限定イベントテキストまとめ その2


呪い桜は春に咲く

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:呪い桜は春に咲く』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は3/30(水)~4/16(土)までです
呪い桜は春に咲く
 桜を愛する街、ヨシノハラ。
 五本の特別な桜を巨大な五芒星の形に配し、その中に街が作られている。
 
 愛しているといえば聞こえはいいが、依存し、利用し、搾取している。
 桜の方もそれで納得しているならいいが、桜側の意思が表明されたことはかつてない。

 この街に、桜と花見をこよなく愛する男がいた。
 その男は常に我が身を守ってくれるようにと、自らの身体に桜を彫るまでだった。
 
 男の職業は裁判官、名前は遠山金五郎。
 右肩に桜吹雪の刺青を彫り、それを見せつけながらの『大桜裁き』が彼の裁判のクライマックスである。
 
 罪を裁いて人を裁かず。
 桜を肩に背負った男は名奉行と名高い、街の皆からの尊敬を集める男だった。

「そんな男が、今じゃ布団に体半分突っ込んで、庭の柿の木見つめる毎日さ」
「見てるこっちが気が滅入らぁ」
 やや額の上がり始めた中年の男。
 彼はどうやら名奉行、遠山金五郎の友人らしく、口ではこういう言い方だが、彼の心配をしているようだった。
 
「まるで魂が抜けちまったみたいに」
「あの刺青が、消えちまったから……」
 苦々しく、絞りだすように。
 まるで自分のことのように苦しみながら、男はつぶやいた。

 遠山金五郎、その右肩から背中にかけて、彼の代名詞とも言える桜吹雪の刺青が彫られていた。
 だが、今はそれが一部、欠けてしまっている。
 幾枚も描かれていた桜の花びらだけが、すっかりと抜け落ちてしまっていた。
 
「去年の花見さ。北を守ってる御神桜の前で宴会してたんだけどよ」
「あのバカ、酔っ払って小便をひっかけちまったのさ」
 額に手をおいて、頭を振る。
 そこには自身の後悔も含まれているようだった。

「で、呪われた。か、どうかは分からねえが、バチが当たったとしか思えねえ」
「次の日、あいつの刺青から桜吹雪が消えちまったのさ」
 桜以外の飾り模様などは全てそのままで、それだけが綺麗に消えてしまっていた。
 
「金の字、ひどく落ち込んじまってなあ」
「なんとか説得して一度は彫り直させたんだが、彫ってくそばから消えてくってんだ」
「そいつはもう、呪いに間違いねえだろうよ」

「だから、呪いを解いてもらおうと、北の御神桜のとこに行こうって話になったんだが」
 どこから流れたのか、悪いうわさが街に広まってしまった。
 桜に呪いをかけられた金五郎が、怒り狂って切り倒しに来るらしい、という噂である。
 
「家は常に監視され、桜の木の周りもガッチリ固められちまってる」
「あいつは謝りに行きてえだけだってのに」
 彼一人の力では、街中に広がったうわさ話をかき消すことはできない。
 こうやって、よそ者に話しをするのが精一杯だった。

「何の義理もねえが、漢と見込んで頼みてえ」
「金の字を御神桜の前まで連れて行く。その道を作っちゃあくれねえか」
 彼の言葉通り、義理はない。
 呪いの原因を考えれば、自業自得でもある。
 
 それでも、と頭を下げるこの男の頼みを聞くならば、向かうべき場所は一つ。
 町の北端に咲く、五本ある御神桜の一つ。その前である。

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
桜の町ヨシノハラ
 ヨシノハラに咲く桜は優に千を超える。
 千本桜、などと呼ばれることもあるが、実際にはもっと多いのだ。
 
 とはいえその殆どはいわゆる山桜であり、ピンクの綿菓子のようになるサクラとは違う。
 青や黄の葉が混じり、花の数もけして多くはない。
 だが、そこにはデザインされたものではなく、自然な美しさがあった。

 街を守護する五本の桜。
 北、西、東、そして南に横並びに二本。
 この五本の桜が五芒星をなし、その結界の内側に街が築かれている。
 
 直接的にどのようにして、また何から守っているのかは別として。
 少なくとも街の人々の心の平穏については、間違いなく彼らが守っていると言えた。

 それは巨大魔法陣の基礎としてだけでなく、様々な形で見ることができる。
 その花びらや新芽、あるいは葉などを特別な日の食用とし、落ち込んだ時は歌として口ずさむ。
 桜の木を建材とした家に住むことは、この街においては成功者の証である。
 
 そして、桜が最も美しく咲き誇る春。
 その姿を仰ぎ見ながら、友人や家族など皆で酒を飲み交わすのである。

 それ単体で見れば、他の桜とさほど大きな違いはなかった。
 背は高く枝は大きく張り出しているが、それは単に樹齢の差といえばそれまでである。
 神々しい、あるいは禍々しい、そのような雰囲気は全く無かった。
 
 北に咲く御神桜、タソガレという名の古代樹の正面に立つ。
 正面ではあるが、距離は遠い。
 たどり着くまでに、幾つかの障害が立ちふさがっていた。
  • フェイズ2(なし、探索可能)

  • フェイズ3
ブレイブチェリー
「おい、金五郎、しゃんとしろってんだ」
 『大桜裁き』の遠山金五郎。
 監視の目をかいくぐって彼をなんとか屋敷から連れだした男が、その彼に向かって声を荒らげる。
 
 金五郎は生気の抜けた顔で男に肩を預けたまま、投げられた言葉に対しての反応はなかった。

「誠意を見せるんだろ、別のもん見せちまったお詫びによ」
「ほれ。こっからはお前の足で歩け。それが誠意ってもんだろうよ」
 それでも反応の薄い金五郎の背中を掌でばちんと叩き、やや乱暴に突き放す。
 
 とんとんと二三歩たたらを踏み、そこで踏みとどまった。
 生気は戻らないが、その目に意思は宿る。
 
 顔を上げ、叱りつける母の顔を見るように。
 その目を御神桜タソガレに向けた。

「よくもまあ、のこのこと顔を出せたもんだなあ、遠山金五郎!」
 腕を組み、仁王立ちで待ち構える若い男。
 御神桜と(PC名)の間に立ち塞がり、こちら、というよりも金五郎を睨みつけていた。
 
 桃色のハッピにねじりハチマキ。そして背負った『祭』の黒一文字。
 それはお祭り男だった。

「この桜にてめえがやった仕打ち! 忘れたとは言わせねえぞ!」
 少し前、桜吹雪の刺青が消える前なら金五郎が言っていたようなセリフである。
 裁判所で上着を脱いで肩の桜吹雪を見せつけ、悪人どもに沙汰を言い渡す。
 だが彼は今その力も、桜吹雪も失ってしまった。
 
「今すぐ目の前から、いや、この街から消えな。遠山桜はもう枯れちまったのさ」
 酔っているかのように上気した頬と熱気のこもった瞳。
 だがどこか、このお祭り男は自身の意志ではない何かに操られているようにも見えた。

 お祭り男。そして、彼が加盟する桜保安連盟、通称『ブレイブチェリー』。
 桜と金五郎の間に、彼らと、そして(PC名)。
 
 眼前では御神桜に色づいた花びらが、何やら淡く怪しい光を放っていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
桜保安連盟に遭遇した!

  • フェイズ4
呪われしものども
 桜保安連盟『ブレイブチェリー』。
 彼らはこの街の住人、とりわけ若者で構成される。
 
 主な仕事はその名が示す通り、街に咲く千を超える桜の木の保安である。
 その対象は5本の御神桜だけでなく、すべての桜となるためその仕事量は膨大だった。
 
 若さゆえの情熱によって時折暴走しがちではあるが。
 それでも彼らは仕事をサボるようなことをせず、桜の保安に全力を傾けていた。

 それはひとえに、桜への愛がそうさせるのだろう。
 
 愛は尊く美しい。
 だが同時に醜く、浅ましい。

 この争いは美しさ故か、あるいは醜さ故か。
 だが、そもそも本当に愛なのか。それはそれで、大いに疑問ではある。

 北の御神桜タソガレは彼らを従え、その背後で優雅に咲き誇っていた。
 その花びらが淡い光を放ち、鼓動のようにゆっくりと明滅を繰り返している。
 
 神々しいのか禍々しいのか、どちらとも判断つかない。
 
 だが、その花びらと同じ色の光を放つ『ブレイブチェリー』の男たちの瞳。
 それについてははっきりと、邪なものを感じ取れた。

桜の町ヨシノハラ
「どけどけクソガキどもぉ!!」
 金五郎の親友が太い腕を振り回しながら、立ちふさがる男たちをなぎ倒していく。
 
 それは御神桜への道を(PC名)とともに作るというだけではなく。
 未だ心折れっぱなしの金五郎を勇気づける、という意味もあったのかもしれなかった。

 『ブレイブチェリー』が一人倒れるたび、花びらが一枚散っていく。
 御神桜が輝きを失っていく。
 
 それに呼応するかのように、金五郎の目には輝きが戻っていった。
 かつての鋭い眼光、とまではいかないが。
 少なくとも、御神桜をまともに見ることができる程度には力が戻っていた。

「世話んなったなぁ、銀次ぃ」
 いつぶりだろうか。
 彼の喉を震わせた最初の言葉は、親友に向けてのものだった。
 
「おう。まさか俺の方が、てめえの世話をする日がくるとはな」
 振り向かず。銀次と呼ばれた男は、横にいた男を殴り飛ばす。
 
 かつてはスリで鳴らした細腕も、金五郎の裁きによって汚れを綺麗に洗い流し。
 その後真面目に大工を続けたことで、今では太く立派に育っていた。

「……酒は飲んでも飲まれるな。格言てぇのはよくできてやがんなぁ」
 自嘲気味に。そして自身に戒めるように。
 金五郎はつぶやき、その微妙な表情を浮かべたままの顔を(PC名)に向けた。
 
 そのタイミングを見計らってか、まさにという瞬間に、
「そちらさんにも礼を言っとけよ」
 近場の若者を蹴り飛ばしながら軽口を飛ばしてくる銀次。
「分かってらぁ! 今しようとしてたところだろうがよ」
 と、応えた金五郎が声を張り上げる。
 目、そして声にも力が戻ってきているようだった。

「にしても、キリがねえな」
 もう何人目になるのか。殴り疲れていい加減嫌気が差した銀次がぼやく。
 
 男たちは桜を護るべく、懸命に戦っていた。
 彼ら自身、もはや誰から何を守っているかもよく分かっていない。
 花見の途中でアルコールが入っていることもあり、思考はほとんど停止状態に近かった。

「おい、金の字。そろそろ、遠山金五郎の『大桜裁き』の時間じゃあねえのか?」
 やや芝居じみた口調で、銀次から金五郎に声をかける。
 
 だが、金次郎は少し表情を沈ませ、
「何言ってやがる。俺の桜吹雪はもう……」
 言いよどむ、その沈んでいく言葉を遮るように、銀次は芝居を続ける。

「遠山桜は枯れねえさ。刺青がどうなろうが、そんなことは関係ねえ」
「おめえの桜吹雪を、『大桜裁き』を、あいつらに見せつけてやんだよ」
 親友からの発破。
 それに応えない、応えられない。遠山金五郎は、そんな男ではなかった。

イベントマップ『桜の町ヨシノハラ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

呪い桜は春に咲く
 御神桜の周囲に転がる『ブレイブチェリー』の面々。
 墓標に捧げられる花のように、散っていった花びらが彼らに降り積もっていた。
 
 まあ、彼らはただのびているだけだが。

「おうおうおう!」
 金五郎が自らを奮い立たせるように大声を張り上げる。
 
 その声に、辺りがしんと静まり返った。
 彼の声には、すべてのものを問答無用で押し黙らせる力があった。
 
「さっきから黙って見てりゃあ、好き勝手大暴れしやがって」
 仰々しくセリフを吐きながら、着物の肩をはだけさせる。
 そこには。
「てめえらの悪行、この見事に咲いた、遠山桜がぜーんぶお見通しでぃ!」
 桜吹雪の刺青が、僅かに数枚だがその花を見事に咲かせていた。

 御神桜から花が散っていく。
 その花びらが金五郎の肩に一枚落ちて、すっと溶けて消える。
 そこには桜吹雪が一枚、新たな刺青の花が一枚描かれていた。
 
「……確かに見事な遠山桜だぜ、金の字」
 何か神々しいものを見るかのような目で、金五郎の肩から背中に彫られた刺青を眺め見る。
 満開には遥かに遠い。僅かに数枚でしかない。
 
