 
 キノコに寄生された護衛は倒れ、胞子を吐き続ける巨大キノコへの道は開いた。
 後は自分たちの仕事だと、彼らは武器を手に進もうとしていた。

「さあ。行こうか! キノコ狩りだ!」
 後ろにいる男たちに号令を下す。
 彼らは火をつけた矢を弓につがえ、胞子を吹く巨大キノコに向かって一斉に撃ち放った。
 
 切り開かれた里山を赤い炎が弧を描き、巨大キノコに降り注ぐ。
 そのうちの一つが破れた頭の中に飛び込み、しばらく間をおいて胞子を吐くタイミングで黒い煙をぼふぉっと吐き出していた。

「突撃ぃ!」
 次の合図でみな弓を捨て、腰に下げていた小型の斧を手にする。
 使い込まれたその斧は、木やキノコを切り倒すのにいつも使っているものだった。
 
 襲いかかる。すでにそれを守るものはいなかった。
 黒い煙を吐く巨大キノコを男たちは取り囲み、その根本に斧を突き立てていた。
イベントマップ『胞子舞う『キノコの里山』』をクリア!

イベントマップ『胞子舞う『キノコの里山』』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

すべてが菌になる
 えっさーほいさーえっさーほいさー。
 
 細い丸太に巨大キノコを縛りつけ、村の若者達はそれを担いで山を降りる。
 その時の掛け声が、それだった。

 処分のために完全に焼き尽くす必要があったが、山でやるには危険である。
 巨大キノコを根こそぎ引き剥がし、村へと持ち帰るべく運んでいた。
 
 道中、山歩きの振動でポロポロと若者たちの頭からキノコが落ちる。
 本人たちはまだそれに気づいていない。
 そして、新たに次のキノコが生えてくることはなかった。

 巨大キノコを担いだ彼らと(PC名)が村に帰り着いた頃。
 村を覆っていた胞子のモヤは、供給を絶たれたことですでに晴れていた。
 
 家々を包み込んでいたキノコハウスはシナシナにしおれている。
 後であれを一つ一つ剥がしていくのは、なかなかに手間そうだった。

 このキノコ騒動の犯人である巨大キノコが運ばれたのは公園だった。
 朝礼台に立った元長老キノコがうねうね動く前で、それに火がつけられる。
 水分が多いせいか少し時間がかかったが、腹が鳴りそうになるほどいい香りでこんがり焼けていった。
 
 焼却処分の予定だったが、そのあまりに芳しい香りのせいで。
 急遽開かれた会議によって、そのキノコは皆で食べることが決まったようだった。

 その焼き上がりに、待ちかねた村人たちから歓声が上がる。
 彼にもその匂いが届いたのか。あるいは歓声が心を揺さぶったのか。
 
 壇上の元長老キノコの頭が、ぺりっと割れた。
 十字に入った切れ込みから、タバコを吹かすように胞子の煙を吐き出す。
 
 その勢いでキノコの頭が完全に破れ、その薄い皮が四方にばっと広がった。

 スモークを焚いて現れるスーパースターのように。
 胞子の煙が風に消えたそこに、何やら妙に肌艶のいい裸の老人が立っていた。
 
 キノコの頭が破れて広がり、残った柄の部分に下半身を隠している。
 かなり体温が上がっているのか、煙が消えてからも全身から水蒸気が立ち上っていた。

「ワシはこの村の長老にしてキノコであった。一つであり全てであった」
「ただキノコ体操の完成を願い、それに邁進していた。気がする」
 キノコ時代を振り返りながら、ポツポツと裸で話し始める長老。
 
 ただ、すでに焼けたキノコに皆はがっつき始めており。
 彼の話をきちんと聞いているものは皆無と言ってよかった。

「ものすごい画期的な体操を完成させたという確信だけがあるが……」
「それがどういうものだったかを全く思い出せん」
 そんな夢のような話を、テカテカの老人は真面目な顔で呟いていた。

ミッション『すべてが菌になる』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『よく焼けた首長待茸』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
すべてが菌になる
イベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『きのこ』が修得可能になった

