東條操『分類方言辞典』「凡例」



凡例
 分類方言辞典は、事物に対応する方言を索めるためのものであるから、概念的意味によって十四の部門に分け、各
部門の中を標準語の五十音順に排列し、文法上の品詞の別は顧慮しない。例えば「服飾容姿」の「傘」には、

 かさ (傘) *あまぐ(本)さしがさ・さな・こんこ(児)。
  【こうもり傘】 (本)はぶりさな・らんがさ。
  【傘一本】 (補)いっかい。
  【傘をさす】 (補)かぶる。
  【傘にいれる】 (本)傘に「のせる・(補)傘を「かっぺる。
  【傘にはいる】 (本)かさ」にのる。

の如く「傘一本」「傘をさす」などをも類聚した。
 方言の使用地域は、全国方言辞典及び同補遺についてこれを見ることとし、いっさい省略した。
 符号(本)以下は全国方言辞典に収録した語、(補)以下は同補遺に収録した語である。
 符号」及び「は、それぞれそれ以上又は以下の部分をもって採録してあることを示す。前記の例「傘にいれるは、全国方言辞典に「のせる」同補遺に「かっぺる」として採録してあるものである。
 符号*は関連項目を示し、↓はその項目をもって類聚してあることを示す。関連項目などが他の部門に属する時は括孤内に所在ぺージを注記した。↓をもって所在ぺージのみを示したものは同じ項目名のものである。
 括孤を使って方言をかこんだ左の如き場合は、

 とおせんぼ (通行止遊)(本)はっと・はっとばり(はっと)・ほっとばり・やらんばんば・やらんぽ(やらんばんば)。

「はっとばり」「やらんぼ」がそれぞれ見出語「はっと」「やらんばんば」の下に同意語としてあげてあることを示す。

 全国方言辞典補遺は、全国方言辞典の例に従うが、見出語に*印をつけてあるものは、同形か類似の形でそれに既に採録してある語の補説であることを示す。
 このたびは、江戸時代のみならず明治前期までの文献に出典を注記した。そのうち略称によるものを左に掲げる。
 ロドリゲス……「日本文典」、慶長九年1604刊(「民族」・二ノ一所載橋本進吉博士の訳文による)
 房総漫録……「房総三州漫録」又は「房総雑記」、天保十四年1843深河元儁稿(昭和十七年版房総叢書七所収)
 異本尾張……無窮会本「尾張方言」、「続尾張方言」を合綴、編者未詳、元治年間1864稿、写本
 ダラス……「米沢方言」、明治八年1875日本アジア協会会報第三巻所載(昭和廿八年斎藤義七郎氏複製発行)
 国誌……「大日本国誌」、内務省地理局編、安房明治十九年1866刊、上総大正三年版房総叢書二所収、他州稿本
 言語違……「東京京阪言語違」、明治十九年1886板(国語研究四ノ一複刻)
 琉英語彙……チェンバレン「琉球文典」所載、明治廿八年1895刊
 方言一斑……村岡良弼「下総方言一斑」、成稿年時未詳、(房総郷土研究資料第十号所収)
但、八丈島方言はすべて「八丈島の言語調査」による。
 南島方言の表記に「うう」(Wu)「うむ」(Um)「ふい」(Fi)を使ったが、排列は「う」「う」「ひ」に従った。

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最終更新:2020年07月04日 01:35