 だが、銀次の目にはそれはとても、素晴らしい物に映った。

 赦されたのか。あるいは単に呪いの力を使い果たしただけか。
 御神桜自身が語らない以上、真相は永遠に分からないだろう。

 だが、真相などにはもはや意味などない。
 遠山桜が咲いた。それが全てだった。

 だがそれに、金五郎自身が気づいていない。
 銀次も、周囲のまだ元気な『ブレイブチェリー』の連中も、みな名奉行の復活に気づいていた。
 もはやこの狂騒は終わりだと、理解していた。
 
 それでも金五郎は気づいていない。しかしもう気づく必要はなかった。
 たとえそこに桜吹雪は咲いていなくとも、彼の頭の中には大きな桜が満開だった。

「てめえらまとめて、この俺が裁いてやらぁ」
 肩の刺青を見せつけながら、何度も口から出してきたセリフを紡ぐ。
 
「打ち首獄門の上、市中引き回しの刑に処す!」
 久しぶりの沙汰に気合が入りすぎていたのか。
 閻魔大王も腰が引けるほどの、なかなかの地獄絵図な裁きだった。
ミッション『呪い桜は春に咲く』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『お花見五重箱』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『御神桜の枝』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
オニゴロシで鬼退治
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

皐月の空と大運動会(攻撃隊)

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:皐月の空と大運動会』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/18(水)~6/4(土)までです

皐月の空と大運動会
 
 パン、と乾いた音がなる。
 爆竹を鳴らしただけの、空砲とも言えない銃声である。
 
 スタートラインに着いた6人の男たちが、その音を聞いて一斉にスタートを切った。
 先を争いながらトラックを一周し、ゴールへと走りこむ。
 
 そして、最初にゴールテープを切った男の首に金色のメダルが下げられた。
 男はそれを誇らしげに掲げ、観客席で歓声を上げる妻と子供に笑顔を送っていた。

 軍事都市ギルゼンブルグで行われる大運動会での一幕である。
 
 暑すぎず寒すぎず、また晴天の多い初夏の季節に毎年行われる。
 市民全員の参加が義務付けられ、個人競技1種以上、団体競技3種以上がノルマとなる。
 
 なお、全員参加の応援合戦は、この団体競技には含まれないので注意が必要である。

 居住域で東西の2グループを作り、各競技でグループごとにポイントを争う。
 勝利したグループには税率が安くなるなどの特典があり、毎年かなり本気の戦いが見れる。
 時折殺伐としすぎるのも、見る側にとっては楽しみの一つである。
 
 なお、居住域で東西に真っ二つに分けるので、当然ながら戦力に偏りが出る。
 その偏りを計算する10人の名ハンデキャッパーたちが出した結果で、今年は東軍に若干名の助っ人の導入が決定された。

 助っ人の募集がある競技は、『棒倒し』である。
 棒倒しは参加人数が多く、オオトリとなるメイン競技でもあるためポイント配分も高い。
 この競技は完全イーブン条件でやりたい、というのが運営者の願いだった。
 
 なお、棒倒しのルールはシンプルだ。
 2つの陣営に分かれ、それぞれの陣地の最奥に長さ5メートルのポールを立てる。
 ヨーイドンでスタートし、このポールを相手より先に倒せば勝ち、というものである。

 各陣営は、攻撃隊と守備隊をそれぞれ編成する。
 攻撃隊はポールを倒すべく敵陣へと攻めこみ、守備隊は自陣でポールを護ることになる。
 
 カルティが配属されるのは東軍であるが、その役割は自由に選べるらしい。
 攻撃隊か守備隊か、好きな方に参加し大会を盛り上げてほしい。
 

注意事項
 
 イベント選択時、攻撃隊と守備隊、どちらに参加するかを選んでください。
 選択によって、勝利条件などが変化します。

 攻撃隊は、ポールを倒すことが目的となります。
 
 敵陣地内に『ポールモンキー』が出現し、これを倒すことで勝利となります。
 『ポールモンキー』を倒した時点で、他の敵が残っていても戦闘は終了となります。
 この時、報酬などは、全員倒したものとして扱われます。
 
 なお、敵側はダメージを与える攻撃はしてきません。
 こちらの足止めなど、引き伸ばし工作を狙ってきます。
 
 10ターン終了までに『ポールモンキー』を打倒してください。
 『ポールモンキー』が生存したまま10ターンを経過すると敗北となります。

 守備隊は、10ターン終了までポールを護ることが目的となります。
 
 味方陣地内に『ポールモンキー』が出現し、これを10ターン終了まで守りきることで勝利となります。
 『ポールモンキー』は隊列位置『9』の場所に出現します。
 味方キャラクターが同じ隊列位置にいる場合、近くの位置に強制的に移動させられます。
 10ターン終了時、『ポールモンキー』が生存していれば勝利となります。
 この時、報酬などは、全員倒したものとして扱われます。
 
 なお、敵側は倒しても倒しても無限に湧いてきます。
 ターンオーバーまで、戦闘を終わらせるすべはありません。
 
 10ターン終了まで『ポールモンキー』を守り切ってください。
 『ポールモンキー』が戦闘不能となった時点で、味方が生存していても敗北となります。

 攻撃隊、守備隊、ともに『引き分け』はありません。
 引き分けは敗北扱いとなるので、注意してください。

『マップ:軍事都市ギルゼンブルグ』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
軍事都市ギルゼンブルグ
 
 軍都、と呼ばれるだけあって、この街では軍組織が中核となっている。
 全市民に0歳から兵役が課され、成人までは予備役兵扱いとなる。
 つまり、この街の人間は全員、軍人か退役軍人というわけである

 とはいえ、所属が軍になるというだけで、全員が銃を持って戦うわけではない。
 教師も警察官もパン屋も絵かきも軍に所属し、軍人となる。
 もちろん有事の際は彼らも戦うことになるが、もう何十年とそんな事態はないらしい。
 
 この運動会も一応は軍事演習に位置づけられているが、中身はやはりどう見ても、ただの運動会である。

 三日間にわたって繰り広げられる大運動会、もとい大軍事演習。
 今日はその三日目である。
 競技者も観客も、そして身も心も疲労困憊だった。
 
 だがそれでも、下を向く者はいない。
 観客は声が枯れようとも、競技者は足がつろうとも、笑顔で大会を継続していた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)

  • フェイズ3
大運動会最終種目『棒倒し』
 
 大昔の話ではあるが、街の生活は壁によって分断されていた。
 
 街を取り囲む城壁から直接伸びた、生活域を完全に東西真っ二つにする壁。
 それぞれの生活を遮断して競争意識を高めるという目的だったらしいが。
 それが成功したかどうかは、あまり検証されていない。

 結果として、人々の交流を禁ずるなどそう長くは続かず。
 今では壁そのものは遺物として残されているものの、扉などが作られ行き来は自由となっている。
 
 そんな、東西が分断されていた時代に始まったのが、かつての東西対抗選抜競技会である。

 競技会場であるセントラルスタジアムは、街のちょうど中央に建てられた。
 壁の途中であり、唯一途切れる箇所でもある。
 
 一年に一度、競争の結果を確認し、さらに競争を煽る。
 そのために行われていたのが選抜競技会だった。

 しかし、壁も、スタジアムも、選抜競技会も、今やすべて遺産である。
 そうであっても全て形としては残っている以上、あまり住民に負の感情はないのだろう。
 
 運動会の様子を見てもそれはありありと見て取れる。
 顔つきは真剣ではあるが、みなが楽しそうに競技に参加していた。

 大会も三日目。さらにその最終盤。
 東軍西軍、ここまでの総合ポイントは、接戦でわずかに西軍がリードである。
 
 チーム総合の行方は最終競技、『棒倒し』の結果へと委ねられた。

 (キャラ名)は『攻撃隊』への参戦を提案しました

『棒倒し』攻撃隊~Attack on Pole~
 
 隠れることなく、目標物は敵陣の最奥に立っていた。
 思考はシンプルでいい。
 立ちふさがる障害物をなぎ倒し、あのポールを倒す。それだけである。

 攻撃隊における連携といったものは殆ど無い。
 小さなチームを組んでいるものもいるが、それぞれは独立している。
 基本的には各々が各々の意志で、まっすぐにポールへと突っ込んでいくだけである。
 
 多少のテクニックは好まれるが、過剰な小細工には観客からのブーイングが飛んでくる。
 ずる賢さや老獪さはスポーツにおいて必須ではあるが、それを見るものが望むかどうかは別の話である。

 両陣営のリーダーが同時にポールに掴まり、するすると一番上まで登っていく。
 彼らは『ポールモンキー』と呼ばれ、この競技において最も名誉ある大役である。
 
 ポールモンキーはポールの一番上に掴まり、周囲の守備隊へと指示を出す。
 そして、ポールを倒すべく襲い来る敵攻撃隊を、最終的にポールから叩き落とす役を担うのだ。

 西軍のポールモンキーには陸軍所属エリア・アルソーク伍長が。
 東軍のポールモンキーには海軍所属セイコム・グラム上等兵がそれぞれ選ばれた。
 
 なお、勝ったポールモンキーには二階級特進の栄誉が与えられ。
 負けたポールモンキーは、十等兵へと降格となる。

 スタジアム北側観客席の上にある台座に置かれた大砲から、号砲が打ち鳴らされた。
 同時、すべての参加者、観客が声を荒らげる。
 
 ついに、この大運動会の勝敗を決する『棒倒し』が始まったのだ。

(PT名)は『自陣ポール付近』に移動しました

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
西軍攻撃隊に遭遇した!

  • フェイズ4(戦闘開始前)
イベントスタート
限定ミッション『皐月の空と大運動会』がランク(選択難易度)で開始されます

最終競技『棒倒し』の行方
 
『西軍の攻撃隊が、先に攻め込みました』
『先頭にいるのは、昨日の100メートル走で金メダルをとった、アヌガン君です』
 スピーカーから、子供の声で実況が流れてくる。
 
『おっと、アヌガン君、壁にぶつかり吹っ飛びました』
『いや、壁ではありません。角界から参戦、百貫デブのピラミッドヤマ君です』
 実況なのに、まるで用意された原稿でも読んでいるような。
 絶妙に抑揚のない語り口で、スピーカーが運動会を盛り上げていた。

『ピラミッドヤマ君の必殺技が炸裂。アヌガン君、もう少しでした』
 倒れ、地面に転がるアヌガン・ヤルスカイ。
 
 すぐさま救護テントから二人飛び出し、彼を担架に乗せて運び出す。
 医療体制は万全だった。

『続いて、東軍の攻撃隊が到着しました』
『先陣を切ったのは、竹槍部隊です。竹槍を構え、西軍守備隊に突撃です』
 戦闘機さえ落とすと言われた、伝説の竹槍部隊。
 その流れをくむ、竹槍道場の門下生たちである。
 
 ズラッと横に並んで竹槍を構えたまま、その隊列を乱すことなく一直線にポールへと向かっていく。
 その間に立ちふさがる守備隊の串刺しは必至だった。

『出ました、西軍守備隊の秘蔵っ子、パンダです』
 守備隊の奥から、のそのそとパンダ部隊が姿を見せる。
 驚きと恐怖に足が止まった竹槍部隊に、パンダたちが我先にと竹槍に食らいついていった。
 
『竹槍を食べています。みなさん、パンダ君を応援してあげてください』
 ムシャムシャと、敵部隊の武器をかっ食らうパンダ。
 竹槍道場の彼らは、竹槍がなければ無力だった。

 東軍西軍、それぞれ最初の攻防が終わる。
 両軍ともに、未だポールに触れてさえいない。
 
 決着まで、まだまだ時間がかかりそうだった。

戦闘予告
西軍攻撃隊に遭遇した!

