真っ白な部屋。
俺と、ベッドと、名前も知らない女の子。
それだけしかない部屋の中。
いつからここにいるのかは分からない。
「お食事の時間ですよーぅ」
「ぁあ、う……」
ただ、目が覚めた時は既に全身が麻痺しているような状態で。
喋ることすら難しいのに自分が生きているのは、彼女のお陰ということしか分からない。
「ほーら、食欲が無くてもしっかり食べないと良くなりませんよー?」
スプーンと、流動食の入った皿を渡される。
「ぁ、ああ……」
腕が震える。スプーンを掬えない。
上手く口まで運びきれず、胸にベタベタ零れる。
「あー、仕方ないですねー」
そうすると、彼女は困ったように眉を八の字に曲げて、自分から皿とスプーンを取り上げる。
そのまま流動食を口に含むと、まるで鳥の親が雛に餌を与える時のように。
口から口へと、強引に流し込んでくる。
「……ぷはっ、まだまだありますからねー。おかわりしますー?」
いつもいつも、こうやって。
排泄の世話すら、嫌な顔一つせず。
まるで、自分がいないと生きていけないと、刷り込ませるように。
「早く良くなりますように。私も応援してますからー」
それが、いつになるかは分からない。
だけど、例え俺が外に出られる日が来るとしても。
この人は、いつまでも側にいるような気がした。
【献身】