厳冬支度大騒動

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート

『時限ミッション:厳冬支度大騒動』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は11/20(水)~12/14(土)までです

厳冬支度大騒動

 冬の訪れとともに、山は雪に覆われ眠りにつく。
 
 すでに山頂付近に至ってはひと足早く降った雪を乗せ、山全体が白い帽子をかぶったようになっていた。

 約束された春を待つ。
 待つしかないが、同時に何はなくとも時間が解決はしてくれる。
 
 頭を低くして嵐が通り過ぎるのを待つのだ。
 それは現実的に見て、あらゆる場合においても悪い手段ではなかった。

 この山の西側の斜面を少し登ったあたりに、ラングヒェルト村がある。
 それはマタギたちの村で、彼らは狩猟を生業としている。
 山に住む鳥獣を鉄砲を使って狩り、食ったり売ったりして暮らしていた。
 
 彼らは猟師であると同時に、鉄砲を自作する鉄砲鍛冶でもある。
 山での狩猟が可能な期間は狩りを、それが難しい季節になれば鉄砲の製造と販売を。
 村はその二本柱で、生計を成り立たせていた。

 そんな折、山と村にあるニュースが流れた。
 今年の冬はかなり厳しいものとなるだろう、と。
 
 気温は例年を大きく下回り、降雪は倍以上となる。
 また春の訪れも遅く、長い長い冬になる見込みだった。
 
 まさに、『厳冬』である。

 厳冬を前にして、山は平静を失いつつあった。
 冬をやり過ごすための寝床の確保、食料の準備、そして体作り。
 それは通常の冬眠準備でもあるのだが、その速さと規模が異常なものになっていた。
 
 『嵐の前の静けさ』ならぬ、『静けさの前の嵐』とでも言うのか。
 雪に覆われる冬眠を控えた山は今、『嵐』の真っ只中だった。

 ただしそれは、ラングヒェルト村を除いての話である。
 彼らの準備はニュースを聞いても変わらず、例年通りの冬支度を行っていた。
 
 猟師から鉄砲鍛冶へと切り替える、その時期が多少早まる程度のことだ。
 だが、山全体を包む嵐にマタギたちの村も巻き込まれようとしていた。
 
 狩る側から狩られる側へ、などと劇的なものではないが危機は確か迫っていた。

 狂騒に熱を帯び始めた、厳冬を迎えようとしている山。
 冬眠前の獣たちに目をつけられたラングヒェルト村を、彼らの手から救い出すのだ。

『マップ:冬眠迫るフォーガント山』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
冬眠迫るフォーガント山

 白い帽子をかぶったフォーガント山。
 その西側の麓に、ラングヒェルト村はあった。

 村の殆どの人は狩猟と鉄砲鍛冶を生業としている。
 だがマタギである彼らとしては、狩猟を主としていきたいという思いがある。
 年中猟ができれば、それが一番いいというのが多くの村人の意見だった。
 
 だがこのあたりの冬は、今年でなくとも厳しく雪深い。
 本格的な冬の訪れにより山が雪に閉ざされれば、春まで猟に出ないのが村の決まりごとだった。

 どうしても狩猟が無理な季節のみ、仕方無しに鉄砲鍛冶を行っているのだ。
 
 とはいえ、彼らの商売道具である鉄砲の手入れや新調などは結局は必要である。
 それは副業という意味合いだけでなく、真冬に行われるその期間は春から新たに始まる大事な狩猟の準備でもあった。

 そんなラングヒェルト村は、冬支度をのんびりと始めていた。
 
 狩猟によって得た肉や果物、村の小さな畑で作った野菜などで保存食を作っている。
 天日干し、塩漬け、砂糖漬け。そして燻製など。
 服や毛布になる毛皮作りも並行しながら、わいわいと準備が進んでいた。

 そこには危機感はあまりない。
 迫りくる冬に対するものも、同じく冬支度を始めた獣たちへのものも。
 
 毎年のことだと軽く見ているのか、マタギとしての自信か。
 子供たちが外で自由に遊び回っている程度には、村は平和そのものだった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
実りの秋の奪い合い