  • フェイズ4(戦闘勝利後)
軍事都市ギルゼンブルグ
 
 東軍守備隊が、その身を呈してあらゆる攻撃を跳ね返す。
 それでも全てとは行かず、ポールモンキーであるセイコム・グラム上等兵も攻撃を受けていた。
 
 右の足首を掴まれ、それを左足で蹴落とす。
 飛んでくるバレーボールやらサッカーボールやらは基本、我慢である。
 いつまでも耐えられるものではない。だが、それを一秒でも伸ばす。
 
 信じて耐える、ただそれだけだった。

 自陣の守備隊、そしてポールモンキーが作り出した時間。
 それが攻撃隊に与えられたタイムリミットである。

 東軍攻撃隊に参加している(PC名)もまた、その時間に縛られていた。
 後方の状況はわからない。今この瞬間にも陥落するかもしれない。
 彼らがこちらを信じて耐えているように、まだ時間はあるとこちらも信じるしかなかった。

 (PC名)の攻撃が、敵軍ポールモンキー、エリア・アルソーク伍長についに届いた。
 
 バランスを崩し、なんとか指先をポールに引っ掛けてぎりぎり耐える。
 その伸ばした脇腹に、どこかからか飛んできたソフトボールが突き刺さった。
 
 苦痛に顔を歪めるポールモンキー。
 全身の体重をたったの一本だけで支えていた人差し指から、力が抜けていく。

 脇腹に突き刺さったボールは肺を潰して呼吸を邪魔し、人差し指の筋肉繊維が一本ずつ引きちぎれていく。
 もう耐えられない。希望はもう、ここにはなかった。

 指がポールから離れ、体が地面へと落ちていく。
 スローモーションでその光景を俯瞰で見ながら、アルソーク伍長は視線を東軍ポールに向けていた。
 
 ここに希望はない。だがあそこには望みがまだある。
 自身が地面に叩きつけられ、群がってきた東軍攻撃隊にポールが倒される、それより前に。
 
 あのポールが倒れればいい。あのポールモンキーが落ちればいい。
 願う。落ちろ、倒れろ、落ちろ、倒れろ! 俺より早く。一瞬でも早く。

 だが、希望はない。
 西軍ポールモンキーは落ち、西軍ポールは倒される。
 
 爆発のような歓声が、西軍ポール付近で上がり。
 それで状況を悟った東軍守備隊が、ワンテンポだけ遅れて歓喜の雄叫びを上げた。
 
 悠然と立つ東軍ポールの上で、ポールモンキー、セイコム上等兵がかちどきをあげていた。

イベントマップ『軍事都市ギルゼンブルグ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

皐月の空と大運動会
『東軍も、西軍も、どちらも頑張りました』
『全員に、大きな拍手を願いします!』
 死屍累々と両軍の負傷者が転がるグランドに、子供の声が虚しく響く。
 四方八方から聞こえてくる万雷の拍手が、倒れこむ彼らには多少の慰めにはなったようだった。

 倒れた西軍のポール。
 そして、その横にはポールモンキーを務めたエリア・アルソーク伍長が動けないでいた。
 
 怪我ではない。
 負けた。その衝撃、悔しさが彼の足腰を砕いていた。
 ただの敗北ではない。人生を賭けた戦いに負けたのだ。

 打ちひしがれる彼のそばに、二人の男が小走りにやってくる。
 励ますわけではなく、治療が目的でもない。
 彼の脇に手を入れて無理やり立たせ、そして。
 
「エリア・アルソーク"十等兵"。早速だが、任務についてもらう」
「そこに君の上司となるダリオ九.九等兵がいるから、説明を受けるといい」
 返事もできない。だがそれを聞くまでもなく、連れて行かれる。
 
 東軍ポール付近で行われている喜びの輪とは、全く違う惨状が敗者側にはあった。

『棒倒しは、東軍の勝利となりました』
『これで、総合点でも東軍が逆転。今年の東西対抗大運動会は、東軍の勝利となります!』
 そのアナウンスに、東軍観客席から大歓声が上がる。
 
『大会MVPは、棒倒しの勝利ポールモンキー、セイコム・グラム上等兵に決定しました』
 今度は、東軍ポールのあたりで騒いでいた選手たちの声のボリュームが一気に上がった。
 
『……失礼しました。訂正します』
 と、その声にすっと瞬間的に静かになり。
『セイコム・グラム"軍曹"です』
 その小芝居じみたセリフ回しに、最初の歓声よりも大きな、雷のような拍手と歓声が響き渡っていた。

『最後は、両者の検討をたたえ合って、みんなでフォークダンスです』
『観客の皆さんも、グラウンドに降りてきてください』
 アナウンスの後ろから、フォークダンス用の音楽が流れ始める。
 
『みなさん、好きな人に、合法的に触れるチャンスです』
『頑張ってください!』
 そこで、この少年による三日間に渡るアナウンスが終わった。

 アナウンス席から出てきた小太りの少年が、近くにいいた少女の腰に手を回す。
 少女は可能なかぎり顔を背けながら、それでもしばらくフォークダンスの相手を務めていた。
 
 セイコム軍曹の周りには、大勢の女性たちが集まっていた。
 自分と踊ってくれと、それぞれに右手を伸ばして媚びた笑顔を見せる。
 
 軍曹は周りの男達としばらく顔を見合わせた後、好みの順に四人選んでその腕に抱え上げていた。

ミッション『皐月の空と大運動会』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
皐月の空と大運動会
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『帰宅部』が修得可能になった

皐月の空と大運動会(守備隊)

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:皐月の空と大運動会』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/18(水)~6/4(土)までです

皐月の空と大運動会
 
 パン、と乾いた音がなる。
 爆竹を鳴らしただけの、空砲とも言えない銃声である。
 
 スタートラインに着いた6人の男たちが、その音を聞いて一斉にスタートを切った。
 先を争いながらトラックを一周し、ゴールへと走りこむ。
 
 そして、最初にゴールテープを切った男の首に金色のメダルが下げられた。
 男はそれを誇らしげに掲げ、観客席で歓声を上げる妻と子供に笑顔を送っていた。

 軍事都市ギルゼンブルグで行われる大運動会での一幕である。
 
 暑すぎず寒すぎず、また晴天の多い初夏の季節に毎年行われる。
 市民全員の参加が義務付けられ、個人競技1種以上、団体競技3種以上がノルマとなる。
 
 なお、全員参加の応援合戦は、この団体競技には含まれないので注意が必要である。

 居住域で東西の2グループを作り、各競技でグループごとにポイントを争う。
 勝利したグループには税率が安くなるなどの特典があり、毎年かなり本気の戦いが見れる。
 時折殺伐としすぎるのも、見る側にとっては楽しみの一つである。
 
 なお、居住域で東西に真っ二つに分けるので、当然ながら戦力に偏りが出る。
 その偏りを計算する10人の名ハンデキャッパーたちが出した結果で、今年は東軍に若干名の助っ人の導入が決定された。

 助っ人の募集がある競技は、『棒倒し』である。
 棒倒しは参加人数が多く、オオトリとなるメイン競技でもあるためポイント配分も高い。
 この競技は完全イーブン条件でやりたい、というのが運営者の願いだった。
 
 なお、棒倒しのルールはシンプルだ。
 2つの陣営に分かれ、それぞれの陣地の最奥に長さ5メートルのポールを立てる。
 ヨーイドンでスタートし、このポールを相手より先に倒せば勝ち、というものである。

 各陣営は、攻撃隊と守備隊をそれぞれ編成する。
 攻撃隊はポールを倒すべく敵陣へと攻めこみ、守備隊は自陣でポールを護ることになる。
 
 (PC名)が配属されるのは東軍であるが、その役割は自由に選べるらしい。
 攻撃隊か守備隊か、好きな方に参加し大会を盛り上げてほしい。
 

注意事項
 
 イベント選択時、攻撃隊と守備隊、どちらに参加するかを選んでください。
 選択によって、勝利条件などが変化します。

 攻撃隊は、ポールを倒すことが目的となります。
 
 敵陣地内に『ポールモンキー』が出現し、これを倒すことで勝利となります。
 『ポールモンキー』を倒した時点で、他の敵が残っていても戦闘は終了となります。
 この時、報酬などは、全員倒したものとして扱われます。
 
 なお、敵側はダメージを与える攻撃はしてきません。
 こちらの足止めなど、引き伸ばし工作を狙ってきます。
 
 10ターン終了までに『ポールモンキー』を打倒してください。
 『ポールモンキー』が生存したまま10ターンを経過すると敗北となります。

 守備隊は、10ターン終了までポールを護ることが目的となります。
 
 味方陣地内に『ポールモンキー』が出現し、これを10ターン終了まで守りきることで勝利となります。
 『ポールモンキー』は隊列位置『9』の場所に出現します。
 味方キャラクターが同じ隊列位置にいる場合、近くの位置に強制的に移動させられます。
 10ターン終了時、『ポールモンキー』が生存していれば勝利となります。
 この時、報酬などは、全員倒したものとして扱われます。
 
 なお、敵側は倒しても倒しても無限に湧いてきます。
 ターンオーバーまで、戦闘を終わらせるすべはありません。
 
 10ターン終了まで『ポールモンキー』を守り切ってください。
 『ポールモンキー』が戦闘不能となった時点で、味方が生存していても敗北となります。

 攻撃隊、守備隊、ともに『引き分け』はありません。
 引き分けは敗北扱いとなるので、注意してください。

『マップ:軍事都市ギルゼンブルグ』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
軍事都市ギルゼンブルグ
 
 軍都、と呼ばれるだけあって、この街では軍組織が中核となっている。
 全市民に0歳から兵役が課され、成人までは予備役兵扱いとなる。
 つまり、この街の人間は全員、軍人か退役軍人というわけである

 とはいえ、所属が軍になるというだけで、全員が銃を持って戦うわけではない。
 教師も警察官もパン屋も絵かきも軍に所属し、軍人となる。
 もちろん有事の際は彼らも戦うことになるが、もう何十年とそんな事態はないらしい。
 
 この運動会も一応は軍事演習に位置づけられているが、中身はやはりどう見ても、ただの運動会である。

 三日間にわたって繰り広げられる大運動会、もとい大軍事演習。
 今日はその三日目である。
 競技者も観客も、そして身も心も疲労困憊だった。
 
 だがそれでも、下を向く者はいない。
 観客は声が枯れようとも、競技者は足がつろうとも、笑顔で大会を継続していた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)

  • フェイズ3
大運動会最終種目『棒倒し』
 
 大昔の話ではあるが、街の生活は壁によって分断されていた。
 
 街を取り囲む城壁から直接伸びた、生活域を完全に東西真っ二つにする壁。
 それぞれの生活を遮断して競争意識を高めるという目的だったらしいが。
 それが成功したかどうかは、あまり検証されていない。

 結果として、人々の交流を禁ずるなどそう長くは続かず。
 今では壁そのものは遺物として残されているものの、扉などが作られ行き来は自由となっている。
 
 そんな、東西が分断されていた時代に始まったのが、かつての東西対抗選抜競技会である。

 競技会場であるセントラルスタジアムは、街のちょうど中央に建てられた。
 壁の途中であり、唯一途切れる箇所でもある。
 
 一年に一度、競争の結果を確認し、さらに競争を煽る。
 そのために行われていたのが選抜競技会だった。

 しかし、壁も、スタジアムも、選抜競技会も、今やすべて遺産である。
 そうであっても全て形としては残っている以上、あまり住民に負の感情はないのだろう。
 
 運動会の様子を見てもそれはありありと見て取れる。
 顔つきは真剣ではあるが、みなが楽しそうに競技に参加していた。

 大会も三日目。さらにその最終盤。
 東軍西軍、ここまでの総合ポイントは、接戦でわずかに西軍がリードである。
 
 チーム総合の行方は最終競技、『棒倒し』の結果へと委ねられた。

 (キャラ名)は『守備隊』への参戦を提案しました

『棒倒し』守備隊~Pole Defence Force~
 
 自陣最奥に立てられた五メートルほどの長さのポール。
 その下で体格のいい男たち四人が円陣を組み、しっかりとポールを支えている。
 さらに円陣の中に男たち数人が入り込み、ポールの根本をがっちりとホールドしていた。
 
 その彼らを中心に、周囲を固めていく。
 おしくら饅頭も不可能なほどの密着度で、まさに一つの生命体と化していた。

 軍服を着た一人の男が塊となった男たちの背中に飛び乗り、そのままポールへとしがみつく。
 するするするとてっぺんまで登り切り、その頂点につま先を乗せて立ち上がった。
 
 彼は海軍所属のセイコム・グラム上等兵。
 『ポールモンキー』と呼ばれる大役を担う、この東軍のリーダーである。

 ポールモンキーはポールの一番上に陣取り、そこから周囲に指示を飛ばす。
 
 そして、味方守備隊が突破された場合には、自身が最終防衛線とならなくてはならない。
 このポールを倒そうと群がってくる敵攻撃隊を、その頂点から叩き落とすのである。
 
 ポールモンキーの敗北は、自軍の敗北を意味する。
 ポールは無残に倒されるのみである。

 東軍のポールモンキーがポールに登ると同時、西軍のポールモンキーも定位置についた。
 敵軍ポールモンキーは陸軍所属のエリア・アルソーク伍長である。
 アルソーク伍長、そしてセイコム上等兵。彼らは自らの人生を賭ける。
 
 勝ったポールモンキーには二階級特進の栄誉が。
 負けたポールモンキーには十等兵への特別降格が言い渡される。
 
 オール・オア・ナッシング。
 棒倒しによって倒されるのは、二人の若者のうち、一人だけである。

 スタジアム北側観客席の上にある台座に置かれた大砲から、号砲が打ち鳴らされた。
 同時、すべての参加者、観客が声を荒らげる。
 
 ついに、この大運動会の勝敗を決する『棒倒し』が始まったのだ。

(PT名)は『自陣ポール付近』に移動しました

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
西軍攻撃隊に遭遇した!

  • フェイズ4(戦闘開始前)
イベントスタート
限定ミッション『皐月の空と大運動会』がランク(選択難易度)で開始されます

最終競技『棒倒し』の行方
 
『西軍の攻撃隊が、先に攻め込みました』
『先頭にいるのは、昨日の100メートル走で金メダルをとった、アヌガン君です』
 スピーカーから、子供の声で実況が流れてくる。
 
『おっと、アヌガン君、壁にぶつかり吹っ飛びました』
『いや、壁ではありません。角界から参戦、百貫デブのピラミッドヤマ君です』
 実況なのに、まるで用意された原稿でも読んでいるような。
 絶妙に抑揚のない語り口で、スピーカーが運動会を盛り上げていた。

『ピラミッドヤマ君の必殺技が炸裂。アヌガン君、もう少しでした』
 倒れ、地面に転がるアヌガン・ヤルスカイ。
 
 すぐさま救護テントから二人飛び出し、彼を担架に乗せて運び出す。
 医療体制は万全だった。

『続いて、東軍の攻撃隊が到着しました』
『先陣を切ったのは、竹槍部隊です。竹槍を構え、西軍守備隊に突撃です』
 戦闘機さえ落とすと言われた、伝説の竹槍部隊。
 その流れをくむ、竹槍道場の門下生たちである。
 
 ズラッと横に並んで竹槍を構えたまま、その隊列を乱すことなく一直線にポールへと向かっていく。
 その間に立ちふさがる守備隊の串刺しは必至だった。

『出ました、西軍守備隊の秘蔵っ子、パンダです』
 守備隊の奥から、のそのそとパンダ部隊が姿を見せる。
 驚きと恐怖に足が止まった竹槍部隊に、パンダたちが我先にと竹槍に食らいついていった。
 
『竹槍を食べています。みなさん、パンダ君を応援してあげてください』
 ムシャムシャと、敵部隊の武器をかっ食らうパンダ。
 竹槍道場の彼らは、竹槍がなければ無力だった。

 東軍西軍、それぞれ最初の攻防が終わる。
 両軍ともに、未だポールに触れてさえいない。
 
 決着まで、まだまだ時間がかかりそうだった。

戦闘予告
西軍攻撃隊に遭遇した!

  • フェイズ4(戦闘勝利後)
軍事都市ギルゼンブルグ
 
 このゲームにおいて、守備隊の勝利というものはない。
 どちらが先にポールを倒せるかというルールであり、ポールを守り切るという勝利はないのだ。
 
 勝利は自軍攻撃隊によってもたらされる。
 それまでの時間、ポールモンキーを守って耐え切るのが守備隊の役割である。

 ただし、敗北は攻撃隊ではなく、守備隊によってもたらされるのだ。
 守備隊が決壊した瞬間に、敗北が決定する。
 
 つまり逆に言えば、我々がポールモンキーを守っている限り、絶対に敗北はないのである。
 もちろん、攻撃隊が不甲斐なければ、永遠に勝利もないのだが。
 
 そこは信じるしかない。信じて、耐える。
 今この瞬間、あのポールが倒れると信じて。

 東軍攻撃隊の矛が、徐々にだが西軍ポールモンキーへと届き始める。
 
 だが、抗う。
 振り払い、蹴り落とし、しがみつく。
 
 蜘蛛の糸に群がる地獄の亡者たち、それを踏みつける盗人のように。
 神の怒りを買ってどうせここから落ちるとしても、相手よりも一秒でも長く耐えられればそれでよかった。

 東軍攻撃隊に、あまり作戦らしい作戦はなかった。
 しいて言うなら、休まないこと。一時の間も開けず、絶えず攻撃を続ける。
 彼らが仕掛けたのは消耗戦だった。
 
 自軍のポールが猛烈な攻撃に脅かされている中で、長期戦は歓迎できるものではない。
 このゲームにおいては、短期決戦は必須戦略である。

 攻撃隊を指揮する男は自軍の成果や損耗には気を向けず、じっと自軍ポール付近を見つめていた。
 そのギリギリを、見極めようとしていた。
 
 重要な事は、ポールモンキー以外の自軍の損害は無視していいということ。
 そして、最終局面においては、ポールモンキーすら無視していい。
 
 たとえ自軍が落ちようが、それよりも一瞬早くこちらが敵軍を落とせばいいのだ。
 これは、帰るべき、守るべき家がある戦争ではなかった。

 突撃命令が下される。
 味方ポールモンキーが、ぎりぎりのタイミングでの命令だった。
 
 時間の限界まで削った防衛線に、全攻撃部隊が投入される。
 ここで一気に攻め落とす。できなければ、負ける。そういうタイミングだった。
 
 指揮官は重い腰を上げ、自身も突撃した。
 もう背後を見る必要はない。ポールモンキーを倒す。ポールを倒す。
 頭の中にあるのはもはやそういうシンプルな思考だけだった。

 爆発のような歓声が、西軍ポール付近で上がる。
 それで状況を悟った東軍守備隊が、ワンテンポだけ遅れて歓喜の雄叫びを上げた。
 
 悠然と立つ東軍ポールの上で、ポールモンキー、セイコム上等兵がかちどきをあげていた。

イベントマップ『軍事都市ギルゼンブルグ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

皐月の空と大運動会
『東軍も、西軍も、どちらも頑張りました』
『全員に、大きな拍手を願いします!』
 死屍累々と両軍の負傷者が転がるグランドに、子供の声が虚しく響く。
 四方八方から聞こえてくる万雷の拍手が、倒れこむ彼らには多少の慰めにはなったようだった。

 倒れた西軍のポール。
 そして、その横にはポールモンキーを務めたエリア・アルソーク伍長が動けないでいた。
 
 怪我ではない。
 負けた。その衝撃、悔しさが彼の足腰を砕いていた。
 ただの敗北ではない。人生を賭けた戦いに負けたのだ。

 打ちひしがれる彼のそばに、二人の男が小走りにやってくる。
 励ますわけではなく、治療が目的でもない。
 彼の脇に手を入れて無理やり立たせ、そして。
 
「エリア・アルソーク"十等兵"。早速だが、任務についてもらう」
「そこに君の上司となるダリオ九.九等兵がいるから、説明を受けるといい」
 返事もできない。だがそれを聞くまでもなく、連れて行かれる。
 
 東軍ポール付近で行われている喜びの輪とは、全く違う惨状が敗者側にはあった。

『棒倒しは、東軍の勝利となりました』
『これで、総合点でも東軍が逆転。今年の東西対抗大運動会は、東軍の勝利となります!』
 そのアナウンスに、東軍観客席から大歓声が上がる。
 
『大会MVPは、棒倒しの勝利ポールモンキー、セイコム・グラム上等兵に決定しました』
 今度は、東軍ポールのあたりで騒いでいた選手たちの声のボリュームが一気に上がった。
 
『……失礼しました。訂正します』
 と、その声にすっと瞬間的に静かになり。
『セイコム・グラム"軍曹"です』
 その小芝居じみたセリフ回しに、最初の歓声よりも大きな、雷のような拍手と歓声が響き渡っていた。

『最後は、両者の検討をたたえ合って、みんなでフォークダンスです』
『観客の皆さんも、グラウンドに降りてきてください』
 アナウンスの後ろから、フォークダンス用の音楽が流れ始める。
 
『みなさん、好きな人に、合法的に触れるチャンスです』
『頑張ってください!』
 そこで、この少年による三日間に渡るアナウンスが終わった。

 アナウンス席から出てきた小太りの少年が、近くにいいた少女の腰に手を回す。
 少女は可能なかぎり顔を背けながら、それでもしばらくフォークダンスの相手を務めていた。
 
 セイコム軍曹の周りには、大勢の女性たちが集まっていた。
 自分と踊ってくれと、それぞれに右手を伸ばして媚びた笑顔を見せる。
 
 軍曹は周りの男達としばらく顔を見合わせた後、好みの順に四人選んでその腕に抱え上げていた。

ミッション『皐月の空と大運動会』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
皐月の空と大運動会
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『帰宅部』が修得可能になった

七夕まつりに架ける橋

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:七夕まつりに架ける橋』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は7/6(水)~7/23(土)までです

七夕まつりに架ける橋

 そこには二つの街と、その間に流れる大きな川があった。
 
 川の名前は『天の川』。
 そして、この川に隔てられ地域性が全く違う二つの街はそれぞれ、『織姫町』と『彦星町』と呼ばれていた。

 縫製工場や工房などがいくつも並び、服飾デザイナーが数多く在籍する織姫町。
 それら製品を置くショップもいくつもあり、自他ともに認める『オシャレ』な街である。
 
 そのため、『ダサイ』ものたちには息苦しく肩身も狭い。
 結界にも似たオシャレオーラが街全体を包み。
 オシャレでないものは、この街においては存在しないのと同じという扱いだった。

 対して、彦星町は人よりも牛の数の方が多いと揶揄されるような酪農の街である。
 
 しかし、生産される牛肉や牛乳、そしてそれらを元にした加工食品は評価も高く。
 地産地消を謳うレストランやパティスリーも多く存在している。
 
 言いようによってはグルメの街であるが、街全体を包む牧歌的な空気感はいかんともしがたかった。

 巨大な天の川が両者を隔てているため、それほど多くの交流があるわけではない。
 
 かつてはこの天の川にも橋が架けられ、自由に町と町を行き来していたらしいが。
 川はたびたび大暴れし、そのたびに橋を押し流してしまったという。
 
 そしていつしか橋は新たに架けられなくなり。
 川が細くなる場所まで大きく迂回して渡るのみとなり、交流は少なくなっていった。

 しかし、全くなくなったわけではない。
 1年に1度、七夕まつりだけは二つの街でともに行う、大きな行事として残っていた。
 
 この七夕まつりの一番の見所は、祭りの間だけ架けられる橋である。
 祭りが終われば壊されるのだが、それがもったいないほどのものが出来上がる。
 年々立派に、また意匠を凝らしたものになっており、今年もまた大きく期待されていた。

 しかし、七夕まつりが近づき、橋の建設が進んでいたある日。
 天の川が、真っ白に染まったのだ。
 
 祭りを前に、なにか不吉な兆しではないかと両町から声が上がる。
 橋の建設は一旦止まり、実行委員会で協議が行われることとなった。

 完全に白く染まったのは数時間で、徐々に薄くなり、今ではほとんど透明に戻っている。
 
 戻ったのだから、祭りの準備も再開すればいい。
 アレが何かも分からずに、そういう訳にも行かない。
 祭りが終わってから、改めて調べればいい。
 祭りの間に何かあったらどうするんだ。
 
 会議は踊る。結論は出ない。

 このままでは七夕まつりの開催も危ぶまれている。
 天の川の上流へと行き、原因を調べてきてくれないだろうか。

『マップ:織姫町と彦星町』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
織姫町と彦星町

 何度も増水を繰り返し、そのたびに橋を押し流してきた。
 今の天の川の姿を見れば、にわかには信じがたい。
 
 穏やかで、清らかで、美しい。
 美しいものには棘があるというのもよくある話ではあるが。
 実際その豹変を目にするまでは、そんなものはないと信じたいのが人情だろう。

 豹変とまでは言えないかもしれないが、その天の川が白く染まった。
 
 土砂などによって濁ったわけではないという。
 それこそ、ペンキでも混ぜたかのように白かったらしい。
 
 魚などの生物への影響は今のところなく、毒性などはなさそうだった。
 数時間で色は薄まり、今ではもはやその名残もない。

 織姫町と彦星町をつなぐ橋は、橋脚部分はほぼ完成していた。
 二つの街の間を、二本ずつ横並びの太い柱が等間隔に川底に打ち付けられている。
 
 大工の多くが彦星町の人間ということもあってか、彦星町側から数メートルほどだけ橋桁も架けられていた。
 だが、そこで工事は中断され、続きをやろうという人の姿も見えない。
 