 だが、村を出れば雰囲気が変わる。
 
 フォーガント山は、今まさに奪い奪われる戦いの最中にあり。
 その手は徐々に、ラングヒェルト村にも迫っていた。

 厳冬が近い、とはいえ未だ季節は『実りの秋』である。
 樹々は紅葉し、木の実や果実が樹上に成っていたり熟して落ちたりしていた。
 
 酷暑の夏と厳寒の冬。
 その隙間となる短い期間ではあるが、食料も豊富な過ごしやすい日々が続いていた。

 それらは山の動物達の腹を満たすのに充分な量があるはずだった。
 需要と供給のバランスは、年によって多少のズレはあってもある程度取れているのだ。
 だがそれには、普通に過ごせば、腹を満たすだけに留めればと言う注釈がつく。
 
 それぞれが過剰に肥え太り、過剰に巣穴に溜め込んでしまえば。
 途端に山は、深刻な食糧不足に陥ってしまうことになるのだった。

 キノコや木の実、果物などはまず最初になくなった。
 無防備にその身を晒し、食べられること自体を生存戦略の一つとしている。
 そういったものから順に採り尽くされていった。
 
 そうなれば次は、命の奪い合いとなる。
 弱者が倒れ、強者の糧となっていく。そして淘汰されていく。

 その最後に待っているのは、強者同士の潰し合いだった。

  • フェイズ3
眠りの冬の潰し合い

 この山における最大の強者。
 それはラングヒェルト村のマタギたちである。

 彼らは鉄砲という武器だけでなく、罠や犬なども用いる。
 普通であれば、なかなか太刀打ちはできない。特別に強力な個体でもなければ、争うことなく避けて通るものだった。
 
 だから村が巻き込まれる事態となれば、それはいよいよということである。
 フェイズとしては最終段階。
 だがそこへと至る速度はあまりに早く、山全体がヒステリックな空気に包まれていた。

 悪いニュースが冷静さを失わせ、過剰な準備を行わせている。
 
 見れば明らかに、太り過ぎのものや溜め込み過ぎのものが多く目立った。
 これで足りる、充分であるという目安がないのだ。
 まるでチキンレースのように、ゴールが見えないまま走り続けていた。

 村に多くの食料が溜め込まれていることは周知の事実だった。
 場合によっては、温かい寝床も同時に手に入る。
 
 完全に奪い取ってしまえば、そこで一冬を過ごすこともできそうだった。

 空をトンビが飛んでいる。油揚げを掻っ攫うのが彼らの得意技だ。
 だが今は、見張りとしての役割をまっとうしようとしている。
 少しばかりの食料、それと引き換えに得た彼らの仕事だった。
 
 空をトンビが、地上をネズミが。
 賢く強者から役割を与えられた者たちが飛び走っていた。

 村の様子、人数、配置、全てが筒抜けだった。
 マタギの村を落とす。そのために、冬眠前の獣たちが手を組み動いていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
冬支度のけものに遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
冬眠迫るフォーガント山

 もはやフォーガント山に残された食料は少ない。
 冬ごもりの準備を進める彼ら自身、互いの命を奪い合うぐらいしかなかった。

 その選択肢もありえた。そうしたものもいたろう。
 だが、ここに集まっている獣たちは少なくとも、それを選ばなかった。
 
 厳しい冬が待つ、この切羽詰まった中で。
 一方的に狩られるだけだったマタギたちを倒し、その食料を奪うことを選んだのだ。

 しかし冬の訪れは、そんな彼らの予想を遥かに上回る速さでやってきていた。
 
 雲が空を覆って太陽を隠すと、それだけで一気に気温が下がっていく。
 そしてその白い雲からは、ついに雪がパラパラと降り始めていた。

 山の頂上だけでなく、その麓に至るまであらゆる場所に雪が落ちてきていた。
 
 西側斜面にあるマタギたちの村、ラングヒェルトとて例外ではない。
 冬支度を進める村人たちの手が止まり、顔を上げる。
 雪を目にした子供や犬たちが、早くも声を上げてはしゃぎ回っていた。

 雪の質は軽く、いわゆるパウダースノウというやつである。
 手のひらで受ければ、その瞬間にすっと溶けて消える。
 
 おそらくこれは積もらない。もちろん、降り続ける時間にもよるだろうが。
 それでも前触れとして、『厳冬』を予感させるものとしては充分すぎるものだった。

 獣たちもまた、空を見上げる。
 同じような予感が、雪とともに彼らの胸にも到来していた。
 
 食料争いはここまで。冬を越すためには、他にもう一つ大事なものがある。
 それは一冬をやり過ごすための、寝床となる巣穴だった。
 
 形として穴に限らないが、地面を掘ったり木や岩にあいている穴を利用する事が多い。
 この巣穴は食料に比べ、争いにはなりにくい。
 それぞれのサイズや習性などによって自ずと使えるものが限られるからである。

 そして、もし先客がいれば、それを奪い取ることも簡単ではない。
 穴ぐらというものは基本的に、守ることに適した構造である。
 そもそも入り口を隠してしまえば、それを見つけることすら困難だった。
 
 つまるところ、寝床探しは基本的に早いもの勝ちということである。

 すでに決断の早いものは村を襲うのをやめ、山中へと消えた。
 
 ここで粘り、たとえ食料をいくつか手にできたとして、家なき子では冬は越せない。
 やけ食いして、この地を離れて暖かい地方へと移住でもする他なかった。
 
 正直なところ、その想像も悪いものではなかったが。

 それでも選択し、決断する。
 獣たちは今ある食料だけを手に、寝床を探しに山へと散っていった。
 
 そこでまた次の戦いが待っている。そこでは勝たねばならない。
 雪が強くなるなか、厳冬は間近に迫っていた。

 マタギたちとの戦いはまた来年。春の再戦を夢見て眠るのだった。

イベントマップ『冬眠迫るフォーガント山』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

厳冬支度大騒動

 紅葉した山に、白い雪が降る。
 季節外れ、というほどではないにせよ。まだ時期としては早すぎる降雪だった。

 紅と白のコントラスト。
 絵画としては美しいが、当事者としてはそうも言ってはいられない。
 
 冬支度を早めるべく、村はにわかに慌て始めていた。無論、大人のみが。

 ラングヒェルト村では犬と子供が走り回っている。
 
 ぐっと冷え込んできた気温に大人たちは顔をしかめるが、彼らには関係なかった。
 今年初めて村に降った雪に、そういう遺伝子でも備わっているのか、それをひと目見ただけで高いテンションで騒いでいた。

 村に迫っていた獣たちに対抗するため、村人の幾人かは銃を手にしていた。
 それを家に置く。今年の猟期は、これで本当に終わりである。
 この山では冬に猟はしない。それは決め事で、約束で、契約のようなものだった。
 
 食料としてはすでに充分な量を確保している。
 それに彼らは冬だからといって、完全に籠もってしまうわけではない。
 他の村から仕入れることは可能で、そのための鉄砲鍛冶でもあった。

 彼らは猟師であり、鉄砲鍛冶でもある。
 どちらが『金』になるかで言えば、圧倒的に後者だった。
 
 すでに鉄砲鍛冶として有名で、通年で製造を行えば安定した生活を送れるだろう。
 だが、そうはしない。あくまで、猟ができない間の一時凌ぎでしかなかった。

 それでも彼らの造る鉄砲が人気であることに変わりはない。
 むしろ供給数が少ないことで、プレミア感が付与されてしまっており。
 
 意識してそうしたわけではないが、それはそれで悪くない商売になっていた。

 フォーガント山、そしてラングヒェルト村に降り注ぐパウダースノウ。
 
 冬が来る。だが未だ山は、今度はねぐら争いに騒がしい。
 深い雪がそれを静かに沈めてしまうまで、まだもう少し、季節が進み気温が落ちる必要がありそうだった。

ミッション『厳冬支度大騒動』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『越冬大根』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『鍛冶マタギの鉄砲』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
厳冬支度大騒動
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

最終更新:2022年07月06日 15:39