 橋の建設、そして七夕まつりの準備はそこで完全に止まってしまっていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
白き天の川

 天の川の底には、赤や青など宝石のように光る石が点々と転がっている。
「星みたいでしょ。それで、天の川っていうんですよ」
 
 道案内を申し出た竹彦という名の男が、天の川に沿うように北上しながらの道中。
 彦星町の役場の人間ということで、慣れた口調での説明が続いていた。

 天の川を、彦星町側から上流へと向かう。
 
 町の雰囲気としては、若干の混乱にあるといったところだった。
 だがそれは川が白く染まったことによる恐怖のようなものではなく。
 七夕まつりの準備を続けるべきかどうか、どうにも迷っているといった感じである
 
 誰もが、誰かが続けようと言い出すのを待っているような空気が漂っていた。

「このまま上流に行くと、牧場がありまして」
「川向かいの織姫町には製織工場があります。そこまで行くと、歩いて川を渡れますよ」
 
 気分的にはもう、完全に観光案内である。
 右手をご覧下さい、あちらに見えますのが云々。
 丁寧な解説はけして不快ではなかったが、やや面倒ではあった。
 
 しかしながら、そもそも川にそっての移動であるので、案内など必要ないのだが。
 気分よく解説を繰り出す竹彦に、今更言い出せる雰囲気ではなかった。

「先日から、鮎漁が解禁になりましてね」
「ぜひとも食べていっていただきた………あああ!」
 説明しながら川を眺めてた男の口から、裏返った声で叫び声が上がった。
 
「来ました! あれです! また来ましたよ!」
 裏返ったまま戻ってこない声で。
 彼の目線を追うまでもなく、川の上流から白い波が近づいてきていた。

 天の川が白く染まっていく。
 水に薄っすらと混ざり始めてから、真っ白になるまでほとんど時間がかからなかった。
 
「あの、ちょっと、行って来ます!」
 その様子を見ていた竹彦が、何やら決意して川の中に入っていく。
 膝のあたりまで水に浸かりながら数歩ほど進んだところで、いきなり水の中に頭を突っ込んだ。
 時間にすれば5秒もない。

 その程度の時間で、川から顔を引き上げてこちらに向き直り。
 
「ミルク味です!」
 と、別に聞いてもないその報告から察するに。
 どうやら川の中に頭を突っ込んでいたのは、水をがぶ飲みするためのようだった。

(PT名)は『牽牛牧場』に移動しました

  • フェイズ3
ミルキーウェイ

 大量のミルクによって染まった天の川。
 
 これだけの川を丸ごと真っ白にするには、いったいどれだけのミルクが使われたのか。
 行き先が牧場であるとはいえ、とても考えられない量だろう。

 水とミルクでびしょ濡れの役場の男を連れて、(PC名)は牽牛牧場へとたどり着いた。
 その頃には少し乾き始めた男から、なんとも言えない臭気が漂い始めていた。
 
 牧場には入口に看板がある。
 木製の看板に、墨で『牽牛牧場』と書かれ、その上から太い訂正線がはっきりと引かれ。
 
 残った狭いスペースに、『ドキドキ動物ランド』と書かれていた。

 (PC名)に言われてずいぶん離れた場所から付いてくるミルク臭竹彦。
 まだいろいろ喋っているようだが、その声はもう届かなかった。
 
 すでに牽牛牧場、あるいは『ドキドキ動物ランド』の敷地内ではあるが。
 天の川の直ぐ側を進むことに変わりはない。
 
 そして、程なくしてその光景に遭遇することとなった。

 川の水面から立ち上る、うっすらとした湯気。
 揺らぐ景色のその中に、彼らの姿はあった。
 
 川の一角に流れの一部をせき止めるように石を並べて積み上げ、囲いを作ってそこに水が貯まるようになっている。
 それはどうやら温水らしく、溜まった濃厚な白い水から湯気が上がっていた。
 
 天の川の内部に作られたその温泉のような場所に、多くの動物たちが群がっていた。

「謎は解けました! ミルク風呂ですね!」
 遠慮も思慮もない大声で、追いついてきた竹彦が臭気を撒き散らしながら叫ぶ。
 
 だが、たしかに謎は解けていた。
 近くにある建物から引っ張ってきたパイプの口は温泉を囲む石の上に置かれ、そこからドバドバとミルクが流れ出てきている。
 
 天の川の水と、水底から湧き出ている温水と、パイプから供給されるミルク。
 それによって出来上がったミルク風呂、そこからあふれた水が川に流れ出て真っ白に染めていたのだ。

 謎は解けたが、その大声はやはり余計だった。
 
 明らかに人工物であるそのミルク風呂に浸かる動物たち。
 かわいいカピパラや愛らしい仔猿。だけならばよかったが、そうは行かない。
 
 凶悪な獣たちが、湯治の邪魔をしにきた(PC名)を睨みつけながら立ち上がった。

 ミルク風呂によって美しく磨き上げられた肌ツヤを見せつけながら。
 人生一のベストコンディションの獣たちが、充実した殺る気を発しまくっていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
ミルクフロリストに遭遇した!

  • フェイズ4(戦闘開始前)
ミルキーウェイ

 天の川が白く染まっていく。
 このままなら数時間後には、下流の町でまた騒ぎになりそうだった。
 
 竹彦のようなネジの外れたものがズカズカと川に入って味見でもすれば、とりあえず原因がミルクであると気づくことはできるかも知れないが。
 だからといって、この状況までは予測できないだろう。

 川の中に石を並べて作った露天温泉。
 そこにパイプからミルクをドバドバと供給し、完成となった露天ミルク温泉である。
 それを楽しんでいるのは、全て動物たちだった。
 
 頭の上に服の切れ端のようなボロ布をおいて肩まで温泉に使っているゴリラ。
 パイプから出てくるミルクを頭から直に浴びているシロクマ。
 濁った水中に身を隠し、何かを探すように血走った目だけを外に出しているオスワニ。

 そこに人の姿、少なくとも言葉が通じそうなものはいなかった。
 
「助けてください~」
 通じる言葉、それは温泉からではなく。
 ミルクを供給するためのパイプを、根元の方まで伝っていった先にある施設。
 その側に、なんとも気の弱そうな男が青色のハッピを着て、竹箒を手に突っ立っていた。

 温泉を楽しんでいた動物たち、その一部はすでにそれを中断している。
 (PC名)へと襲いかかるべく湯船を出て、こちらへと近づいてきていた。
 
 助けを呼ぶ声は、おそらくこちらへ向けたものだろう。
 何から助けるのかは、なんとなく目の前を見れば分かった。

(戦闘)

織姫町と彦星町

「牛彦さん! ご無事でしたか!」
 ミルク臭を漂わす役場の男、確か竹彦だとかいう名前だったとは思うが。
 彼は青いハッピの男の側に駆け寄りながら、明るい声でそう呼びかけていた。
 
「一人だとどうしていいか分からなくて、助かりました……」
 持っていた竹箒が、力の抜けた手からこぼれ落ちる。
 ガシャン、と意外と大きな音が響いたが、それを咎めるような動物たちの姿はもうなかった。

 ミルク風呂に集まっていた動物たちは、その多くはすでに去ってしまっている。
 
 だが、呑気なのか図太いのか、あるいは色々なものに抗えないほどにそこが魅力的なのか。
 (PC名)が来る前も、戦いのさなかも、そして今も。
 変わらぬ姿勢で温泉に浸かったままの動物たちの姿も残っていた。
 
 パイプのミルクはすでに止まり。
 温泉はゆっくりと、その透明度を取り戻そうとしていた。

「七夕まつりにあわせて、牧場を動物園に改造しようと思いつきまして」
 牛彦と竹彦。二人の男を連れて、徒歩で川を下っていく。
 
「もともと、多くの動物を飼育していましたから。リノベ、ぐらいの感じで」
 川の上流はすでにほぼ透明になっており、白濁の原因であるミルクも止まっている。
 町に戻る頃には、天の川全体からミルク成分は充分に薄まっていることだろう。

「なんか、織姫町の若い娘の間で、ミルク風呂が流行ってるって聞いたもんで」
「ウシたちの湯治なんかに使ってた温泉で、ちょっとやってみようかと」
 川の一部を石壁できっちりと囲い、ミルクの貯蔵タンクからパイプを引き込み。
 ようやく完成したミルク温泉だったわけだが、問題が発生した、ということである。
 
「目玉になると思ってたんですが、なぜか、山とかから動物が集まってきて……」
 言いながら、落ち込んできたのか声が沈んでいく。
「まあ、ミルクが嫌いな哺乳類なんていませんからねえ」
 軽口を叩く役場の人間の言葉に、彼はさらにズーンと沈んでいた。

 かわいいカピバラさんがミルク風呂で癒し癒されている図。
 
 それが蹂躙され、変貌していく。
 その光景は、未だ彼の脳裏やら目蓋の裏に焼き付いていた。

イベントマップ『織姫町と彦星町』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

天の川下り

 町はやはり、ざわついていた。
 
 またも白く染まった天の川。
 味見をした勇者はいないらしく、今もってその謎の一部も解決してはいないようである。

 ただ、(PC名)とともに上流から戻ってきた竹彦の体から発せられる臭いによって。
 なんとなく、ピンときた町民は少なからずいるようだった。
 
 町へと戻ってくると、牧場の男を連れて竹彦は役場へと向かった。
 しばらくして、町内放送用のスピーカーから彼の声が流れてくる。
 
 経緯説明。そして謎解き。
 それには牧場の男も加わって、聞くも涙語るも涙な放送が行われた。

 種が割れてしまえば、面白い話でも怖い話でもない。
 
 織姫町彦星町、両町長の大号令でもって七夕まつりの準備は再開となった。

七夕まつりに架ける橋

 急ピッチで進む、橋の建設。
 すでに橋脚の設置は済んでおり、後は橋桁に橋板を乗せれば完成である。
 
 彦星町の男たちが汗を流し、織姫町の娘たちが握ったおにぎりでさらに倍働く。
 それと平行して、七夕まつり本体の準備も両町で滞り無く進んでいった。
 
 そして、七夕まつり当日。
 見事、二つの町をつなぐ立派な『天の架け橋』が完成したのだった。

 笹で作った小さな舟が、天の川をいくつも流れていく。
 月の光を受けて川底の赤や青の石が輝きを増し、そこを渡っていく笹舟が何とも幻想的な雰囲気を作り上げていた。
 
 『天の架け橋』の上を、織姫町と彦星町の人々がそれぞれに天の川を渡っていく。
 一年に一度の町同士の交流は、やはりどうしても男女の交流が主となる。
 街全体がなんとなくピンク色に輝き、ところどころで浮ついていた。

 織姫町と彦星町、その両方の広場に置かれた笹に願い事の書かれた短冊が飾られる。
 そこには様々な願い事、個人的なものから世界平和を願うものまであったが。
 
 その中でいくつも目に入ったのは、同じ願いが書かれた短冊。
 それは、『天の架け橋』の存続を願うものだった。

「これを持って行って、議会に提案したいと思います」
 彦星町の広場に飾られた短冊、そして願い事を眺め見ながら竹彦がつぶやいた。
 
「あれだけ頑丈に作られた『天の架け橋』なら、多少の鉄砲水には耐えれるでしょうしね」
 橋建築の技術も向上し、橋の強度は昔とは違う。
 さらには治水も行われており、そもそも川の増水や氾濫も最近ではほとんどないという。
 
 長らく続けていた儀式や慣習をやめる、その決断をするだけだった。

 (PC名)のいる彦星町の広場には、多くの人が集まっていた。
 
 後になって分かることだが、今年の七夕まつりで最も人を集めたイベントがここであったのだ。
 それは町役場の役人、竹彦発案による『ミルク流しそうめん』である。
 
 竹を半分に割って節を抜いたスロープを、勢いよくそうめんが流れていく。
 それを流すのが、牽牛牧場のミルクというわけである。

 ミルクに押し流されるそうめんを器用に箸で受け止め、手に持った器へと移す。
 そして器に入ったつゆにさっと浸して、勢いよくすする。
 そうめんからはほんのりミルク味がして、正直うまいものではなかった。
 
「アイデアですよね。結局は。発想の勝利ですよ」
 味ではなく、アイデア勝負であると竹彦が主張する。
 説得力のあるなしはともかくとして、この『ミルク流しそうめん』が客を集めたことは確かだった。

 ちなみにではあるが。
 このイベントのプロモーションとして、牧場から天の川にミルクを流そうとしたのだが。
 課長に拳で止められた、とのことである。

ミッション『七夕まつりに架ける橋』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『天河の星石』を手に入れた
  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
七夕まつりに架ける橋
今回のイベントは終了しました

現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)は『無色の短冊』を手に入れた。願い事を書き込めます

CAUTION!
 『無色の短冊』には、願い事を選択して書き込めます。
 願い事の書き込みは、基本登録の最上部にて行ってください。
 書き込まれた願い事は必ず叶いますが、効力は一度のみとなります。

 また、書き込みは、イベント中、イベント後に関わらず可能です。
 イベント終了後も消えることはありません。

虹色ウォーターパーク

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:虹色ウォーターパーク』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は8/24(水)~9/10(土)までです
虹色ウォーターパーク
 最高速度が時速200キロを超える、史上最恐ウォータースライダー。
 流れだしたら止まれない、岸なし流れるプール。
 サメの放し飼いをしている自然体験型プール。
 機嫌に波のある受付嬢。
 注文を聞き流すフードコート店員。

 35度を超える連日の猛暑も相まって。
 ヒラグレット・ウォーターパークは今日も大盛況だった。
 
 園内には幾つものプールがあるが、その殆どに人が溢れている。
 本人がどう思っているかは知らないが、外から見る分にはとても暑苦しい光景である。

 しかし。悲劇はいつも唐突に訪れる。
 
 その日の朝、園内のプールを順に点検していた作業員がそれに気づいた。
 子供用のプールの水が、緑色に染まっていたのだ。
 
 ウォーターパークの入り口に『今日は定休日です』という看板が掲げられ、そして調査が始まった。

 プールの中にデッキブラシを突っ込み、少しかき混ぜたところで、異変が色だけではないということが判明した。
 ブラシを動かす時の抵抗が、普通の水とは明らかに違っていたのだ。
 
 プールを満たす緑の水はひどく重たく、粘着力を持っている。
 色の問題ではなく、状態がそもそも変質しているようだった。

 デッキブラシを一旦引き抜こうとしたところで、その先の方をぐっと何者かに掴まれた。
 力いっぱい引っ張ってもびくともしない。
 押しても引いても回しても、ブラシは動かなかった。
 
 諦めて手を離そうとした瞬間、デッキブラシごと作業員はプールに引きずり込まれそうになった。
 そのタイミングが、彼にとっては命拾いだったと言えるだろう。
 バランスは崩したものの、すぐに手を離すことができていた。
 
 緑の水の中に沈んでいくデッキブラシ。
 そして、見えない何かの力によって、ばきりと真っ二つにへし折られていた。

 緑の水、その表面が揺れる。
 ぷるぷるとはしていたが、波紋は起こらない。すでに、ゼリーほどの固さになっていた。
 
 そして、水が立ち上がる。
 脚が生えたわけではないが、そう表現せざるを得ない。
 水瓶としてのプールの枠を越えて、水の塊が塔のように立ち上がっていた。

 その頃。
 他のプールの水も、様々な色に染まっていた。
 
 赤、黄、青、紫。
 やたらカラフルな水たちも、この緑の水と同じように動き出そうとしていた。

 色を持ち、動き出した水。
 このままでは、このウォーターパークからすべての水が失われてしまう。
 ここのプールを楽しみにしている人たちが、全て干上がってしまうのだ。
 
 その前に、止めなければならない。
 カラフルな水を、透明に戻すのである。

『マップ:ウォーターパーク』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
ウォーターパーク
 ヒラグレット・ウォーターパーク。

 冬になると、プールの水を凍らせてヒラグレット・アイスパークとして営業している。
 アイススケート場を中心に、ホッケー、カーリング、氷風呂など。
 このレジャー施設では、一年を通して遊ぶことができるのだ。

 しかしそれでも、最も客を集めるのは間違いなくこの季節である。
 涼を求めて、そして水着美女を求めて。
 人々はここ、ヒラグレット・ウォーターパークに集まってくるのだ。
 
 しかし今日、彼らの思いは無残にも打ち砕かれる。
 閉ざされた入場ゲートの外側で、『今日は定休日です』と書かれた看板が、冷酷な門番のように立ちふさがっていた。

「お待ちしてました。どうぞ、こちらから、どうぞ」
 最初は入場ゲートに行ったのだが、目配せとジェスチャーで裏口へと誘導され。
 職員用の通用口から、(キャラ名)たちは園内へと入った。
 
 ウォーターパーク副園長、ロケシュ・サマーハートが出迎える。
 額に浮かび続ける汗をハンカチで何度も拭きながら。
 その初老の男性は、(キャラ名)たちを先導して無人のパーク内を奥へと進んでいった。

「とりあえず、水の供給を断つためにポンプを止めたんです」
 一声発するたびに体力でも消耗するのか、短い間隔で一息つきながら話し続ける。
 汗もまた、額と言わず全身から大量に出続けていた。
 
「そのせいか、パークの気温が一気に上がってしまって」
「なんでしたら、売店で水着でもどうですか」
 こんな時と場合でも、副園長としての顔をしっかりと覗かせていた。

『タウン:ウォーターパーク売店』を発見しました
ウォーターパーク売店
「こちらの売店で、水着を売っていますので」
「必要があれば、お買い求めください。もちろん、水着以外もありますよ」

 ウォーターパーク内に置かれた売店。
 大きなフードコートも併設されており、休憩所としても機能している。
 
 飲み物や食べ物は当然だが、水着や浮輪、水鉄砲などからおみやげ品まで。
 あらゆるものが、割高感のある値段で売られていた。
「マイクロビキニからスク水まで、様々な用途でご使用いただけますので」
 売店の中でも大きなスペースを取っている水着売り場で。
 副園長がビジネストークを展開している。
 
「プールで使ったあとは、別の場所でも」
「丈夫に作ってありますんで。そこはもう、自信ありますよ」

(キャラ名)のHPと疲労度が全快しました(街到達ボーナス)

『ウォーターパーク売店』で買い物ができるようになりました。
水着の購入は、イベント期間中のみしかできません。
イベント期間終了時、売り物が切り替わります

今回のイベント期間中のみ、水着の性能は装備時に1.5倍になります

  • フェイズ2(なし、探索可能)
  • フェイズ3
いろとりどりの世界
「異常が確認されたのは、パーク内にある7つのプールです」
 
 始まりは、緑色に染まった子供用の浅いプールだった。
 そして、それとほとんど同時に。

 『ウォータースライダー』が青色に染まり。
 『熱湯チャレンジプール』が紫色に染まり。
 『ペット専用プール』が水色に染まり。
 『シャークゾーン』が赤色に染まり。
 『波に波のあるプール』が黄色に染まり。
 『飲めるプール』がオレンジ色に染まり。

 7つのプールが7色に染まり、それらプールを満たしていた7色の水は動き出した。
 
 従業員は全員避難し、出入り口も全て閉鎖。
 閉じ込めた形にはなったが、それでどうなるものではない。
 
 それどころか、今現在、中がどういう状況になっているのか。
 それさえ分からない、とロケシュ副園長はすまなさそうに頭を下げていた。

 通用口から、各種プールが設置されているエリアまでは少し遠い。
 必要なことから不必要なナンパ講座まで聞かされたところで、ようやく到着した。
 
 5階建てのビルの屋上ほどの高さから、一直線に滑り落ちてくるスライダー。
 遠くからも見えていたそれに近づいて、そのスライダーを転がる何かが見えた。

 ウォータースライダーを滑るというよりも、ゴロゴロと転がって。
 そして最終的に、水のなくなったプールの底に勢いよくダイブした。
 
 激突して、びしゃーっと砕ける。
 スライダーを転がって落ちた水の塊は、最後には乾いたプールの底に自らの身体で巨大な青色のシミを作っていた。

 だがすぐに、この暑さで蒸発してシミも消えていく。
 ある意味それは自殺なのだろうが、その意志があるのかどうかは疑問だった。
 
 そんな水の塊が、プールの中、外、いたるところに存在している。
 緑、青、紫、水色、赤、黄色、オレンジ。あるいはそれらが混じったもの。
 カラフル極まりないゼリーのような物体が、そこかしこでプルプルと震えていた。

 小さいものはサッカーボールぐらい、大きくても2メートルほどか。
 プールに溜まっていた水は小さく分かれ、パーク内を自由に動き回っている。
 
 様々な大きさ、形のゼリーの塊が、水のなくなった夏のプールを楽しんでいた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
レインボーゼリーに遭遇した!

  • フェイズ4
(戦闘)

震えるゼリー
 ブヨブヨとしたゼリーの表面は、触れると水枕のような気持ちよさがあった。
 しばらく触っていたくもあったが、そういうわけにもいかない。
 
 一定以上の力、形を保っていられる限界を超える衝撃を加える事でゼリーは破裂した。

 自身の内側からあふれだす力によって、たったひとつの傷口からその外側が全て破壊される。
 
 ぶちまけるのは血や体液ではない。
 赤、青、緑、黄色。色がついてはいるが、要はただの、水である。
 
 少し前までプールの中を流れていた水。また、その元の状態へと戻っていた。

「一度壊れたのは、もう元に戻らないようですね」
 壊れて水になったゼリーを見ながら、ロケシュ副園長が。
 数センチではあるが、それらによってプールに水が溜まってきていた。
 
 とはいえ、それはあまりに小さな成果である。
 叩いて壊す。その単純な解決策を地道に繰り返すにしても、ゼリーの数があまりに多すぎるように思えた。

 どこか一箇所に集めて、効率的に壊す。
 そんな方法がないかと考え始めた、その時。
 
「ちょ、あれ、見てください!」
 慌てた様子で叫ぶ、ロケシュの声が耳に飛び込んできた。
 
 その彼が驚きをもって指差した方向は、ウォータースライダーがある方向だった。

 ウォータースライダーの乗口、また、ゼリーがそのスタート位置についていた。
 
 しかしそれはすでに見た光景であり。
 さきほどからもいちいち見てはいないが、バシャバシャと砕ける音が何度か聞こえている。
 それは彼も同じことであり、今更改めて見て驚いたりするほどのことではなかった。
 
 その、今にもスライダーを降りてこようとしているゼリーの大きさ以外は、である。

 乗口そのもののがかなりの高さにあり、さらにここからは距離がある。
 だから、距離感やサイズ感がいまいち測りにくい。
 それはそれとしても、スライダーの上にあるゼリーの塊は巨大だった。
 
 すでに、スライダーの横幅からは大きくはみ出すほどの大きさであり、平均台の上に乗っているような状態である。
 その塊に向かって、スライダーの順番待ちをして後ろに並んでいる他の塊がぶつかる。
 
 すると飲み込まれ、混ざり合い。
 そのひとつ分、またゼリーは大きく成長しているようだった。

ウォーターパーク
 きっかけは、そいつ自身の選択によるものか。
 あるいは、大きさがその細い橋の上でバランスを取れる限界を超えただけか。
 
 スライダーを滑り落ちることを躊躇するように、一番上でふるふると震えていた塊。
 その間に、待ちきれなかった後続が次々と集まり、どんどん巨大になっていったが。
 
 それがついに、動き出した。

 初めはゆっくりと、そして徐々に加速していく。
 滑っているのか、転がっているのか、それももう分からない。
 
 ともかく奇蹟のようなバランスでスライダーの上を落ちていき、そして、最後に巨大なゼリーは宙を舞っていた。

 およそ、数千トンにおよぶ水の塊。
 それは様々な色が交じり合い、縁日のヨーヨー釣りで見たことがあるようなマーブル色をしていた。
 
 ウォータースライダーから飛び出して、落ちるべきプールを飛び越えて。
 今は避難しているが、さきほどまで(キャラ名)たちがいた辺りに、その塊は落下した。

 多くの他のゼリーを下敷きにしながら、その全てが一瞬にして砕け散る。
 その衝撃で撒き散らされた水しぶきは、パーク全体に飛び散っていた。
 
 雨というよりも、あられか雹のように。
 ウォーターパークに、こぶし大の水しぶきが高速で降り注ぐ。
 
 他のゼリーたちは次々とその体を撃ちぬかれ、その場その場で自身をぶちまけていた。

イベントマップ『ウォーターパーク』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

虹色ウォーターパーク
 片付けと準備を終え、ウォーターパークが開園したのは日が落ちてからだった。
 普段は18時までの営業だが、今日だけは特別。
 
 この日だけの、ナイトプールだった。

 充分に足が届く深さのプールを、浮き輪に抱きついた女性がプカプカと浮いている。
 プールサイドには夜なのにサングラスをした人がいたり。
 デッキチェアでトロピカルな飲み物を飲んでいたり。
 
 かなりの時間を待たせたにもかかわらず、ナイトプールは好評のようだった。

 片付けでは、職員全員がデッキブラシを持ち、パーク内を走り回っていた。
 
 色付きの水がぶちまけられていたが、ペンキや絵の具のように汚れるわけではない。
 普通の水と同じように、排水口に流してしまえばそれだけですぐに綺麗になっていた。

 そして再びポンプを動かし、循環ろ過装置が仕事を始める。
 色水を飲み込んで、何事もなかったかのように透明な水をプールへと供給していく。
 
 ろ過装置にずっと引っかっかっていた古いボロボロの水着も。
 何事もなかったかのように回収され、ゴミ箱に捨てられた。

「なんとか、本日中の営業に間に合いましたね」
 彼もまた、デッキブラシを持って走り回っていた一人として。
 疲労が見える顔つきで、副園長ロケシュ・サマーハートは感慨深げにつぶやいていた。
 
「あ、そうそう。あちらのプールはご覧になられましたか?」
 と、一つのプールを紹介してくる。
 底に沈めた照明でライトアップされながら、それは鮮やかな緑色に染まっていた。

「最近、ミドリムシというのが流行っているらしくって」
「健康ブームというやつですか。若い子たちが、健康健康言ってるのも妙な感じですが」
 副園長である彼よりも上層部。つまりは園長であるが。
 その周辺で、決まったらしい。
 
「ミドリムシプール、として今日から売り出すそうです」
 若い女の子を中心に、緑色のプールに大勢が浮いている。
 とりあえず、盛況のようだった。

「ああ、もちろん、ミドリムシなんて入ってませんから安心してください」
「ただ、色を付けているだけですから」
 
「健康には何の影響もありませんから、安心してください」
 信頼と実績、のような表情で力強く力説する副園長。
 
 それもそれでどうかという内容の話だが。
 全てひっくるめてどうでもいいので、全部水に流してしまうことにした。

ミッション『虹色ウォーターパーク』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『七色ゼリー』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
虹色ウォーターパーク
イベントは終了しました

現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『ゼリー』が修得可能になった
(PC名)は水着の生成が可能になりました
ただし、アビリティ『防具生成』を取得している必要があります

かぼちゃたちの十月革命

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
『時限ミッション:かぼちゃたちの十月革命』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は10/12(水)~10/29(土)までです
かぼちゃたちの十月革命

 夏の終わり。そして秋の始まり。
 実りの秋であり、食欲の秋であり、カボチャ受難の秋である。

 この季節、カボチャたちは大量に消費される。
 
 刈り取られ、くり抜かれ、晒される。
 その痛みと苦しみと屈辱に、カボチャたちの怒りや不満が溜まっていった。
 
 そしてついに、根っこと堪忍袋の緒が千切れてしまったのだ。

 搾取されるだけの毎日に、彼らは反旗を翻した。
 
 立ち上がり、決起した。そう。文字通り、立ち上がったのだ。
 カボチャ頭の怪人として、この大地に立ったのである。
 
 彼らは自らの足で歩き始めた。
 向かった場所は、ハロウィンシティと呼ばれる場所だった。

 ハロウィンシティ、正式な街の名前はセブンスムーンである。
 
 この街が二つ名を持つには理由があった。
 街全体が昼間は殆ど眠っている『夜の街』である、ということと。
 街が動き始める夜になると、怪物たちが当たり前に跋扈することだった。

 新たな闇の眷属として、街の住人となったカボチャたち。
 これで彼らに安寧が訪れるはずだった。
 
 だが、物語はハッピーエンドでは完結せず、彼らの受難は続く。
 カボチャが大量に消費されるこの季節。その需要は変わらず存在しているのである。
 
 世界は未曾有のカボチャ不足に陥ったのだ。

 世界のカボチャ高は止まらず、ストップ高のスイカ安である。
 
 カボチャの最大需要であるハロウィンパーティ。
 それがカボチャなしでは、ただのめでたいコスプレパーティである。

 だから、行かねばならない。
 世界のために。カボチャ狩りである。

注意事項

 街に入るには資格が必要となる。
 自らを闇の眷属であると示す、そのための資格である。
 
 資格は、それらしい格好によって与えられる。
 何事も形から、である。

 イベント選択時、着ていく衣装を選択できます。
 イベントマップ挑戦中のみ、着用コスチュームがリネームされます。
 
 名称が変更になるだけで、成長値や補正値は変わりません。
 また、コスチューム経験値なども元のまま獲得できます。

『マップ:常夜国セブンスムーン』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
常夜国セブンスムーン

 ハロウィンシティ――セブンスムーン。
 
 闇に属するこの街は光の中で眠り、夜になると目を醒ます。
 その街を闊歩するのは、闇を友とするものどもである。

 セブンスムーンの北地区。
 このあたりは商業区であり、様々な店が立ち並ぶ。
 
 分かりやすいお化け屋敷から、オドロオドロしい雰囲気のカフェ。
 コスプレショップに八百屋にケーキ屋。
 
 多種多様な店舗があるが、その共通点は一つ。
 それらは全て、無人であるということだった。

 客もいなければ、店員もいない。
 外の道路にも、(PC名)以外の姿はまったくなかった。
 
 それはこの街に一歩足を踏み入れたときから変わらない。
 誰ともすれ違うこともなく。
 何処かに隠れてこちらの様子をうかがっているような、そんな気配もなかった。
 
 ゴーストタウンさながらの空気を、街全体が纏っていた。

 空を覆う、どんよりとした分厚い暗雲。
 常夜の国とはやや言いすぎな気もするが、確かに昼間からずっと暗い。
 
 雲に隠れて見えないが、その向こうには太陽がある。
 身を隠しながら、こちらを見張っているのだ。
 その目があるうちは、この街は死んだままなのである。

 しかしそれも、時間の問題となりつつある。
 太陽が眠りにつく時間が迫っている。
 
 変わって目を覚ます月は、闇に属するものたちの味方である。
 闇に、光を与え、影を作る。

 夜がもう、すぐそこまで来ていた。

  • フェイズ2
太陽が死に、月が生まれる

 街の大動脈となる常夜通りと、裏道となる現夜通り。
 それらが交わる地点、『逢魔交差点』に(PC名)はいた。
 
 アスファルトの上にたまった埃が、冷たい風に攫われていく。
 どこに運ばれていく、というわけでもない。ただ消えていく。

 日は落ちようとしていた。
 空を覆う重たい雲はいつしか消え去り、青黒い空が広がっている。
 
 限界まで傾いた陽光が、街を真っ赤に染め上げていた。
 赤は本来暖かみのある色のはずだが、この街が持つ雰囲気がそうさせるのか。
 
 赤黒い猟奇的な想像だけが、頭の中を支配していた。

 日がまさに、落ちようとしていた。
 地平線に、半分まで太陽が隠れる。
 
 そして、逆側の遠景に月が姿を見せていた。
 冷たい光が、太陽の光を徐々に覆い隠していく。

 そして、夜がやってきた。

  • フェイズ3
星のない夜に

 夜のとばりが下りる。
 闇が街を覆う。黒が街を埋め尽くす。
 
 命あるものは眠りにつき、心をなくしたものが浮かび上がる時間。
 街が息を吹き返していた。

 『常夜通り』を西から、何者かが歩いてやってくる。
 
 一人や二人ではない。
 魔女やらゾンビやら吸血鬼やら、統一性があるようなないような。
 そんな連中が、何をするでもなくぞろぞろと歩いていた。

 『現夜通り』にも様々な格好をした者が姿を見せていた。
 
 一体この街の、どこにいたのか。
 息を潜め、太陽の監視からどうやって隠れていたのか。
 
 そんなことを考えている間に、気がつくと街は彼らで溢れかえっていた。

 こちらに興味を示すことなく、何か目的がありそうにもない。
 死者の行進が如く、ただ歩いている。
 
 そして、こちらもまた彼らには興味はない。
 今日の相手は彼らではなく、別の怪物。
 
 かぼちゃ頭の怪人たちである。

 三角形のフィーメーションを組んで、『常夜通り』をやってくる。
 指を鳴らしてリズムを取りながら、かぼちゃ頭たちの大行進である。
 
 収穫のときが来たのだ。

戦闘予告
かぼちゃ頭の怪人に遭遇した!

  • フェイズ4
(戦闘)

常夜国セブンスムーン

 行き交う人々。
 ゾンビや魔女など、闇の眷属たちを模した格好をした住人たちである。

 彼らの足元には、ゴロゴロとかぼちゃ頭が転がっていた。
 
 かぼちゃ頭の怪人、などではすでにない。
 食べ物としては育ち過ぎの、ただの巨大なかぼちゃである。
 
 それらが道端に、無造作に散乱していた。

 街の住人たちは、足元に転がるそれらを気にした様子はない。
 
 当て所なく、聞いてみればもしかしたらあるのかもしれないが。
 何処かから、何処かへと向かって歩き続けている。
 
 その足が、急いでいるようにも見えた。

 東の空へと視線を向けると、彼らが急ぐ理由がわかった。
 
 いつの間にそれほどの時間が立っていたのか。
 空が白み始めていた。

 朝が近づいていた。

イベントマップ『常夜国セブンスムーン』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

かぼちゃたちの十月革命

 東の空が明らむ。
 いつの間にやら月は忽然と姿を消し、代わって太陽が再び生まれようとしていた。

 家路を急いでいた闇に属する住人たちは、今はすっかり姿を消してしまった。
 ポリスの格好をした人が数人、残っているだけである。
 
 マイク片手にラップ対決などしているが。
 彼らもきっと、あの太陽が完全に姿を見せる頃には消滅しているだろう。
 
 この街においては、警察とて闇の住人なのである。

 ぶろろろろろろろ、と。
 気の抜けたエンジン音を連れて、現夜通りを南から軽トラがやって来た。
 運転席から、緑の作業着を着た中年男性が降りてくる。
 
 長距離の運転に固まった背筋を、うめき声を漏らしながら伸ばし。
「あああああ。たまったもんじゃねえなあ。まったくよお」
 おそらく運転中、ずっと口に出していたであろう。
 朝日に向かって、運転手のおっさんは愚痴を飛ばしていた。

「農場行けっつーから行ったら、あっち行けだ、こっち行けだ」
「役場かてめえは、っつんだ」
 ぶつくさと。酔っ払ってはなさそうだが、止まる気配はなかった。
 
「クソ馬鹿でけえかぼちゃばっか作りやがって」
「しかも全部クソまじい。昼飯にもなりゃしねえ」
 文句はいくらでも垂れ流すが、さすがはプロと言ったところか。
 落ちているかぼちゃを拾って軽トラの荷台に積んでいく、その手際の良さは際立った物があった。

「おい、あんちゃん、嬢ちゃんか? まあどっちでもいいや」
「ハンコくれ。認めでいいから。ここと、ここと、ここな」
 ほとんど隙間なく、ギュウギュウに荷台に押し込んで。
 おっさんは(PC名)のサインの入った伝票を手に、かぼちゃを何処かに運んでいった。
 
 依頼のあるところへ。かぼちゃを必要としている人たちの元へ。
 それが彼の仕事だった。

ミッション『かぼちゃたちの十月革命』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『ハロウィンパンプキン』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『ジャックランタン』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
かぼちゃたちの十月革命
イベントは終了しました

現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました


雪の降るまちを

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
雪の降るまちを

 雪が降るにはまだ少し早い季節。
 冬支度を始めばかりの街、ロスキレンセにその報せが届いた。
 
 ギターを持った長い黒髪の天気予報士の女性が、一足早い雪の到来を告げる。
 雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるでしょう、と。

 子供と犬は大はしゃぎ、大人と猫は勘弁してほしいと嘆く中。
 
 夕方頃から降り出した雨が、夜半を過ぎたあたりに雪へと変わった。
 そこだけ雲がかかっていなかったのか、月に煌々と照らされながら。
 しんしんと雪は降り続けた。
 
 そして夜が明ける頃、街は雪に沈んでいた。

 一面の銀世界とはまさにこのことだろう。
 なにせ、全てが雪の下に埋まってしまっているのである。
 完全なる白一色で、世界は塗り潰されていた。
 
 雪に埋もれたロスキレンセに、それでも朝日は登る。
 トドメとばかりに降り止まない雪が、ガラスのようにキラキラと輝いていた。

 街の殆どの家々には、暖炉のために背の高い煙突がついていた。
 
 屋根の上まで雪に覆われた今、その煙突の先だけが雪の上に飛び出している。
 街全体を見渡せば、井戸がずらっと並んでいるようだった。
 
 その井戸から、モグラのように住人たちが黒く汚れた顔を出す。
 そして白く染まった街を見て、それぞれに絶望したり感動したりしていた。

 街中に見えるのはそれら煙突井戸だけ、ではなかった。
 
 それは雪が降り出す前にはなかった。
 少なくとも、誰もそれを見ていない。
 朝になり、銀世界と成り果てた街を見たとき、初めて気づいたのだ。
 
 街の北側に、氷像が立っていた。

 その確認に行ったのは、役場に勤めるトマソン課長。
 彼はいつも、そういう役回りだった。
 
 その氷像は髪が長く、体の線から見て女性を模したもののようである。
 大きさとしては、トマソンよりも少し小さいぐらい。
 モデルがいるとすれば、等身大と言ってよさそうだった。

 そこでトマソンは、あることに気づいた。
 それに近づくほどに、明らかに降雪が強くなっていたのだ。
 
 氷像から遠ざかり、降雪が弱まったことで確信に変わる。
 その氷像が、どういった形にせよこの異常降雪に関係しているのは明らかだった。

 トマソンは氷像への接近を諦め、役場の煙突へと戻った。
 いたずらに近づいては、事態を悪化させるだけである。
 しっかりと準備を整え、覚悟を決め、そして実行するのだ。
 
 一気に接近し、あの氷像を破壊する。その手伝いをして欲しい。

『マップ:雪に沈むロスキレンセ』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
雪に沈むロスキレンセ
 雪自体が珍しい地方、というわけではない。
 
 毎年のように雪は降り、逆に降らなければそれがニュースになるぐらいである。
 数年に一度ぐらいは大雪が街を襲うこともあった。
 
 ゆえに、備えがまったくなかったわけではないのだ。

 問題なのは、その時期が早すぎること。
 そしてなにより、降雪量が異常な量である、ということだった。
 
 大雪というレベルではない。
 街がまるごと埋まってしまうほどの雪が、わずか一晩で降ったのである。
 異常気象という枠で収まりきるものではなかった。

 ロスキレンセという街はすっぽりと雪に埋まっていたが。
 すぐ近くまでは、何事もなく来ることができた。
 
 局所的豪雪、とでも言うべきか。
 極狭い地域、と言うかこの街だけが大雪の被害の中にあった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
煙突より出でて
「よく来てくださいました」
 分厚い手袋をつけた、その右手を差し出してくる。
 下半身を煙突に突っ込んだままの男は、到着してすぐの(PC名)に握手を求めた。

 トマソン・シュテーガー。
 この街の役場において、『なんでもやる課』の課長である。
 
 雑用係の係長、と言われることもあるが。
 正式な役職は、課長である。部下はいないが。

「見えますか。あの、氷の像なんですが」
 言って、前方を指差す。
 
 風は殆どないため吹雪にはならないが、感覚としてはそれに近い。
 降り続ける雪で白く染まった景色の中、ぼんやりとその氷像は立っていた。

 羽衣を着た天女のような美しい氷像。
 いつからそこにあるのかは分からないが、少なくともトマソンが確認してからでもかなりの時間が経過している。
 
 その間も雪は依然と降り続けているが。
 氷像の上にも、そして足元にも、雪はまるで積もってはいなかった。

 髪の先からつま先まで、一つも新たに降った雪によって隠れることなく。
 その氷像は雪の上に、優雅に立ち続けていた。

(PT名)は『雪の女王の氷像』に移動しました

  • フェイズ3
雪の女王と精霊

 氷像に近づくほどに、降ってくる雪の量が単純に増える。
 更に雪が水気を多く含み、一粒一粒も重くなってきていた。

 地面から測れば、もう何メートルも深く雪が積もっていることになる。
 だが、歩いていてそこに足が沈んでいく、ということはなかった。
 
 新雪ではあるが、重機で踏み固められたあとのように硬い。
 すでに凍りつき、むしろ滑って転ばないかを注意する必要があった。

「あの辺りは多分、町長のお屋敷があった辺りだと思うんですよね」
 (PC名)を2歩ほど進んで先導するトマソンが、振り返らずに話しかけてくる。
 もっとも、マフラーで顔をぐるぐる巻きにしており、振り返ったところで顔は見えないが。
 
「あれからまだ一度も顔を見てないので、無事だといいのですが」
 町長の屋敷にも煙突はある。
 その出口はぎりぎり雪上に出てはいるが、そこには誰の姿もなかった。

 降雪は氷像を中心に、街全体に広がっている。
 
 基本的にはまんべんなく雪に埋まっているが、やはりその氷像の周囲がもっとも積雪量は多い。
 雪の下で家屋が潰れてしまっていても不思議はなかった。
 
 救出は早いに越したことはないだろう。

「……あれ、おかしいな」
 と、トマソンが目を細めながら、マフラーでほとんど動かない首をわずかにひねった。
 氷像を見て、次いで空へと視線を移し、また氷像へと戻す。
 
 氷像の周りを舞う粉雪が陽の光を浴びてキラキラと光り。
 しかし空は黒い雲が覆い、太陽の姿はどこにもなかった。

 氷像へと近づく。雪がさらに降ってくる。
 
 そしてその氷像の周りを飛び交う光の粒は、雪ではなかった。
 それを視認できるほどの距離、いよいよ雪は吹雪へと変わりつつあった。
 
 吹雪の中を自由に飛び回りながら、まばゆい光を放つ。
 それは小さな羽を背負って飛ぶ、『雪輝精』と呼ばれる雪の精霊たちだった。

「なんか、色々出てきましたね」
 吹雪の中を、氷像を守るようにその守護者たちが姿を見せた。
 その体に、飛び回っていた精霊たちがぶつかり、消える。
 
 それが彼らにどのような力を与えたかは分からないが。
 少なくともその意志は、氷像を守る、そういうもののようだった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
初雪の精霊に遭遇した!

  • フェイズ4
雪に沈むロスキレンセ

 精霊が雪を呼んだのか、雪が精霊を呼んだのか。
 途中からは、互いが互いを呼びあった、その相乗効果なのだろうが。
 
 結果として、街では雪と精霊が舞い踊っている。
 はたから見れば美しいが、当事者としては何とも迷惑な話だった。

「ちゃーしゅーめん!」
 謎の掛け声とともに。
 トマソンが肩に担いでいたシャベルを思い切り振り抜いた。
 
 フルスイングが氷像の頭部をヒットする。
 ホームラン、とはならず。その一撃で、氷像の頭部は粉々に砕け散っていた。

 蜘蛛の子を散らすように、光をまとった小さな精霊たちが飛んで行く。
 
 大半は雪の中に逃げ込み、残りは街の外へと。
 光の尾を残しながら、雪の精霊たちはあちこちに消えていった。
 
 精霊たちが消えて、頭部を失った氷像だけになった頃合いで。
 雪は降り止み、空には晴れ間が覗こうとしていた。

「町長ー ご無事ですかー」
 町長の屋敷の煙突に首を突っ込んで、トマソンが大きく声を上げた。
 
 煙突の中は雪に埋まっておらず、黒ずんだ底まで見通せる。
 その様子を見るに、下の家は潰れてはいないようだった。

 トマソンの声が煙突を通して屋敷の中に響き渡り、しばらくして。
 
「なんじゃい!」
 しわがれた、怒気の強い声が下から帰ってくる。
 そして、ぬっ、と煙突の上から見える床に滑るように顔を出した。

「町長!」
「なんじゃい!」
 なぜか喧嘩腰な。おそらく、そういう口調の人物なのだろうが。
 
「ご無事でしたか!」
「当たり前じゃい!」
 そういうやり取りを、そこからまだ数回は繰り返していた。

イベントマップ『雪に沈むロスキレンセ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

雪の降るまちを

「なんじゃい。全然朝が来んと思ったら、雪で埋まっとったんかい」
 煙突から這い出て。
 街を見渡すことなく、老人はあたりを見ただけで文句の言葉を吐いた。

「昨夜の雪で、街全体がこの有様です」
 トマソンのその報告にも耳を貸さず。
 
「隣町の業者に連絡して、この雪どかすのに時間も金もどんだけかかるんじゃい」
「連絡はすでにしてあります。お金の方は、これから見積もりになりますが」
「年末は何かと入り用だっつーのに。どうしてくれる」
「来年度の予算編成は延期ですかね」
 それでもそれなりに、会話は成立しているらしかった。

「んねえ、んねえ、まだかかるの?」
 と、この場には似つかわしくない。
 と言うか、どの場であれば似つかわしくなるか思いつかないが。
 
 艶めかしい、別の言い方をすれば頭の悪い。
 そんな声が、煙突から漏れてきていた。

「おうおう。キャシーちゃん。出てきたのかい?」
 あからさまに口調と表情を変えて。
 老人は煙突に駆け寄り、その中に上半身を投げ出した。
 
 慌ててトマソンがその両足を捕まえて、ぐっと引っ張り出す。
 トマソン、老人、そして。
 三段釣りで煙突から飛び出したのは、金髪の若い美女だった。
 
 ほとんど水着のような格好をした、老人の孫ぐらいの歳の女性。
 絹糸のような金髪を腰まで伸ばし、布よりもそれの方が多くの肌を隠していた。

「ロジーちゃんさむーい」
「脱げトマソン!」
 秒速でコートとマフラーを剥かれたトマソンが、鼻水を隠しきれない顔をこちらに向け。
 
「町長の奥様です」
 そう、彼女の役職を紹介してくれた。

「どうしちゃったの、これ」
「どうしちゃったんじゃい、トマソン」
 不必要なワンクッションを町長ではさみ、トマソンへと話が振られる。
 
「……あちらの像が原因ではないかと」
 絞り出すように、目線を地面へと外しながら。
 トマソンはその指を、自身で破壊した氷像へと向けていた。

「ミランダ。ミランダ? 首がなくなっとるじゃないか」
 きれいに頭だけ吹き飛ばされた、もはやそういう芸術作品となった氷像。
 初めてその姿に気づいた老人は、驚いた様子で目をぱちぱちとさせていた。
 
「先代の奥様でございます」
 氷像を指差したまま、今度は小声で彼女の正体を紹介してくれた。

 より正確に言えば、五年前に先立った町長の妻ミランダ。
 その生前に自身の若い頃に似せて修正をくわえて作らせた、クリスタル像である。
 
「まあそれはどうでもいいが。なんで氷になっとるんじゃい」
 クリスタル像が氷像に変わったことが、首もげ事件よりも気になったらしい。
 トマソンの罪は幸運にも、なかったことになりそうだった。

「……やはり、お怒りなのでは、と」
 彼の怒りが飛んでこないように細心の注意をはらいながら。
 
「ミランダが? まあ、嫉妬深い女じゃったからの」
 首の無くなった元妻を見つめる。
 その背中を、金髪美女がぎゅっと抱きしめ。
「他の女のこと考えちゃ、イヤ」
 老人の表情は崩れ、鼻の下が倍ほどに伸びてしまっていた。

「帰るぞキャシーちゃん」
 話はこれまで、と勝手に打ち切って彼女の手を引き煙突に戻ろうとする。
 慌ててトマソンはその間に立ち塞がり、
 
「ちょ、ちょっと待ってください。この状況の、解決策を」
「解け待ち。以上。解散」
 心をもうここからベッドの中へ移してしまった老人は、感情のこもらない言葉を並べるだけだった。

「待ってください、お願いします!」
「わしはこれからキャシーちゃんとよろしくやるんじゃい!」
「せめて議会の招集を!」
「わしはこれからキャシーちゃんとよろしくやるんじゃい!」
「ごめんねえん」
 煙突の上と下と。
 やり取りは続くが、下の声は問答無用で遠ざかっていく。
 トマソンがこれ以上踏み込めない以上、もうできることはなにもなかった。

 真上に昇った太陽が、街全体を照らし出す。
 前妻の氷像はすでに解け始め、全身から汗を流していた。
 このままにしておけば、1時間ほどで崩れてしまうだろう。
 
 だが、街に積もった雪はそう簡単には行かない。
 見渡せば、そこら中の煙突から顔を出した町人たちがこちらを、トマソンを見ている。
 
 実質上、彼が町長のようだった。

 クリスマスも迫る年の瀬。
 ともあれ、煙突は地上に出ているわけだから。
 
 このままでもサンタクロースは問題なく来ることができる。
 それについては、子どもたちが涙することはなさそうだった。

ミッション『雪の降るまちを』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『雪輝精入りクリーム』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『雪輝精』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
雪の降るまちを
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました


最終更新:2016年12月06日 19:40